インバウンド需要の高まりやデフレ脱却を追い風にして売上げを拡大する企業など、今の投資環境をもとに旬な銘柄を毎月選定する「日興ストラテジー・セレクション」。12月号では、100円ショップでおなじみの「セリア」が新しく追加されました! セリアの投資ポイントをチェックして、これからの投資判断の参考にしてみましょう。
「感動空間」でファンを拡大するセリア
ついつい、いろんな物を買ってしまう100円ショップ。なかでも、利便性・品質・売り場の楽しさの三拍子で消費者の心をガッチリつかんでいるのが「 セリア 」です。単に安い商品を売るスタイルとは一線を画す同社は、ユニークな商品を「感動空間」と位置づける店舗で提供。100円で豊かになるくらしの提案として、季節やイベントシーンに合わせた商品やアクセサリー、インテリア、お菓子などの無料でダウンロードができる手作りレシピが消費者を惹き付けています。
ヒット商品投入で、抜群の収益力
売上げシェアを着実に拡大させながら100円ショップ業界2位に位置する同社は、収益性で他社に抜きん出ています。価格がわかりやすい、いわゆる「百均」は事務コストが低いメリットがあります。しかし、値下げや値上げができず、収益のコントロールや在庫管理が難しいというデメリットもあるのです。
そこで同社は収益性のカギを握る「売れ筋」商品の投入に注力し、2004年に業界初でPOSシステムを導入。個々の商品の売れ行き動向を分析するにとどまらず、POSデータを活用した独自の発注支援システムを構築しています。他社に先行した在庫管理システムで高い収益性を実現しています。
連続最高益更新に期待
もうひとつの強みは店舗政策です。スーパーが不得意とする若年層客の集客が強く、競合する食品を扱わない同社に出店要請が寄せられています。その結果、総合スーパーや食品スーパーなどへのインショップ展開を拡大。スーパーに来たついでに買い物できる利便性や、主婦・単身者など幅広い層へブランドアピールができることで、安定的な業績拡大につながっています。
2018年3月期は売上高、営業・経常・当期純利益ともに過去最高を達成しました。2018年度月次の既存店売上高は、6月を除いて8月まで前年割れ。台風など全国的に悪天候が続き、客足が遠のいていましたが、9月には客単価が伸びて、顧客減少分をカバーしています。10月には客数が前年同月比で2.4%増加するなど、売上トレンドを回復。これからはクリスマスやお正月用アイテムなど、ファンを魅了する商品の投入が見込まれますし、出店の加速などによる成長にも期待したいですね。
業績好調ながらも明暗分かれる
セリアを加え、12月の「日興ストラテジー・セレクション」は全部で20銘柄となりました。相次ぐ2019年3月期第2四半期の決算報告や海外のニュースがきっかけとなり、株価が左右される結果となっています。
自然災害の影響も一服
株価が底打ちしているのは、「セイノーHD」「共立メンテナンス」です。
「 セイノーHD 」は、6月末の西日本集中豪雨や9月の北海道地震など、業務停止を余儀なくされる時期もありましたが、新規荷主の獲得など取扱貨物の増加に注力。その結果、業績は堅調に推移しているとして、2019年3月通期の業績計画を上方修正しました。株価は10月25日を底に、底打ちの気配がみられます。
「 共立メンテナンス 」は、自然災害による影響を克服し、主力事業である寮事業、ホテル事業が安定的に成長していることから、2019年3月通期の営業利益計画を上方修正しました。このニュースをきっかけに株価は反転上昇の兆しが見え始めています。
業績悪化リスクで、安値をうかがう銘柄も
一方で、業績に陰りが見られ、株価が下がっているのは「日本M&Aセンター」と「TDK」です。
「 日本M&Aセンター 」は、2018年3月期決算に8期連続で最高益を更新していましたが、2019年3月期第2四半期累計では増収減益に。順調に業績を拡大させているなかの決算低調ニュースに株価が大きく反応しました。しかしながら、4~9月におけるM&A仲介の成約数は過去最多を実現。さらには製造業向け技術コンサルティングのKMC社との業務提携を発表しています。今後の業績回復に期待したいですね。
「 TDK 」は、新型iPhoneの販売不振に対する懸念が強まり株価が下落しました。米アップルに顔認証センサーを供給する米ルメンタムHDが2018年10~12月期の業績見通しを下方修正。このニュースがきっかけで「iPhoneの売れ行きがあまり良くないのでは」との憶測を呼び、iPhoneに部品を供給している同社の株価は年初来安値を付けました。
12月に除外となった銘柄はありません。
今回のテーマで取り上げた上場企業
セリア
セイノーHD
共立メンテナンス
日本M&Aセンター
TDK