100年前に出版されたマネー本の古典的名著「バビロンでいちばんの大金持ち(The Richest Man In Babylon)」のマンガ版です。お子さんにもオススメ。お金の基本だけでなく生きていく上でのイロハまで学べる本です。
富豪の分かれ道は結局のところ、動くか、動かないか
バビロンいちの大富豪はこう語ります。
「お金持ちとはお金を持っている人ではなく、その増やし方を知っている人だ」
「最初にすべきことは収入の10分の1を貯金すること。残りの10分の9で叶えられない欲望はあきらめなさい」
「自分がよく知らない商売に投資してはいけない」
原書はいってみればマネー本の元祖です。多くの本が影響を受けてきた名著だけに、どこかで聞いたことがあると思う読者もいるかもしれません。そんな方にもオススメできる理由は、ストーリーの力があるから。古代バビロニアの英知と今どきのマンガのスピード感とがあいまって、他にはない読後感が味わえます。
原書は複数の寓話からなりますが、マンガ版は「失職した考古学者(現代)」と「貧民街の少年バンシル(バビロニア時代)」が主人公。といっても、メインは後者の方です。
少年はバビロンいちの大富豪に見初められ、金貨を2倍にする旅に出ます。その途上、パートナーに騙され文無しになったり、成功したと思えば戦争で何もかもを失い、「もはや奴隷になってもいい」と思うまでに落ちぶれてしまったり。奴隷にまつわるエピソードを始め、古代バビロニアの生活がぐっと迫る場面も多々。浮き沈みの激しすぎる人生が大団円を迎えるまで、読む手が止まりません。
本書ではお金の基本だけでなく、人生の黄金法則として、「いかに働くか」「いかに生きるか」といった視点にまで踏み込んでいて、示唆に富みます。なかでも著者がもっとも言いたかったのは、大富豪アルカドの次の言葉ではないだろうか。
「(持つ者と持たざる者の)境界線を分かつ壁は動いた者とそうでない者」
これはマンガの構成上のキモでもあります。少年バンシルは動き、失職した現代の学者も最後には動く。
「じゃあ、君はどうするのか?」――3000年の時を超え、バビロンいちの大富豪がそう問いかけているようにも思えるのです。