ROEで読み解くJXTGホールディングス

水曜日はROEをトコトン!/ 日興フロッギー編集部ery

「ROEで読み解く武田薬品工業」を読む
3月決算企業の「権利付取引最終日」を過ぎたことで、今日から実質的な新年度入り。企業のROEとこれからの成長ストーリーをチェックして、2019年度最初の投資をスタートさせましょう。
ROEとは、「Return On Equity」の略称で、日本語では「自己資本利益率」または「株主資本利益率」と言います。ROEは1株あたり利益(EPS)を1株あたり自己資本で割ることで計算でき、5%、10%というようにパーセンテージで表されます。日本企業の場合、一般的に8%が資本効率の1つの目安であると言われ、それを上回ると資本効率が良いと判断されます。

ROE(%)=1株あたり利益(EPS)÷1株あたり自己資本×100
(ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100)

資本効率以外がボトルネックになることも

ROEは、投資家と企業のより良い関係について書かれた「伊藤レポート(2014年)」で注目され、企業への投資を判断する重要な材料の1つとして認知されるようになりました。しかし、ROEが高ければ必ず投資家から評価されるようになったかというと、そうではありません。将来も継続して今の利益を稼ぐことができそうか、環境や社会にも配慮した経営をおこなっているかという点も、投資を考える上では重要です。そこで今回は、資本効率以外の要因が株価を押し下げているケースをご紹介します。

case6:JXTGホールディングス

今回取り上げるのは、ガソリンスタンド「ENEOS」などでおなじみの「 JXTGホールディングス 」です。
国内シェア5割を握るガソリン販売事業のほか、世界で石油・ガス開発、銅鉱山開発なども手掛けており、コモディティ(商品)総合企業と言えます。

高ROEも、評価されず

同社のROEは2018年3月期に17.0%、2019年3月期は12.2%と予想されています(QUICKコンセンサスベース)。一見ROEが高く、利益効率が良さそうに見えますが、PERは10倍以下の状況が続いており、株式市場ではあまり評価されていないことが読み取れます。

理由① ガソリン需要の減少

PERが低い状況にある理由は大きく分けて2つ考えられます。
1つは主力事業であるガソリンの国内における需要が減少傾向にあることです。そもそも国内の自動車販売台数は横ばいなことに加え、近年は燃費の良い車を選ぶドライバーが多く、ガソリンそのものの需要が減ってきているのです。そのため、同社のガソリンスタンドにおける収益はこれからも縮小をたどることが見込まれています。

理由② 「ESG投資」普及による敬遠

2つ目の理由は「ESG投資」の広がりです。
ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の側面から考えて、適している企業に投資をすることです。従来は、投資を考えるうえで業績など数値データのみを見る傾向がありました。しかし、地球環境の保全に役立つ活動をしていたり、貧困をなくす活動を支援するなど、業績以外の面で優れた実績を残す企業を評価する動きが近年増えてきています。

こうした「ESG投資」の観点から見ると、JXTGホールディングスの事業のうち、石油や石炭などの化石燃料を扱っている事業は、環境への負荷が大きいと判断されやすいと考えられます。結果として、ESG投資を実践する一部の投資家からは、投資されにくい状況になっていると考えられます。

「見えない成長ストーリー」が株価の重しに

ガソリン市場の縮小は以前から指摘されており、国内の石油元売り企業の業界再編が進められてきました。また、2019年2月8日には、増配や自社株買いなど積極的な株主還元策が発表されましたが、株価は低迷したままです。上記2つの同社にとってのマイナスな情勢を覆すような新しい事業成長を描くストーリーが見えてこない限りは、いくら足元のROEが高くても、評価されにくいかもしれません。

<ROEの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②株主還元策を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①②③からJXTGホールディングスを見てきました。株主還元策に積極的で、ROEがいくら高くても、社会的に求められる投資スタイルに合わなかったり、事業としての成長ストーリーが見えにくければ、株価は評価されにくい傾向があります。ただ、逆に言えばPERが10倍以下になるまで売られている状況では、少しでも成長ストーリーの種を見つけることができれば、株価が反発する可能性もあります。今後の中期経営計画や、新しい事業の買収などに注目しておけば、その「変わり目」をキャッチすることができるかもしれませんね。

本記事は、ROEを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。