PERで読み解く東急

月曜日はPERをトコトン!/ 日興フロッギー編集部きくちゆうき

初めて株式投資をするときや、買う銘柄に迷ったら、「自分がよく知っている企業」を選ぶことをフロッギー編集部はオススメします。知っている企業であれば、業績が上がりそうか下がりそうかといった情報にもいち早く気づくことができるからです。このPERシリーズなど「銘柄」カテゴリーにある記事から、自分が知っている企業をまずチェックしてみてはいかがでしょうか。

PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。

PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
(もしくは、時価総額÷当期純利益)

事業ごとのシナジーを最大化させる会社

一般的に、株式会社は成長し始めてからしばらく経つと、複数の事業を運営し様々な分野で収益を得るようになります。これを事業の「多角化」といいます。リスクを分散させるという意味では、多角化は大切です。しかし人・資金・技術が限られているケースでは、むしろ事業同士でシナジーが生まれる事業を手掛けたほうが効率的であることがあります。そこで今回は、各事業のシナジーをうまく会社全体の成長に繋げているケースをご紹介します。

case42:東急

今回ご紹介するのは、東京や神奈川などに約100キロにわたる鉄道を運営する「 東急 」です。輸送人員は民間鉄道企業としては最大で、鉄道のほかにも沿線の不動産事業などを手掛けています。

予想PERはボックス圏になりやすい

同社の予想PERは12月2日時点で22.7倍と、2010年以降の平均(21.8倍)とほぼ同水準にあります。また、過去の推移をみると、15倍~25倍のレンジをいったりきたりしており、予想PERはボックス圏の動きになる特徴があるようです。

鉄道を軸に、地域を開発へ

東急というと、東横線や田園都市線など鉄道のイメージが強いかもしれません。しかし不動産事業のほうが営業利益に占める割合が大きいという状況です。ただ、不動産事業と言ってもほかの事業とかけ離れたものではなく、東急線沿線の地域活性化などを目的とする事業をおこなっています。そのほかの「生活サービス事業」や「ホテル・リゾート事業」も東急沿線でのプロジェクトが多く、交通事業を軸に地域そのものを開発していると言っても過言ではありません

渋谷は東急がつくった街!?

不動産事業の中でも同社が特に力を入れているのが「渋谷再開発」です。渋谷の街はいまや東急なしでは語れないほど、多くの施設開発に東急が関わっています。最近では、日本最大級の屋上展望施設を持つ「渋谷スクランブルスクエア」が2019年11月1日に開業し、話題となりました。そのほかにも渋谷ヒカリエや渋谷ブリッジなど、人の流れを大きく変えるような大規模プロジェクトを数々手がけています。開発により、観光地としての価値が上昇するだけでなく、多くの雇用が生み出されます。このように開発によって、より多くの人が集まる街作りを続けています。

8期連続で増配へ

一方で、株主還元も魅力的です。同社は、2019年度まで8期連続での増配を見込んでいるほか、自社株買いも機動的に実施するなど、株主への還元を積極的におこなっています。国内景気の回復に合わせて、沿線地域に特化した開発を継続することで、収益を着実に増やしているものと見られます。こうした魅力的な株主還元策が投資家を惹きつけるため、PERの推移が安定していると考えられます。

<PERの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①②から東急を見てきました。鉄道を軸に沿線地域を盛り上げるための事業開発を続けている同社。さまざまな事業が相乗効果を生み出し、安定的な業績拡大につながっているようです。また、積極的な株主への還元姿勢もあり、PERが安定して推移しているのかもしれませんね。これからも東急の街づくりと沿線の活性化策に注目してみてはいかがでしょうか。

本記事は、PERを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。