PERで読み解くブリヂストン

月曜日はPERをトコトン!/ 日興フロッギー編集部ジュン オソン

「PERで読み解くニトリHD」を読む
初心者からベテランの投資家まで、幅広い投資家層が参考にしているPER。PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。

PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
(もしくは、時価総額÷当期純利益)

目線を遠くへ

決算発表などにより大きく変動することがある、株価やPER。もちろん直近の業績を確認することは大切ですが、中長期的な株価やPERの水準を考える上では、中期経営計画や将来に向けた事業投資にきちんと目を配ることが必要不可欠です。そこで今回は、まだ業績への影響は不透明ながらも、経営計画に沿って大型の買収が発表されたケースをご紹介します。

case24:ブリヂストン

今回取り上げるのは、世界シェアトップのタイヤメーカー「 ブリヂストン 」です。創業者が石橋正二郎さんだったことから、「石橋=ブリッヂストーン」⇒「ブリヂストン」となった話は有名ですよね。同社は、乗用車用や二輪車用のタイヤだけでなく、ゴルフやテニス用品なども手掛けています。

2018年から低迷する株価

株価は2018年初より下落トレンドをたどっています。予想PERも10倍と、過去平均14.6倍を下回る状況が続いています。同社の株価やPERが低迷している理由の1つには、原油価格高騰によるコスト上昇が挙げられます。

原油高騰の影響残る

2017年夏から2018年秋ごろまで、OPEC(石油輸出国機構)などによる協調減産により、原油価格は上昇し続けていました。このため、原油を原料とする合成ゴムなどの製造コストが増え、同社の利益を圧迫する要因となりました。ただ、2018年末以降は原油価格上昇も一服しており、次第に株価やPERへの影響は薄れると考えられます。

今後を左右する1000億円の大型買収に着目

一方、今後のブリヂストンの株価やPERに大きな影響を与えそうなのが、2019年1月22日に発表した大型買収です。地図サービス世界大手であるオランダのTomTom(トムトム)の子会社で、ネットを利用した車両管理サービス事業を手掛けるTomTomテレマティクスを約1100億円で買収すると発表しました。

この会社は、車両に設置した通信機器から、運転手や走行状況についてのデータを収集する事業を行っています。ブリヂストンは今回の買収を通して、タイヤ販売と同時に、運行効率化サービスの開発、提供につなげる狙いがあるとみられます。中期経営計画の中でも、タイヤを使う運送業者や鉱山開発会社に対して、走行データを基にした「ソリューション」を実施することが掲げられていました。その会社としての方針が今回の買収に繋がったものと考えられます。今後の業績を支える大きな柱となる可能性があり、これからの株価上昇を後押しするかもしれませんね。

<PERの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①からブリヂストンを見てきました。足元ではまだ原油価格高騰の影響が残り、株価は低迷している同社。しかし、すでに未来に向けた先行投資を着実に進めているようです。まだ収益の影響の見極めが難しいため、株価急上昇とまではいきませんが、将来の事業の柱として期待と注目が集まるのではないでしょうか。

本記事は、PERを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。