カエル先生のマーケットハイライト(2020年4月編)

カエル先生の株式相場プレイバック/ 日興フロッギー編集部平松 慶

マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生のマーケットハイライト」。今回は初めて「マイナス圏」に落ち込んだ原油先物価格と、今後想定されることについて解説します。「そろそろ株価はもとに戻るの?」「どうして原油価格が下がったの?」そんな疑問にカエル先生がお答えします。

カエル先生の一言

4月の株価は一進一退の攻防。欧米の一部で新型コロナウイルスの感染拡大にピークが見られたことなどから、経済再開への期待が高まりました。一方で、下旬には原油先物価格が初のマイナス圏に落ち込み、原油生産国に財政不安などが広がりました。株式マーケットにとっては、まだ予断を許さない状況が続いているようです。

4月は感染拡大のピーク感で一進一退

4月30日の日経平均株価は2万193円となり、前月末比1277円高でした。
欧米の一部で新型コロナウイルスの感染拡大にピークが見えつつあることなどから、株価は一進一退ながらも上昇しました。また、国内では7日に緊急事態宣言が発令され、悪材料出尽くし感が広がったことが株価を下支えしました。

原油が史上初のマイナス圏に

一方、投資家心理を冷やしたのは原油価格の急落です。4月20日に国際的な指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格は初めての「マイナス圏」に落ち込みました。

先物価格がマイナスということは、コストを払ってでも原油を手放したいと思う人が増えたことを表します。自動車のガソリンが買われなくなるなど、世界中で原油の需要が減少する中、貯蔵施設も不足し、「原油を持つコスト」が意識されているようです。

カエル先生の一言

マイナスに落ち込んだのは「5月物」の原油先物価格。原油などの商品の先物価格というのは、ある決まった日に現物と決済するためのものですが、中にはETFによる投資マネーなど実需を伴わない売買も含まれています。
4月21日に「5月物」の決済日がありました。通常、投資マネーは決済日に向かって5月物を売って、6月物を買うことで残高を持ち越していきます。しかし、今回は実需の買いがほとんどなかったため、膨大な売りが重なり、大きく価格が下落してしまったのです。

原油依存国の財政リスクには注意

原油価格の下落は、原油に依存する「国」と「企業」に大きな影響を及ぼします。
国の財政のうち原油依存度が高い国々では、財政の悪化が懸念されています。すでに米国の大手格付け会社は、産油国の一部を格下げ。サウジアラビアやロシアなどは格下げを免れていますが、いずれも厳しい状況にあると考えられます。

格付けが下げられると、新たに国債を発行するときの金利が高くなります。そのため金利負担がさらに財政を圧迫する恐れもあります。原油関連の収入が減り、さらに借金のコストも増えることになれば、たちまち財政が危険な状態に陥ることも考えられるのです。

米シェール会社は経営破綻も

また、原油生産量でいまや第1位の米国では、シェール企業の資金繰り悪化や経営破綻もリスクとして意識されています。

4月1日には、米シェール開発の中堅企業ホワイティング・ペトロリアムが経営破綻を発表。原油価格は2020年に入ってからずっと下落傾向にあり、この状態がまだ続くとなれば、さらなる経営破綻も考えられそうです。

このような状況から、新型コロナウイルスの流行がピークを越えたとしても、株式市場は予断を許さない状況がまだ続きそうです。世界経済が動き出す予兆に加えて、原油価格の値動きには今後も注意しておきたいですね。