マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生のマーケットハイライト」。日経平均株価は10月10日以降大きく上昇し、年初来高値を更新しています。どうして株は上昇したの? まだ上がり続けるの? そんな疑問にカエル先生がお答えします!
10月は、米中通商交渉に進展が見られたことなどから日経平均が年初来高値を更新。足元では、短期的な過熱感を示すシグナルが点灯しており、株価の調整には注意が必要です。ただ、少し長い目で見れば、世界景気に対する悲観的な見方は後退しつつあり、株価の上昇は継続するかもしれませんね。
10月は「急落のち、高値更新」
10月31日の日経平均株価は2万2927円となり、前月末比1171円高でした。
10月1日に発表された米国景況指数(ISM製造業景況感指数)が2009年6月以来の低水準になったことなどから、株価は一時急落しました。しかし、10~11日開催の米中通商協議で、中国は米農産品の購入拡大、米国は対中関税引き上げを見送るなど進展が見られたことなどから株価は反発。また、市場予想を上回る企業決算を好感したことで、日経平均は年初来高値を更新しました。
短期的には過熱感を示すシグナル点灯
株価の上昇が続き、年初来高値を更新している日経平均ですが、マーケットの過熱感を示すシグナルが実は点灯しています。一般的な個人投資家の心理としては、上昇が続くと、手持ちの株が含み益を抱えるようになるため利食いしたくなったり、また「もう下がるのではないか?」と高値そのものに対して警戒心を持つことがあります。それにより、売りが増えていったん「調整」局面に入ることがしばしば見られます。こうした相場の過熱感を示す指標の1つが「騰落レシオ」です。中でも東証一部上場銘柄をベースに25日間の過熱感を示すレシオがよく参照されています。
通常はパーセンテージで表され、120%を超えると過熱気味、70%を下回ると売られすぎを示すサインと言われています。そんな中、10月30日時点の東証一部騰落レシオ(25日)は125%。しかも、過熱ラインの120%を30営業日連続で超えている状態です。
過去の騰落レシオと日経平均の推移をみると、騰落レシオが5日以上120%を超えたタイミングでは、日経平均がいったん下落していることがわかります。もちろん必ずしもこのセオリーが当てはまるとは言えませんが、気にかけておいてもよいかもしれません。
世界景気に対する懸念はいったん底打ち?
一方、景気そのものに対するマーケット見方としては、悲観論が後退しつつあります。もちろん米中による通商交渉次第の側面は否めませんが、足元の株価上昇や、景気の先行きを表すと言われる「米国10年債利回り」を見ると、反発の兆しがうかがえます。
米国10年債は、世界でもっとも注目されている債券の1つです。株式に比べてリスクが小さい安全資産と言われる米国国債は、「景気が悪くなる」と予想する投資家が増えれば買われ、逆に「良くなる」と予想されれば売られます。利回りは買われれば低下し、売られれば上昇するので、いまは「景気が良くなる」と思う投資家が増え始めていることが読み取れます。
10月の日経平均は年初来高値を更新しました。世界全体で見ても、景気の先行きに対して楽観的に見る投資家が少しずつ増えている可能性があります。ただ、短期的には過熱感を示すシグナルが点灯しているため、株価の下落には気をつけたいところですね。