Think Smart

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

成功するために「何をやるか」より、失敗しないために「何をやらないか」。私たちが陥りがちな思考の過ちをさまざまなエピソードから考察する、逆説から始まる幸福論です。金融関連の話も多いので、お金まわりで失敗したくないあなたもぜひ。

自己啓発も断捨離方式で? 「否定の道」から始める成功への道

「期待」には現実を変えてしまう力があると言います。

2006年の決算発表後、Googleの株価は30%以上も下落しました。評価額は200億ドルものマイナスとなり、市場は大パニックに!

実態は売上高97%増、純利益82%増の好業績。それなのに、なぜ、株価は下落したのか? 犯人は「みんなの期待」でした。アナリストたちの「期待」が市場を動かし、目も当てられない現実を作ってしまったのです。

本書は歴史や心理学やさまざまな学術書から、あるいは日常のちょっとした出来事から、「人々の思い込み」がどれほどの失敗を呼び込むかを検証します。かつ「失敗を招きかねない思考のクセから抜け出す発想」を身につけるための本です。

52編のコラムは、そもそものところ著者が自分用に書いた「過ちを犯さないためのリスト」が始まりだけあって、身につまされるものばかり。「現状維持を選んでしまうわけ」(ほとんどの人がそう……)や、「自分より優秀な人を採用したほうがいいわけ」(本当は採用したくない……)だとか、「計画を立てると心が安定するわけ」(何かやった感になる……)など。

ユニークな点は「否定の道を行く」というスタンスでしょうか。「成功するために、あれをやれ、これをやれ。アグレッシブにもっと動け!」といった論調の自己啓発書が目立つなか、「不幸を避けるためにこれだけはやめよう!」という主張はあまり類を見ない気がします。ミニマリズムや断捨離にも通じるトーンで今の時代っぽさも兼ね備えたビジネス書と言えるでしょう。

軽快な筆致ゆえ、その気になれば流れるように読めてしまいますが、あえて思考にフックを掛けるつもりで少しずつ読み進めるのがオススメ。