押し目買いのコツは「2段構えの戦略」

チャート分析キホンのキ/ 小泉 秀希とんぼせんせい

ちょっとコツを押さえるだけで大きな武器になる株価チャート。そんなチャートのキホンを紐解く本連載の第5回は、押し目買いのコツ「2段構えの戦略」についてです。「押し目買いってどうやるの?」「想定以上に下落した場合はどうするの?」。そんな疑問を紐解きます。

業績拡大で上昇トレンドの株を狙う

前回に続き、「初心者にもできるトレードの基本戦略」を紹介します。今回は戦略②「上昇トレンドの押し目を買う」です。「押し目」というのは、上昇トレンド中の一時的な下落場面、という意味です。

これは、移動平均線に沿って上昇しているきれいな上昇トレンドの銘柄を対象に、その移動平均線近辺で買う、というとてもシンプルなものです。

ワークマンとレアジョブのチャートで見ていきましょう。

ワークマン 」は作業服の専門チェーンですが、ここ数年は低価格で機能的な衣類をプライベートブランドで展開して、これが大ヒットして業績が急拡大。株価も典型的な上昇トレンドを形成していきました。

レアジョブ 」は格安なオンライン英会話で急成長中の企業です。個人の客の他、最近は企業や学校などの法人契約が拡大しています。

両社のように業績拡大に伴う上昇トレンドの株は、何らかの移動平均線に支えられるようにきれいな上昇トレンドを描くことが多いのです。このため、まさにこの「上昇トレンドの押し目買い」戦略にうってつけなのです。

2段構えで買う

業績拡大に伴い中長期的な上昇トレンドを描く株は、13週移動平均線と26週移動平均線の2つに支えられる形になることが多いので、この2つの移動平均線を目安にしながら2段構えで少しずつ買い進めていくことをオススメします。

たとえば、「基本的には13週移動平均線をメドに押し目買いをし、さらに下落するようなら26週移動平均線で追加買いする」という戦略です。

この戦略を取った場合、レアジョブのケースでは13週移動平均線だけでしか買えません。26週移動平均線では追加買いできなかったことになります。しかし、13週移動平均線で買った分については大きな値上がりが得られたことになります。

ワークマンのケースでは、2段階の買いが実現し、その後の上昇で大きなパフォーマスが得られています。

押し目買い戦略を使えば、心理を冷静に保てる

この戦略の良いところは、買った後に株が下落しても冷静に対処できる点です。買った株がすぐに上昇してくれればうれしいですし、下落しても「さらに安く買うチャンスかもしれない」と余裕をもって構えることができます。

株式投資にとってなにより大事なことは、常に冷静に対処することです。そのためには、以下の2点が重要となります。

・きちんと根拠のある戦略を立てて、失敗を認識すること
・常に資金的・心理的に余裕を持つこと

一つ一つのトレードにきちんと根拠を持つことで、たとえそのトレードが失敗した時でも、「失敗した」ことを認識することが可能になります。そして、よりよいトレードに修正していくことも可能になります。つまり、リスク管理や投資家としての進歩のために重要なのです。

また、資金的・心理的に余裕を持つことは、常に冷静に判断できる状態につながります。投資家の失敗の多くは感情的になることから来るので、常に自分を冷静に保つことはとても大事です。

移動平均線を根拠に2段階構えで押し目買いをする戦略というのは、まさにこの条件を満たす典型的な戦略といえます。この戦略では移動平均線でトレンドを確認して買いポイントを確認しているので、そうした意味で根拠を持つ戦略といえます。また、ある程度資金的余裕を持ちながら行う戦略なので、心理的にも余裕が持つことができます。

想定以上に下落した場合の対処法

では、「13週移動平均線と26週移動平均線の2段階構えで押し目買いする戦略」を取っている時に、株価が26週移動平均線も割り込んでしまった場合には、どのように対処したらいいでしょうか。

たとえば、神戸物産のケースを見てみましょう。

神戸物産 」は業務スーパーという低価格路線のスーパーを全国展開して業績を伸ばしています。スーパーだけでなく、畜産などの第一次産業から加工業などの第二次産業などを一貫して手掛けるという独自の仕組みを作り上げて、低価格で高品質な商品提供が可能になっています。

この会社の株価も業績拡大に伴ってきれいな上昇トレンドを続けていますが、19年8月から9月にかけては一時的に大きく調整し、26週移動平均線も割り込んでしまいました。こうなると、株価がどの水準まで行って反転するかというのは、なかなか見極めが難しいところがあります。

想定以上に下落したら、半分売る

「26週移動平均線は割り込んだけれど、もっと長期の移動平均線である12ヵ月移動平均線(あるいは52週移動平均線)などでは反転するかもしれない」と考え直してそのまま放置するという考え方もあります。しかし、リスク管理上、そうした考えはあまり好ましくありません。

最初から12ヵ月移動平均線までの押し目を想定していたなら別です。しかしそうでないなら、都合よく押し目のメドを変えていては、いつまでも損切りができずに損失が無闇に拡大することにもなりかねません。想定以上の下落になってしまった場合には、たとえば、半分程度の株を売って様子見をする、というような対応策がオススメです。26週移動平均線で押し目買いした分を売ると考えれば、それほど大きな損にはならないはずです。

神戸物産の場合、その後業績の好調さが確認されて再度上昇。26週移動平均線を上回って上昇トレンドになりました。こうした動きを確認して改めて買い増ししてもいいですし、1段目の買いの分をそのまま保有してもいいでしょう。

いずれにしても、2つの移動平均線を利用した2段構えの買い戦略をとっていれば、一時的な下ブレでも冷静に対処して、上昇の動きに乗り続けることが可能です。

以上、「13週移動平均線と26週移動平均線」を利用したトレード戦略を見てきましたが、短期トレードなら「5日移動平均線と25日移動平均線」を利用して同様の戦略を立てることも可能です。さらに、より長期的な視点で売買するなら、「12ヵ月移動平均線と24か月移動平均線」で同様のトレードを行うことも可能です。皆さんのトレードスタイルに合わせて、いろいろ試してみてください。

今回ご紹介した戦略では、想定外の動きになった場合の対処法についても少し触れましたが、次回は、利食い売りも含めて、売りのタイミングをどう考えたらいいのかをお話しします。「売りタイミング」は投資家の皆さんから最も質問の多い項目です。「買い」と「売り」のキホンをぜひマスターしていきましょう!

<まとめ>
・業績が拡大している銘柄は「上昇トレンドの押し目を買う」のがキホン
・2段構えで押し目買いをすると、「きちんと根拠のある戦略を立てて、失敗を認識すること」と、「常に資金的・心理的に余裕を持つこと」ができる
・想定以上に下落したら、半分売るべし
本記事は、チャート分析を解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。