PERで読み解くニトリHD

月曜日はPERをトコトン!/ 日興フロッギー編集部ジュン オソン

「PERで読み解く国際石油開発帝石」を読む
国内では3月期第3四半期決算の発表シーズン入り! 決算が悪くても株価が上がるようなら底入れのサインかも!? そんなときはPERを確認して、割安な銘柄の投資を検討してみましょう。PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。

PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
(もしくは、時価総額÷当期純利益)

新たな市場へのチャレンジがPERを左右するケース

国内市場で大成功した企業でも、そのビジネスモデルがすぐに新しい海外市場で通じるとは限りません。特に生活様式や文化に密着した産業であれば、現地の環境に応じた商品の開発や、人材の確保などが必要となります。今回はそうした新しいマーケットに挑戦する過程で、PERが左右されるケースを見ていきます。

case23:ニトリHD

今回取り上げるのは、「お、ねだん以上。」のキャッチコピーでおなじみの「 ニトリHD 」です。良質で安価な製品を、大型家具から生活雑貨まで幅広く提供。業績面でも、2017年度まで31期連続増収経常増益を達成するなど、好調を維持しています。

PERは割高感のない水準に

ニトリHDのビジネスモデルは、製品の企画・製造から流通・販売まですべてを網羅することで、ユーザーのニーズを製品に活かすとともに、コストを低くコントロールできることが強みです。こうしたビジネスモデルは、「SPA(製造小売)」と呼ばれ、ユニクロやGAPなどアパレルメーカーを中心に採用されています。

そんな同社の株価は、2018年後半からやや頭打ち状態にあります。予想PER(東洋経済予想)を見ると、足元では22.5倍にまで落ち込んできています。2010年以降の平均PER(18.8倍)は上回っていますが、一時期30倍超あったことを考えると、投資を手控える人が増えていることがうかがえます。

「中国出店の抑制」がPERを下押し

PERや株価が頭打ち状態にある理由は、「中国出店の抑制」です。
同社は、中国への出店を進めることで、事業の成長を推し進める方針を示していました。2017年度の決算発表でも、中国事業を2022年に200店舗、2032年に1000店舗と拡大することを公表しており、2018年中に基盤づくりを完了させる計画でした(2018年11月末時点で33店舗)。

しかし、2018年9月26日の第2四半期決算説明会において、中国出店数の抑制が発表されました。進出そのものは変えない見込みですが、すでに進出している店舗において、下記3点の課題が見つかったためとしています。

1.現地のニーズに合う、安定した商品力の確保が難しい
2.出店スピードに人材確保が追いつかない
3.中国ならではの立地戦略の策定に時間がかかっている

このため、投資家の間で「中国事業が軌道に乗るのはもう少し時間がかかりそう」という懸念が広がり、その結果として株価やPERの頭打ち傾向につながったと考えられます。

ただ、中国では家具を購入するであろう中間所得層が4億人以上いるといわれ、今後さらに増加中とのこと。拡大する中国の家具市場への期待は変わらないものと見られます。国内市場の成長率鈍化は不可避と見られていることもあり、中国事業の拡大が着実に進むのを確認できるようになれば、再び株価は上昇トレンドを回復するのではないでしょうか。

<PERの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①と③からニトリHDを見てきました。国内市場の低迷から、中国という新たな市場へとチャレンジしているニトリ。いまは挑戦の過程で足踏み状態にあり、多くの投資家が様子見の姿勢のようです。明らかな結果が出るまでは、しばらく中国事業の進捗にPERの動向が左右されそうです。PERやその会社の成長性を考える際は、その会社がこれから力を入れようとしてるマーケットの動向や抱えている課題内容なども注視してみると良いかもしれません。

本記事は、PERを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。