うっかり「やっちまっている」ムダを省けば、出費を抑えながらオイシイものを食べたり、趣味や旅行に回したり、将来に備えて投資したりがラクラク実現する! そんな夢をかなえるために結成された「お金のムダ省き隊」。この連載では、お金のムダ省き隊の隊員たちが、“お金のプロ”にコストカットの秘訣・裏ワザを聞きまくります。
「保険料を節約して投資し隊~ 3大固定費『保険』を見直す〜自分がどんな保険に入ってるのかを棚卸しせよ!」を読む
「がん保険」は第3世代に進化中!
S子
前回は、保険の基本から見直すポイントまで、アドバイスをありがとうございました。今回は、がん保険について教えてください!
千﨑
はい、わかりました。がんは医療技術が進化したことで、必ずしも死に至る病とは言えなくなっています。死亡率は減少傾向にあり、早期発見の場合の5年生存率は乳がんで95%、前立腺がんは99%とも言われています。しかし、およそ2人に1人ががんになり、その治療費が非常に高額になることもあるため、手厚い保障が受けられるがん保険に加入することをお勧めしています。
C江
がん保険にはたくさんの商品があって、何を選べば良いのか……。
千﨑
そうですね。がん保険は、保険会社によって保障内容や保障される範囲が大きく異なりますから、内容をきちんと確認して、自分が必要とする条件を備えた商品を選ぶことが重要です。
千﨑
がん保険は主に、がんと診断されたときに給付される「診断給付金」、がん治療のために入院したときに給付される「入院給付金」、がんで所定の手術を受けたときに給付される「手術給付金」、治療や検査などで通院したときに給付される「通院給付金」などで構成されています。
商品によってその保障額や給付回数などが異なってきます。また、先進医療保障特約や就業不能保障などのオプションを付けることもできます。
S子
なるほど。保障を付けてないものに限って、実は必要となったり……ってありそう。でも全部盛りにしたらコストもかかるんですよね。
千﨑
はい。そこが難しいところではあります。
S子
ところで先生、そもそもがん保険って、いつ頃から出てきたものなのでしょうか。
千﨑
がん保険は1974年に販売が開始され、当時は画期的な保険として注目を集めました。その理由は、がんと診断された場合に診断給付金を受け取ることができた点です。また、入院や手術、通院などに対する保障がパッケージとして提供されていたことなどが挙げられます。
千﨑
また、がん保険は時代によって進化を遂げてきました。1974年から2000年初頭までを第1世代、2000年から2015年までを第2世代、2015年以降を第3世代と分けることができます。
C江
そんなの初めて聞きました! でも、それって何が違うんですか。
千﨑
実は、診断給付金を受け取れる回数が異なるんです。第1世代では、初めてがんと診断されたときのみ給付されました。第2世代では、2年に一度何回でも受け取れるようになりました。ただし、2回目以降支払われるのは「転移・再発した場合」「治療のための入院(検査入院は不可)」「治療のための通院」のいずれかが対象となっていました。第3世代では、1年ごとなど、より短期間で複数回給付される他、治療をしたときに受け取れるがん治療保険が登場しています。
S子
へー! がんは再発リスクも高いと聞くので、複数回給付されるなら安心感が高まりそう。
新型がん治療薬、差額ベッド代……
千﨑
医療技術が進歩したことで、がんの種類やステージ(病期)、部位や状態によって様々な治療法を選択できる時代になりました。例えば、がん組織を切除する「手術」、抗がん剤やホルモン剤を投与する「薬物療法」、がん組織の増殖を抑える「放射線療法」の3療法は「標準治療」とも呼ばれています。
千﨑
高額にはなるものの治療効果が期待できる先進医療や新薬も徐々に利用されつつあります。例えば、新型がん治療薬「オプジーボ」は2014年の販売当初、患者1人に年間約3500万円かかる高額薬として話題になりました。現在では健康保険適用になりましたが、月約17万円程度かかりまだ高額な治療法と言えます。
C江
治療費に関しては、前回解説していただいた「高額療養費制度」を利用することはできるのでしょうか。
千﨑
もちろん利用可能です。毎月の入院・治療費の上限を定めたこの制度では、年収770万円以下の人ならば、「8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1%」まで抑えることができます。例えば、100万円の治療費がかかった場合でも、自己負担額は87,430円で済みます。
千﨑
ただ、経済的なリスクも考慮する必要があります。例えば、治療費以外にも差額ベッド代やウィッグ代、通院交通費など付随する費用が発生しますし、入院・通院のため仕事が制限されて中長期に渡り収入が減る可能性も考えられます。
S子
2人に1人ががんになる可能性があるということ、莫大な治療費用がかかることもあるので、がん保険には加入しておいた方がいいような気がしてまいりました……。
千﨑
そうですね。特に備えたい部分が何かによって保険選びも変わってきます。例えば、交通費や雑費など日々かかる費用が気になる場合は、通院給付金を日額で支払うタイプ、まとまった一時金を受け取りたいなら一時金メインのタイプなどを選ぶことができます。
C江
がん保険を選ぶ際に気を付けないといけないポイントはありますか?
