第3回「どうすれば税金が下がるの?」控除について聞いてみた

元国税局職員に聞く! 合法・節税マニュアル/ さんきゅう倉田日興フロッギー編集部

第2回「結局のところ、税金をいくら払ってる」のか、聞いてみた(所得税編)を読む
前回、所得税の計算には「課税所得」金額がモトになることを知った2人。さらに、この「課税所得」金額を少なくすることができる「控除」を使えば、税金が安くなることを教えてもらいました。今回は、絶対におさえておくべき「控除」はどれなのか。そして、控除の効果的なつけ方などを、さんきゅう倉田さんに教えてもらいます!

<まとめ>
・確定申告書は所得税を計算するための書類
・サラリーマンも専業主婦(夫)も、必修! 「iDeCo」「ふるさと納税」
・「所得控除」は「所得が高い人」につけると効果大
・税額をガツンと減らす住宅ローン減税は、控除のタイミングが異なる

控除の王道・iDeCo&ふるさと納税!

S子

前回、税金の金額を決めるときに、元となる所得から引いてもいい「控除」があることを知りました! だれもが絶対に知っておくべき控除ってどれですか?

C江

私も知らなきゃ損、なことがあるのはイヤです! 先生、さっそくお願いします!

倉田さん

はい。では、確定申告書を見ながら、説明しますね。

C江

確定申告書? ですか?

S子

あぁ……毎年3月にベソかきながら向かうやつ。どこに何を書けばいいのか、毎年キレーに記憶がリセットしてて、自分でも驚く。

倉田さん

確定申告書は、所得税を計算して申告するためのものです。サラリーマンの方だと会社の年末調整で所得税の申告が終わっているので、意識することがないかもしれませんね。一方、自営業者やフリーランスの方は、避けては通れないけれども「正直苦手」という方が少なくないようです。

倉田さん

でも、確定申告書はよく見ると、前回説明した「税金の計算の順番」に書かれているだけなんですよ。まずは、収入額(額面でもらった金額)。次に経費となる金額を引いた所得金額。そして、「所得から差し引かれる金額」に書かれている「控除」を差し引いて、税金を計算する。

S子

あれ、本当だ!?

C江

「所得から差し引かれる金額」に記載されている控除は12個ありますね。

S子

この中で、取り組まなきゃ損! な控除ってどれですか?

倉田さん

そうですね。フリーランスでしたら、「小規模企業共済等掛金控除」でしょう。
中小企業基盤整備機構の運営する「小規模企業共済」へ支払った掛け金の全額を控除できるんですよ。

S子

あ! それ知ってます。独立した時に、フリーランス仲間から「絶対やるべし!」と言われたので、とりあえず掛け金MAXにしてます。さらに前納するとお得度がUPするって言われたんで前納で。

倉田さん

S子さん、抜かりないですね。
小規模企業共済は、個人事業主が事業を廃止した場合に退職金の代わりに、払い込んだ掛け金を受け取れるんですよ。自分のために退職金を作りながら、その掛け金が全額控除となるので、やらない手はないです。

C江

全額控除ってすごいですね。でも、私はパートで働いている専業主婦なので、関係ないかな……。

倉田さん

いえいえ。小規模企業共済等掛金控除にはiDeCoも含まれます。iDeCoは運用益も非課税なので、老後の資金をつくりながら、節税を考える上でもやったほうがよいでしょう。

C江

iDeCoの制度自体は聞いたことはあったのですが、よく理解していなかったです。運用益も非課税だなんて、これまでもったいないことをしてきたわ……。

倉田さん

次に寄付金控除。これは、国や地方公共団体などに寄付したときに、寄付金の額―2000円の額を控除することができるというものです(限度額あり)。

S子

ズバリ、「ふるさと納税」が含まれるやつですよね。いろんな地方自治体から返礼品が届くのが楽しみなので、どこがお得なのか調べまくって寄付してますよ(夫名義の分を)!

倉田さん

高所得者の中には、ふるさと納税の返礼品で食材や日用品をまかなっている方も少なくないんです。お金持ちほど制度を熟知して、余すところなく使い倒しているんですよ。

S子

そんな生活、憧れます!

医療費控除は、夫婦で収入の多い方につけるべし

C江

そういえば、控除といえば、医療費控除がありますよね! 私も周りの友だちも、せっせと病院や薬局のレシートを集めてます。

倉田さん

C江さん、平成29年分の確定申告から領収書の提出は不要となってますよ。その代わりに提出するのが明細書です。領収書は自宅で5年間保存することが義務付けられています。

カエル先生の一言

平成29年から、医療費控除の特例で、「セルフメディケーション税制」を選択することもできるようになりました。セルフメディケーション税制は、健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人が、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができます。

倉田さん

医療費控除は、医療費が10万円以上、もしくは所得が200万円(年収310万円)未満の場合、所得の5%以上かかったら、医療費控除を受けることができます。

S子

医療費控除って手間の割に控除額が少ないと思ってたんだけど、レシートの添付は不要になってたんですね。そして10万円を超えてなくても、受けられるなんて知りませんでした! 結構改正があるものなんですね。

S子

個人的には春頃にニュースで見た「スポーツジム費」を医療費控除の対象にする、という提言が気になっています。「筋肉」ブームですし、予防医療としてスポーツジムの活用が今後さらに重視されると思っているので。

C江

話がそれたので、戻します。
医療費控除について、ほかにおさえておくべきポイントはありますか?

