自動運転時代に必須のOTA技術とは

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、自動運転に欠かせないOver The Air(OTA)と呼ばれる自動システム更新技術についてご紹介します。

死亡事故をきっかけに政府が要請

87歳の高齢ドライバーによる自動車の暴走で母子を死亡させた今年4月の池袋の交通事故。運転していたのが官僚OBだったこともあり、大きな話題となりました。

この事故を踏まえて政府は6月、関係閣僚会議で国内乗用車メーカー8社に対し、「後付け安全運転支援装置の装備拡大等に向けた開発計画」を策定するよう要請しました。メーカー8社は対応策を急ぎ、国や自治体も補助金支給に動き出しています。

ところが、11月中旬時点で「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」を発売したのは「 トヨタ自動車 」とダイハツにとどまり、他社はどうも積極的ではない模様です。

「車の基本は走る・曲がる・止まる。アクセルやブレーキを抑制するシステムは、ドライバーの運転を阻害するのでむしろ危険。車は、車種ごとに車体やサスペンションなどと制御のバランスをとって開発・設計しているので、後付けのシステムでは車の品質に影響を及ぼし、やはり危険。そこまでの責任をメーカーは取りにくい……」(メーカー関係者)

こうした事情もあり、完成車メーカーよりも「 オートバックスセブン 」や「 イエローハット 」「 オートウェーブ 」「 ホットマン 」「 バッファロー 」といった、カー用品店が積極的に踏み間違い抑制装置を販売しています。

自動運転に欠かせないOTA技術

自動車メーカーからすれば歯がゆい状況ですが、自動運転が実用段階に入れば、こうした踏み間違い事故の削減につながると考えられています。そのための制度づくりもメーカーと行政の間で進められています。

今年5月には、自動運転を念頭に道路運送車両法の改正が行われました。従来は「ドライバーによる運転」のみを前提としていましたが、これに「システムによる運転」も併せて想定したものに改められました。プログラム更新についても、パソコンのように購入後もネットを通じてできるように改めたとのことです。これにより、ペダル踏み間違い時加速抑制装置も車種ごとにプログラムを更新できるようになり、最新の性能で運転を制御できるようになります。

こうした技術をOTAと言います。このシステムの開発を加速するため「 デンソー 」は3月にトヨタと「 豊田通商 」と共同で、安全性の高いOTA技術を持つソフト会社である米エアビクイティに約17億円を出資しています。

高齢ドライバーをはじめとする運転に不慣れな方による運転事故は、被害者はもちろんドライバーにとっても悲劇です。この問題を解消する技術の開発は、高齢化時代には不可欠と言えるのではないでしょうか。

(出典:日本証券新聞)