新型コロナウイルスの感染拡大の影響で業績が大きく落ち込んでいる航空業界。著名投資家ウォーレン・バフェットも「新しい世界になった」として航空株を手放しました。果たして航空株は本当にもう上がらないのでしょうか。証券社員アンケートをもとに紐解きます。
意見がまっぷたつに割れた「航空株」
アンケート結果によれば、「今後数年を見据えたとき、いまの日本の航空株は買いだと思いますか」という問いに対して、以下のように意見は大きく割れました。
買いだと思う 39%
売りだと思う 33%
どちらでもない 28%
「買いだと思う」と答えた人の理由を見ると、長期で考えればまた観光ニーズが高まると考えている人や、足元の株価は売られすぎて割安になっていることを挙げる人がいました。たしかに足元の長期的な視点やPBR(株価純資産倍率)などで考えると、今の株価は割安とも言えます。
「5年も過ぎれば日本の観光人気はこれまで以上に盛り上がると思う」(50代以上 営業店社員)
「グローバル化が進んだ今の時代、航空業界なくして成り立たないと思うから」(40代 営業店社員)
「売られすぎ。過度に悲観しすぎている」(40代 営業店社員)
PBR(株価純資産倍率)とは、企業の解散価値に対する株価の割安・割高を表すモノサシです。株価を1株あたり純資産で割ることで計算できます。一般的に、1倍を割り込むと割安とみなされます。
一方で、「売りだと思う」と答えた人の中には、オンラインでの会議などで代替できるという理由や、生活スタイルそのものの変化に着目する意見が目立ちました。
「Web会議が当たり前になっていく過程で、出張需要が減少すると思うから」(30代 本社スタッフ)
「180度世界が変化したため」(30代 営業店社員)
「グローバルで生活スタイルが変化しているから」(50代 営業店社員)
今後の第2波の大きさやワクチンの開発状況によって、大きく左右されそうな航空株を巡る事業環境。年後半にかけて再度マーケットで注目が集まるかもしれません。
日本航空
ANAホールディングス
日本空港ビルデング
JALUX
エージーピー
原油価格は上がっていく?
コロナウイルスの流行と同じように、世界の事業環境を一変させたのが急落した原油相場です。一時は原油先物価格がマイナス圏にまで落ち込みました。その原油相場についてはどう考えている人が多いのでしょうか。
原油価格は2020年末に向けて上がる下がる?
上がる 39%
横ばい 42%
下がる 18%
5月時点よりさらに下がると考えている人は少ないようです。ただ、「横ばい」と答えた人が多く、世界的な需要低下や、潤沢な供給を上回るような状況にはなりづらいと想定している人が多いようです。
「需要が少しずつ高まり始めると考えるが、原産国の余力が大きい以上、すぐに供給超過になる可能性が考えられるため」(30代 本社スタッフ)
「原油は今まで枯渇の一途をたどると教育を受けていたが実際のところは世界中の埋蔵量はとても多い。新しい世界ではSDGsなど持続可能な社会を達成するために需要が減り供給過多になっていくのでは」(30代 営業店社員)
「withコロナ」の生活がまだ見通しづらいいま、その影響を大きく受ける航空株や原油相場には、様々な見方が交錯しています。ただ、海外渡航ニーズや原油そのものの需要が無くなることは想定しづらいです。いつか来る「買い」タイミングに備えて、いまは日頃のニュースをチェックすることに注力するのも手かもしれません。焦らずじっくりと待てることが個人投資家の特権なのですから。