倉田さん

医療費控除は同じ財布で生活していれば(生計を一にしている)、夫婦どちらにつけてもいい、という点も見逃せませんね。

C江

ということは……収入の多い方につけたほうがいい、ということですよね?!

倉田さん

そうです。前回の所得税額の表を思い出してください。
累進課税で年収が高いほど、税率も高くなります。
収入が多い方に控除を多くつけた方が、節税できる額が多くなりますよ。

倉田さん

そして、実は「社会保険料控除」も夫婦のうち、どちらにつけてもいいんです。

カエル先生の一言

国民年金、国民健康保険、健康保険、厚生年金保険などが社会保険料控除に該当します。
生計を一にする配偶者やその他親族の負担すべき社会保険料を納めた時に受けられます。

S子

先生! いま目からウロコが落ちました。私の収入から、小規模企業共済控除して青色申告控除を使ったら、実際のところ、もう引けるものがないぐらいなんです。そうか……夫に社会保険料を払ってもらったら、社会保険料控除を夫につけられる……んですね

S子

……どうしてこんな重大な節税策を知らずに生きてきたのだろうか。そして、確定申告書を税務署に提出に行ったときにチェックしてくれた税務署の職員さん含め、どうして誰ひとりとして教えてくれなかったんデスカ……。これまで、夫婦でどれだけロスしてきたのかな……(遠い目)。

C江

ちょっと、取材中に計算はじめないでよ! 来年提出分の確定申告からは、そうしなよ。

節税効果が絶大! 住宅ローン控除

C江

ところで、ここまでの説明で、「住宅ローン控除」が見当たらないのですが……。

倉田さん

これまで説明していた控除は、所得金額から引く控除(所得控除)でした。しかし、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は所得税の金額から引く控除(税額控除)なんですよ。

倉田さん

つまり、「あなたはこれだけ税金を払えますね」という額(課税所得)からさらに差し引けるので、節税効果が絶大です。

S子

あれ? 確定申告の用紙で、12の所得控除は左下にあるのに、住宅ローン控除は右側にあるんだ!? 知らなかった!

倉田さん

そうです、控除するタイミングが異なるんです。
さて、所得控除は所得の高い人、税額控除は所得の低い人に有利になります
C江さん、どうしてか分かりますか?

C江

所得税は、所得が高い人ほど税率も高くなるから……ですか?

倉田さん

そう! 累進課税だからです。
たとえば、所得から差し引くことができる100万円分の控除があったとします。
500万円と300万円の所得の人で比較してみましょう。

倉田さん

500万円にかかる所得税は20%なので、控除された100万円のうち20%の20万円を払わなくてよくなります。一方、300万円にかかる所得税は10%なので、100万円の10%の10万円を支払わなくてよくなる。こう考えると、所得控除は所得の高い人のほうにメリットがあることが分かりますよね。

特定支出控除ってなんだ?

S子

あのー、先生の本で目にしたのですが、サラリーマンでも「特定支出控除」っていうやつを以前よりは使いやすくなったと書いてありました。でも、見たことも聞いたこともない制度でして。どんなものか教えていただけますか。

倉田さん

特定支出控除とは、サラリーマンや公務員が「仕事をする上で必要」と認められたものの費用が、その年の給与所得控除額の2分の1を超えた場合に、超えた分の額を控除できます。対象となるのは、スーツや仕事に関係する書籍、仕事に必要な資格取得のためにかかった費用などです。

倉田さん

前回、給与所得控除についてお話ししましたが、年収1000万円の人で具体的に見ていきましょう。1000万円以上の人が受けられる給与所得控除は220万円です。特定支出控除の対象になるのは、この220万円の1/2に相当する110万円を超えた分です。

S子

ということは?(まだ分かっていない)

倉田さん

ざっくりと毎月10万円分、仕事に直結するようなセミナーに通い、なおかつそれを会社に経費として認めてもらったとします。この場合、10万円を特定支出控除として申告できますよ、というものなんですね。

10万円×12ヵ月=120万円
120万円ー110万円=10万円

S子

すっごく高いハードルでした(汗)。

倉田さん

そうですね。会社から証明書をもらって確定申告もする必要があるので、実際に特定支出控除を使っている方はそう多くいらっしゃらないのが実態です。

S子

しかし……税金まわりって、「間違いのない日本語」で丁寧に説明されているはず。なのに、ここまで噛み砕いて、具体的に教えてもらわないと理解できないのは、ナゼなんだろう。

C江

先生! まだ聞きたいことがあります!
2018年に「配偶者控除」と「配偶者特別控除」が大きく変更されたようなのですが、私はこのまま専業主婦で配偶者控除を受けられるのか不安です。

倉田さん

配偶者控除については、次回お話しましょう。

ワンポイント
控除を使って、サラリーマン・専業主婦(夫)も節税できる!