PERで読み解くセブン&アイHD

月曜日はPERをトコトン!/ 日興フロッギー編集部武田 侑大

「PERで読み解くブリヂストン」を読む
決算資料に目を通す時は、ただ見るだけではなくPERも併せて考えることで、ほかの投資家がその企業をどう評価しているのかを読み取ることができます。PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。

PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
(もしくは、時価総額÷当期純利益)

どんな成功体験も岐路に立つ!?

足元の業績が好調で、最高益を更新すると予想されていても、ビジネスモデルそのものに関する課題を抱えているケースでは、株価やPERの上値が重くなることがあります。特にこれまで成功していたシステムを刷新しなければならない可能性がある場合、投資家は慎重にならざるを得ません。今回は、そんな成功体験が岐路に立っているケースをご紹介します。

case25:セブン&アイHD

今回取り上げるのは、セブン-イレブンやイトーヨーカドーなどでおなじみの「 セブン&アイ・ホールディングス 」です。同社の中核事業であるセブン-イレブンは、国内の2万店舗に加え、海外にも4.6万店舗以上展開し、世界で活躍する小売企業と言えます(2018年末時点)。

好業績なのに株価やPERは低迷

株価は横ばいの推移が続いているほか、予想PERは19.3倍と業種平均よりも低い状況です。8期連続営業増益で、2019年2月期も営業利益は最高益更新が見込まれる(東洋経済予想)にもかかわらず、株価やPERは芳しくありません。

オーナーを悩ませる「24時間営業問題」

株価の上値が重い背景の1つとして、「24時間営業問題」があります。セブン-イレブンでは、約98%の店舗が「フランチャイズ」と呼ばれる経営方法がとられています。フランチャイズ店では、会社側が店舗インフラの整備や商品の開発、広告・宣伝を行う一方で、オーナーは従業員などを雇い、日々の運営を行うことで、利益を折半する仕組みになっています。

人手不足でコストが増加傾向

ただ、近年は人件費の上昇により、オーナー側の利益が圧迫される傾向にあります。また、そもそも人手不足で、従業員の確保が難しく、オーナー自らが連続で夜勤にあたるなど、負担が増しているという現状です。2月中旬には、営業時間を午前6時から翌午前1時までの19時間に短縮する店舗が出現し、会社と対立しているというニュースもありました。

ただ、セブン&アイHDとしても、すぐに24時間営業の体制を改めるのは困難です。たとえば商品を運ぶ物流システムが24時間営業を前提に仕組みが作られており、時間を短縮させた一部店舗に合わせるように変えるとなると、新たなコストが発生する可能性もあります。

岐路に立つ「便利さ」

同社では、一部店舗で実験的に短縮営業を始めると発表していますが、しばらくは試行錯誤の状態が続くのではないでしょうか。すでにわれわれの生活に欠かせない存在であるコンビニエンスストア。いつでも利用できる利便性がどのような形となって残るのか、まさに正念場の局面といえるのではないでしょうか。

<PERの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①からセブン&アイHDを見てきました。いつも便利で何気なく通っているセブン-イレブン。しかし、人手不足という社会全体の課題が、企業業績に大きな影響を与え始めているようです。これからの新しいコンビニの姿に加え、同社がどうやってこの岐路を乗り越えていくのかに注目ですね。

本記事は、PERを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。