PERで読み解く高島屋

月曜日はPERをトコトン!/ 日興フロッギー編集部CHINATSU

24000円を前に一進一退を繰り返している日経平均株価。こうした方向感の出にくい相場のときこそ、しっかりと「成長性」や「割安感」を把握して、銘柄選別をしておきたいところです。本連載や、「日興ストラテジーセレクション」などを参考にして、お気に入りの銘柄を探してみてください。

PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。

PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
(もしくは、時価総額÷当期純利益)

インバウンド消費がPERに影響しているケース

百貨店業界は近年、国内消費だけでなく、訪日客によるインバウンド消費の恩恵も受けています。国内消費は2019年10月の消費増税による影響が残っていることもあり、期待しづらい状況です。2020年はオリンピックイヤーということもあり、インバウンド消費にあやかりたいところですが、足元では客足が遠のいているという報告も出てきました。今回はそうしたインバウンド客の減少がPERにも影響を与えているケースを見ていきます。

case46:高島屋

今回ご紹介するのは、日本橋、横浜、難波などに店舗を持ち、売上高9000億円を誇る老舗百貨店「 高島屋 」です。2018年9月には新・都市型ショッピングセンターとして日本橋高島屋S.C.が誕生。グループ戦略である「まちづくり戦略」で、人の流れそのものを大きく変えています。

予想PERはほぼ底値圏!?

2020年2月期の予想PER(東洋経済予想)は11.9倍と、業種平均や過去平均(2010年以降の平均:17.0倍)と比べても低い水準にあります。PERだけを見ると、ほぼ底値圏にあることから、今後は平均値に向けて回帰することを期待したいところですが、先行きはあまり明るいとは言えません。

高島屋に吹く「3つの逆風」

PERが低迷しているのは、主に3つの要因が重なっているためと考えられます。

1.米中貿易摩擦によるインバウンド客の減少
2.消費増税による国内消費の低迷
3.新型コロナウイルス流行による来店客の減少

まず1つ目としては、米中貿易摩擦などを背景としたインバウンド消費の減少があげられます。足元では少し改善の兆しがあるこの問題ですが、2019年6月以降、訪日客の消費を示す高島屋の「免税売上」は7ヵ月連続で前年比マイナスとなっています。

また、月次の売上高を見るとわかるように、2019年10月に実施された消費増税による影響が10月以降の消費を大きく下押ししています。消費者は節約志向を鮮明にしており、高額品が多い百貨店は苦戦を強いられている模様です。

新型コロナウイルスの影響も

さらに足元では、新型コロナウイルスの影響も出始めているものと考えられます。2020年1月の売上速報は、春節が昨年よりも前倒し(2019年は2月4日~10日、2020年は1月24日~30日)となったため、前年比+11.1%となりました。しかし、春節期間で比べると前年比-14.7%と大きく下ブレしたことがわかります。ようやく中国国内の企業活動も再開したようですが、まだまだ人やモノの移動は制限されており、今後の同社の免税売上を下押しするのではないでしょうか。

業績回復のカギは「金融業」と「海外事業」

そんな状況のなか、同社としても免税売上の回復をただ待っているだけではありません。2020年2月期第2四半期決算発表資料によりますと、国内については店舗政策の見直しや、投資計画の圧縮を行う一方で、高収益事業である「金融業」と「海外事業」を強化すると計画しています

金融業は営業利益54億円(2018年度実績)を100億円に(2023年度目標)、海外事業は営業利益39億円を110億円にする目標を掲げています。2018年度の全体の営業利益が267億円だったことを踏まえると、この2つの事業の今後の貢献には期待したいところです。

<PERの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①から高島屋を見てきました。米中貿易摩擦や新型コロナウイルスなどの影響で免税売上が落ち込んでいる同社。また国内では消費増税後の消費回復が遅れており、業績の不透明感がやや漂っているようです。ただし、高収益の「金融業」と「海外事業」が計画通りに成長すれば、大きく業績回復に貢献し、PERを押し上げる可能性がありそうです。今後の同社の具体的な成長戦略に注目が集まりそうですね。

本記事は、PERを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。