会計の世界史

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

会計史と聞いて「地味そう」「自分には関係ない」と思ってしまうと実にもったいない。著者の見事なページターナーぶりに圧倒される、カラフルな歴史絵巻のような本です。会計用語に「うっ!」となってしまう方にもぜひ!

偉人の逸話もたっぷり! 読む手が止まらない会計史ツアー

本書は絵画や政治、産業、音楽などを行きつ戻りつ、連想ゲームのように会計史を学ぶ本です。登場するのはダ・ヴィンチからロックフェラーやジョン・F・ケネディの父、ルイ・アームストロングやビートルズ、マイケル・ジャクソンなどお馴染みの有名人たち。

偉人と会計がいったい、どうつながるのかって?

たとえば、ダ・ヴィンチの実の父は公証人(現在の会計士と弁護士を併せたようなもの)でした。紙が高価だった時代にそれを手に入れやすい立場にあり、だからこそ、ダ・ヴィンチは大量のメモとスケッチを残せたといいます。かつ、「帳簿」や「為替手形」や「株券」も紙の普及あってのことで……というように1つのドラマが次のドラマへ、時に脱線しつつ現在へと進んでいきます。

この脱線がまた面白いのです。蒸気機関車や自動車の発明など、本書1冊にいくつの『プロジェクトX』が盛り込まれていることか! エジソンは実は訴訟王だった、など人物史としても奥が深い(「若干盛ってます」とあとがきにはありましたが)。

肝心の会計史としてはどうなのかって?

たとえば、産業革命後、鉄道株は花形の存在になりますが問題もありました。「開通した期は投資が多すぎて赤字」「投資してない期は黒字」、これだと配当金にバラつきが出ます。そこで会社側が一計を案じて、「固定資産は減価償却する」というエポックメイキングなルールが誕生するわけです

私は「減価償却」について普段の生活の中で考えたこともありませんでしたが、この流れには「待ってました! 真打ち登場!」と拍手喝采したくなったほど。

というわけで、読了後は「減価償却」をはじめ、「持ち株会社」や「ROI」などにも不思議な愛おしさが湧きました。無味乾燥なイメージだった用語がカラフルな個性を持つ。おそらく著者の目論み通りだったのではないかと思います。