トヨタがスズキと資本提携、その狙いは?

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は8月末に発表されたトヨタ自動車とスズキによる資本提携の背景について取り上げます。このニュースの裏事情を知れば、トヨタ自動車の世界戦略が見えてきます。

スズキとの提携でインド市場の強化を図るトヨタ

8月末、「 トヨタ自動車 」と「 スズキ 」が資本提携することを発表しました。スズキはこれまで米GMや独VWとの提携による生き残りを模索してきましたがうまくいかず、最終的にトヨタを後ろ盾としてやっていくこととなりました。一方のトヨタは、スズキが5割のシェアを誇るインド市場の強化を、スズキとともに図っていくものと見られています。

インドは2017年にドイツを抜き、世界4位の自動車市場に成長。世界トップクラスの自動車メーカーであるトヨタがインド強化を図るのは必然であり、そのパートナーとしてスズキは心強い存在です。

ところがそのインドで自動車販売が急落。8月は前年同月比31.6%減で10ヵ月連続のマイナスとなりました。トヨタとしては出鼻をくじかれた形です。

トヨタの真の狙いはアフリカ市場だった!?

「インド市場の落ち込みは誤算だったが、トヨタがスズキと組んだ狙いはアフリカ市場進出もある。インドをアフリカ向けの生産拠点にする戦略だ」(アナリスト)。

スズキはインドにグルガオン、マネサール、グジャラートと3つの生産拠点を持っています。このうちグジャラートではアフリカや中近東向けのクルマも生産しており、小型車スイフトをムンバイ港から南アフリカに出荷しています。既に第2工場が完成しており、2020年には第3工場が稼働する予定です。

「トヨタは今後グジャラートで、資本提携したスズキとの合弁工場開設に動く可能性も考えられる。インド市場が不振でも、成長を続けるアフリカに輸出すれば新工場建設のリスクも抑えられる」(前出・アナリスト)

トヨタは今年1月から、アフリカ市場の営業をグループ商社の「 豊田通商 」に全面移管し、あらためてアフリカ市場の深耕(編集部註:新たな需要を掘り起こすこと)体制を強化しました。

その豊田通商は南アフリカにある自動車販売会社への出資交渉を進めており、アフリカでMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)、CASE(Connected(つながる)、Autonomous(自律走行)、Shared(共有)、Electric(電動)の略)といった次世代モビリティ事業を展開するスタートアップ企業を募集。8月に横浜で行われたアフリカ開発会議では、アフリカ10ヵ国の政府・機関・企業と16件の事業覚書を締結しました。

また豊田通商は、スズキ工場のあるグジャラートに2013年に進出しており、スズキ向けの鋼材加工工場や倉庫・輸送サービスや完成車輸送を既に手掛けています。このようにトヨタは、スズキとの資本提携を前に、アフリカ市場を意識したさまざまな布石を着々と打っていたのです。

(出典:日本証券新聞)