第9回 株価急騰を予感させる、「会社四季報」のキーワードとは

四季報ひとすじ20年! 達人が教える活用のススメ/ 渡部 清二日興フロッギー編集部

いよいよ今回から、「会社四季報」を使った銘柄探しの実践編が新たな展開を迎えます。2019年1集(新春号)で完全読破歴85冊目、22年目に達する渡部清二さんから、「会社四季報」で株価がグングン上がる銘柄を見つけ出すコツについてレクチャーしてもらいます。新シリーズの初回は、「会社四季報」の取材記者が記したキーワード(寸評)に注目した銘柄選びについてです。
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必ずチェックしたい注目ワードは「動意づく」と「雌伏(しふく)」

−−「会社四季報」には、株価が上がる兆しを教えてくれるキーワードがいっぱい潜んでいそうですが、どのようなものが考えられるでしょうか?

「会社四季報」の記者たちは、自分が取材した企業のビジネスの状況について、いくつかの特徴的なキーワードを用いながら手短に分析しています。どのキーワードを用いて表現しているのかによって、これから業績や株価に影響を与えそうなものが見えてくることがあります。

株価を大きく動かすのは、市場で取引に参加している人たちの「サプライズ(驚き)」です。ずっとパッとしなかった業績が急に改善すると、ポジティブな「驚き」となって投資家たちの買いを誘い、株価が上昇しがちです。

業績が良くなる直前の状態を表している「会社四季報」のキーワードとして、私が特に注目しているが「動意づく」「雌伏(しふく)」です。最新号が発売されたらすぐにこれらの言葉が用いられている銘柄を見つけ出し、その後の株価の動きを観察するようにしています。

−−つまり、「動意づく」や「雌伏」といったキーワードを見つけた時点でその銘柄を買っておけば、株価が上がる前に先回りできる可能性があるということですね。

必ずしも上がるわけではありませんが、その可能性は十分にあります。「動意づく」とは、業績や株価が大きく動きそうな気配を示していることを意味しています。言い換えれば、記者が取材した時点ではまだ株価に目立った変化がなかったということです。

一方、力を養いながら活躍できるチャンスを待っている状況を指しているのが「雌伏」です。売上や利益の伸びなど目に見えるような形での改善にはつながっていなくても、記者たちが取材を通じてその企業が良い方向に変わってきていることを感じとったからこそ、こうしたキーワードを用いているわけです。

スランプからの脱出を意味する「底打ち」の解釈には要注意

−−「動意づく」や「雌伏」のように、スランプから脱しつつある状況を物語っているキーワードとしては、他にどんなものが挙げられますか。

他には「底打ち」というキーワードも同じような意味として使われます。ただ、「動意づく」や「雌伏」と違って、慎重な見極めが求められてきます。なぜなら、業績がどんどん悪くなっていくというスランプのトンネルを抜けて大底を脱しても、その後の回復ピッチが鈍いケースも少なくないからです。

もしも自分自身が「会社四季報」の記者だったとしたら、最悪期を抜けてV字の回復を期待できそうな企業に対して、「動意づく」と「底打ち」のどちらのキーワードを用いるでしょうか? おそらく多くの人たちは、「業績の悪化は止まったものの、V字の回復までは見込めない」という企業には、「底打ち」という言葉を選ぶはずです。

「繁忙」が出たら業績ピークアウトを疑え

−−「底打ち」以外にも、気をつけておいたほうがいいキーワードはありますか?

ええ。逆に、パッと見た限りではその企業のビジネスが好調であるように感じ取れるものの、株価の上昇が鈍ったり、下げに転じたりする可能性のあるキーワードもあります。

その一例として挙げられるのが「繁忙」で、私はこの言葉を目にしたら警戒するようにしています。なぜなら、足元のビジネスが絶好調であることを意味していますが、すでに業績がピーク圏に達していて、間もなく伸びが鈍ってくるケースも考えられるからです。

前の年や、前の年の同じ時期と比べて業績が良くなっていることは、株価が上昇するための大切な要素です。しかしながら、その伸びが過去と比べて少しでも小さくなってくると、株式市場では業績の伸びが鈍ったと捉えがちで、株価も下落しやすくなります。

「最高益」や「連続増収増益」もポジティブな言葉

ピークアウトの可能性をはらんでいる「繁忙」に対し、「最高益」「連続増収増益」といったキーワードからは、まだまだ快進撃が続きそうなムードが漂ってきます。特に株式市場では、「○期連続」「最高益更新」といった記録的な出来事にポジティブな反応を示すことが多いものです。

今回のレッスンをおさらいすると、スランプ脱出を暗示している「動意づく」や「雌伏」、絶好調をキープしそうな「最高益」や「連続増収増益」は株価の上昇を期待できるキーワードです。これに対し、必ずしも速やかな改善を期待できない「底打ち」と、好調がそろそろ途絶える恐れのある「繁忙」は要注意だと言えます。

「動意づく」や「雌伏」はなかなかお目にかかれないレアなキーワードですが、四季報オンラインで検索すれば、該当銘柄をすぐに見つけることができます。ほかの言葉についてもぜひ検索して、銘柄選びの参考にしてみてください。

なお、次回は、まだマーケットではさほど注目されていないものの、まさに「これから旬を迎えるキーワード」にスポットを当てる予定ですので、どうかお楽しみに!

<まとめ>
・「会社四季報」特有のキーワードとは、記者が取材を通じて肌で感じたその企業の状態を手短な言葉で表現したもの
・「動意づく」や「雌伏」は、スランプのトンネルを抜け出して急回復する可能性を示している
・V字回復の確信がない「底打ち」や、伸びが止まる可能性のある「繁忙」には気をつけよう
・「最高益」や「連続増収増益」は快進撃が続いている状況を表している