海洋プラごみ問題を解決!? 引っ張りだこのカネカが追加に 10月の日興ストラテジー・セレクション

ここが狙い目! 日興ストラテジー・セレクション/ 日興フロッギー編集部岡田 丈

国内外の社会の動きや投資環境をもとにホットな銘柄を毎月選定している「日興ストラテジー・セレクション」。10月号の新規採用銘柄は、多様な事業を展開する化学メーカーの「カネカ」です!  カネカの投資ポイントをチェックして、これからの銘柄選びの参考にしてはいかがでしょうか。

カガクでネガイをカナエル会社「カネカ」

コーヒーチェーンやファーストフード店などでプラスチック製ストローの使用廃止が広まってきていることをご存じの方も多いでしょう。

世界では、年間約800万トンものプラスチックごみが海に流出していると推測されており、大きく2つの問題が指摘されています。

1つは、海流や紫外線の影響などで徐々に小さな細片状となり、海の生物がこのマイクロプラスチックを体内に摂取していることです。プラスチックは体内で消化されず胃に溜まり、海洋生物が死に至る原因になると言われています。もう1つは、流出されたプラスチックごみが海中に溜まり続けることです。細片状になっても、そもそも自然分解しないプラスチックですから、このまま増えれば2050年には魚の総量を上回ると推測されています。

海洋プラごみ問題解決のキーとなる素材を開発

この問題の救世主として期待されているのが、化学メーカーの「 カネカ 」です。これまでにも頭髪用付け毛素材、スマホ向け耐熱性フィルム、医療用カテーテル、コエンザイムQ10など、様々なヒット製品を次々と生み出している同社。新事業として、海水中で生分解するプラスチック「カネカ生分解性ポリマーPHBH®」を開発しています。

カネカ生分解性ポリマーPHBH®で作られた袋やカラトリー
(出典:株式会社カネカwebサイト)

生分解性プラスチックは、微生物の働きによって最終的に水と二酸化炭素に分解されますが、種類によっては水中では分解されにくいものもあります。同社が開発した「カネカ生分解性ポリマーPHBH®」は、酸素の少ない水中でも分解されるという特徴を持っています。このため、プラスチックごみ問題解決のキーとなる素材として注目されています。

この製品は、欧州で最も認知されている認証機関であるVINÇOTTE(ベルギー)から、海水中で生分解する(物質が微生物によって分解されること)との認証「OK Biodegradable MARINE」を2017年9月に取得。実は欧州ではすでに生分解性プラスチックの採用に積極的で、同社は「脱プラスチック」が進む欧州地域において生分解性プラスチックを用いた果物・野菜袋などの用途を中心に、市場開拓を進めています。

世界的に高いニーズに応えて生産能力を増強

2019年6月に大阪で開催されたG20首脳会議では、海洋プラごみ問題が深刻な環境問題として議論されました。この席で同社の「カネカ生分解性ポリマーPHBH®」が当問題の解決策として注目され、引き合いが急増している様子です。

今年8月にはEU(欧州連合)全域において全食品接触用途で使用可能となり、すでに承認済みの米国、日本と合わせ、世界の広い範囲で事業展開する環境が整ってきています。ストロー、ナイフやフォークなどのカラトリー、食品包材、飲料ラベル、トレイなど、さらなる用途への採用拡大に期待がかかります。

国内では今年4月にセブン&アイ・ホールディングスとセブン-イレブンの「セブンカフェ」向けに、「カネカ生分解性ポリマーPHBH®」使用のストローを開発。ほかにも資生堂と化粧品用容器の共同開発を発表するなど、各企業との協業も始まり、波に乗る同社。

世界的なニーズの高まりに応え、同社は生産設備を現状の年間1000トンから12月には5000トンへと増強を計画しています。また、2025年頃には大型商業プラントの建設、2030年頃には年10万~20万トン規模へ生産力の増強を見込み、勢いに乗っています。

カネカ生分解性ポリマーPHBH®の業績貢献に期待

米中貿易摩擦の激化による世界景気の減速の中、同社も自動車産業やエレクトロニクス産業の低迷などで、2020年3月期第1四半期では売上高が前年同期比2.3%減、営業利益は同30%減となりました。

一方で、アフリカ市場において頭髪分野で過去最大の販売量となるなど、好調さも示しています。引き続き、髪装飾用合成繊維の販売量拡大が見込め、また、IoT・AI社会に欠かせない5Gスマホや折り曲げ可能なディスプレイ向けに、透明ポリイミドフィルムなどの販売数量回復を見込める見通しなどにより、2020年3月期営業利益は前期比11%増である400億円(会社予想)としています。


2019年5月に策定した新中期経営計画では、2022年3月期の営業利益目標を600億円としており、この中には「カネカ生分解性ポリマーPHBH®」による業績貢献も計画しています。地球の未来を守り、世界の環境改善に貢献する同社の活躍を応援していきたいですね。

自然に優しい素材が世界を救う

海水中で水と二酸化炭素に分解される同社の「カネカ生分解性ポリマーPHBH®」は、地球規模で問題化している海洋プラスチックごみ問題の解決に向け、世界中から注目されています。「カネカ生分解性ポリマーPHBH®」でプラスチックそのものが環境に優しい素材になれば、環境保護と生活の利便性の両方を叶えてくれるかもしれません。世界中で増え続けるニーズに応え活躍する同社から目が離せませんね。
「地球を救うテクノロジー!『海洋プラスチック汚染問題』関連に注目」を読む

本サイトは、原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。