「PERで読み解くアサヒグループHD」を読む
どんな相場でも必ず把握しておきたいPER。PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
業績悪化でも株価が下がらないケース
一般的には、業績が悪化すれば、株価も下がります。株価が投資家の心理を表す鏡だとすれば、業績の振れ幅よりも、株価の値動きのほうが大きくなるケースが少なくありません。しかし、中には業績が実際に悪化しているにもかかわらず、ほとんど株価が動かない銘柄もあります。
case18:日本マクドナルドHD
今回取り上げるのは、子どもから大人まで、幅広い人に愛されている「 日本マクドナルドHD 」です。同社は2014年7月に、中国でのチキンマックナゲット製造工程において、使用期限切れの鶏肉を使用していた問題が発覚。それをきっかけに客離れが進み、2014年12月期と2015年12月期は営業赤字に転落しました。
予想PERでの判断が難しい時もある
このように業績が大きく落ち込むようなケースでは、将来への期待も低下し、一般的にはPERも割安な水準になりがちです。しかし、同社の株価は、事件のあった2014年から2016年にかけてほぼ横ばい。その一方で、利益が落ち込んだため、予想PER(東洋経済予想)が100倍を超えてしまいました。
投資家が手放さなかったのは優待のおかげ?
このとき株価があまり下がらず、PERが上昇してしまった理由の1つとして、株主優待が挙げられます。100株以上で、商品と引き換えられる優待券がもらえますので、家の近くにあって普段から利用している個人投資家にとっては業績に関係なく、手放したくなかったものと考えられます。おトクな株主優待を設定している銘柄は、PERが下がりにくい傾向があるということを覚えておきましょう。
業績回復のカギは「2つのM」
2015年には200億円以上もの営業損失を抱えた日本マクドナルドHDですが、そもそもどうやってどん底状態から業績を回復させたのでしょうか。復活した主な理由は、大胆なマーケティング(Marketing)戦略や新たな商品(Merchandice)戦略にあると言われています。
マーケティング面では、TwitterなどSNSを活用し、思わず自分の意見を言いたくなるようなキャンペーンを実施したり、ポケモンGOとの提携で人が集まる取り組みなどを実施しました。また、商品戦略面では、むやみに値下げをせず、レギュラーメニューをしっかり見直すなどして、利益率を上げる努力を積み重ねていきました。このような様々な施策を実施することで、少しずつ客足が戻り、業績も回復基調を辿りました。
2018年12月期には、収益性を示す指標である売上高営業利益率が7期ぶりの水準となる見込み(東洋経済予想)で、株価も高値圏で推移しています。今後もどんな新商品やキャンペーンを発表・実施してくれるのか楽しみですね。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回は、②と③から日本マクドナルドのPERをみてきました。優待が個人投資家に人気の場合は、業績が悪化しても株価が反応せず、PERでの投資判断が難しいケースもあります。
ところで、12月は3月・9月についで優待銘柄の多い月。12月分の優待は多くの場合、12月25日(火)(権利付最終売買日)までに株を購入していればもらえます。気になる銘柄がある方は実際に店舗に出向いて、客足やお店の活気を確認した上で、優待銘柄の取得を検討してみてはいかがでしょうか?