PERで読み解く三菱地所

月曜日はPERをトコトン!/ 日興フロッギー編集部サトウ リョウタロウ

10月16日に年初来高値を更新した日経平均株価。約半年の停滞を経て、ようやく株式市場に活気が戻ってきたようです。「休むも相場」でしばらく売買をお休みしていた投資家の方も、そろそろこのPERの連載日興ストラテジーセレクションなどを参考に、新しい銘柄の発掘を再開してみてはいかがでしょうか。

PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。

PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
(もしくは、時価総額÷当期純利益)

他社ニュースが株価を押し上げるケース

PERを考える時、必ずチェックしておきたいのが、その企業の最新ニュース。しかし、時には同業他社のニュースをきっかけに、投資家の目線が変化し、株価が評価されるケースがあります。そこで今回は、そんな同業他社のニュースがPERや株価を押し上げる事例をご紹介します。

case38:三菱地所

今回ご紹介するのは、丸の内・大手町地区に約30棟ものビルを所有する「 三菱地所 」です。住宅事業の割合は小さく、丸の内エリアを中心とするビルからの賃料収入が大きな収益源となっています。また、最近では「プレミアム・アウトレット」「マークイズ」などの商業施設も手掛けており、そこからの賃料収入も収益の柱の1つとなっています。

都心オフィス市況の好況が追い風に

全体の約6割を占めるビル事業が好調です。主な背景は、オフィス市況の好況です。一時は、オフィスの過剰供給などが不動産業のリスクとして挙げられていましたが、それを上回る都市部へのオフィス需要の高さなどから、低い空室率と賃料の上昇が継続しています

マーケットに広がる「良質な保有不動産」への熱視線

こうしたオフィス需要の高さなどから同社が最高益を更新していることもあり、PERは業種平均よりも高くなっていると考えられます。

また最近では、個人投資家かぶ1000さんも注目していた、豊富な物件を保有するユニゾHDをめぐる買収報道に見られるように、良質な不動産を保有する企業に対するマーケットの目線が変わってきたことも、また三菱地所の評価を上げていると考えられます
割安株をみつけてじっくり待つ! 資産3億円超えの秘訣はバリュー投資の徹底~かぶ1000さん【前編】

こうした買収合戦がきっかけとなり、割安な不動産を保有する企業に対して、その価値を見直す動きが加速するものと考えられます。次の「買収」に備えて、市場では企業が保有する不動産に熱視線が注がれています。そして先回りして、不動産価値と比較して割安な状態にある銘柄を買う動きが出始めているものと想定されます。

期待高まる今後の「資本政策」

また、2019年5月に発表された「資本政策」もマーケットに評価されている模様です。
「資本政策」とは、これからの成長投資、資産の売却、株主への利益の還元、資金調達の方法などに対する企業の作戦を指します。

三菱地所が発表した「資本政策」では、不動産マーケットが好況の時には物件売却を加速し、株主還元を増やすとの基本方針が示されました。これにより、物件売却や株主還元策の強化について今後発表される機会が増えるものと考えられます。そうなればさらなるPERや株価の上昇が期待できるかもしれませんね。

<PERの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①③から三菱地所を見てきました。オフィス市場が好調なことで、ビル事業の収益が大きく貢献している同社。足元ではそれに加え、良質な不動産を保有する企業へのマーケットの期待や、同社の資本政策にも熱い視線が注がれつつあります。今後も同社からの情報発信やPERの上昇に注目が集まりそうですね。

本記事は、PERを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。