千﨑
まず、悪性新生物だけでなく、上皮内新生物が保障されるかを確認することが大事です。がんは大きく分けると、悪性新生物と上皮内新生物の2つに分類されます。悪性新生物は、転移や再発の可能性もあり、治療も長期化しやすく、一般的に保障の対象になります。治療を行えば、ほぼ完治できる上皮内新生物は、転移や再発の可能性もほとんどないと言われているため、がん保険によっては保障対象外となることもあります。特に最近では検査の技術や精度が上がっているため早期で発見されることも多いので、上皮内新生物も保障対象になっている保険を選んだ方が安心だと言えます。
C江
なるほど。他に注意すべきことはありますか?
千﨑
がんの罹患率は、30代・40代から徐々に上昇しはじめ、年齢とともに高くなっています。特に60代以降は男性の罹患率は顕著に高くなります。反対に女性は、女性特有のがんにおいては若い年代での罹患率が男性と比べて高くなっています。保険料は加入年齢によって変動しますので、男性はなるべく早めにがん保険に加入することをお勧めします。
「貯蓄は三角、保険は四角」
S子
保険は万一のリスクに備えるもの。がんにならなければ、給付金も受け取れませんよね。それならば「保険料を払った分を貯蓄に回す」という考えもあると思うのですが。
千﨑
保険の仕組みを説明するときに「貯蓄は三角、保険は四角」と表現することがあります。貯蓄はお金を少しずつ積み立てていくので、年齢を経るごとに残高は右肩上がりの形、つまり三角形になります。対して保険は年齢に関係なく、加入したときから保障額が一定、つまり受け取れる額が一定ですから四角形になります。
千﨑
貯蓄は積み立て途中で亡くなってしまうと、それまで積み立てられたお金だけしか返ってきません。一方、保険は確実に大きな保障を手にすることができます。特に若いときは貯蓄が少ないので、保険の役割は大きいものになります。保険か貯蓄かのどちらかではなく、両方をバランスよく組み合わせることで様々なリスクに備えることが可能となります。
C江
公的保障や貯蓄でもまかなえない部分を保障するがん保険には加入すべし! という考え方ですね。他にも考えておいた方がいいことはありますか?
千﨑
がん保険と合わせて「死亡保険」にも加入することをお勧めします。死亡保険には「リビングニーズ」という特約が付いてきます。余命半年と宣告されると、死亡保険金額が3000万円まで非課税で受け取れます。がんになった場合、自身や周りの経済的な負担はかなり大きいものです。残された家族のことを考えると、死亡保険とがん保険を手厚くすることは必須だと思います。
S子
がんに特化した保険だけでなく、他の疾病も保障してくれる「医療保険」には加入する必要はないですか?
千﨑
いい質問ですね。がん保険とは異なり、医療保険はそれほど重要だとは言い切れないんですよ。
C江
えー、どうして?
千﨑
次回は、医療保険について詳しく解説していきましょう。
S子
よろしくお願いします!
・およそ2人に1人ががんにかかる可能性がある
・がんの治療費は高額になりやすいため、高額療養費制度も利用して経済的なリスクに備えるべし
・がん保険は商品が多様なため、特に備えたい部分を考慮して商品を検討する