PERで読み解く信越化学工業

月曜日はPERをトコトン!/ 日興フロッギー編集部スタジヲ タケウマ

PER(株価収益率)は会社の利益と株価の関係を表す投資指標の1つです。

株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば「会社の利益に対して株価が高くなっている」ことを表し、割高と判断されます。反対に低くなれば割安と判断します。

PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
(もしくは、時価総額÷当期純利益)

高収益力キープでPERに上ブレ余地?

いくら売上をあげても、そこから利益を出すことができなければ、株式市場で評価されにくい傾向があります。PERは投資家による企業への期待を表すものとよく言われますが、より正確に言えば「企業が生み出す利益」が将来どれぐらい増えそうかということに尽きます。

そこで今回は、withコロナにおいても効率的に利益を稼ぎ出しているにもかかわらず、PERが過去平均を下回っているケースについてご紹介します。

case52:信越化学工業

今回ご紹介するのは、半導体シリコンウエハーや塩化ビニル樹脂などで世界トップシェアを誇る「 信越化学工業 」です。最近ではテレワークやゲームの需要増から半導体のニーズが高まり、業績回復期待から株価がほぼコロナ前の水準を取り戻しつつあります。

予想PERに割高感はない

予想PERは足元で18.0倍となっており、2010年以降の過去平均(19.6倍)と比べても割高感はありません。むしろ今後の半導体需要の底堅さなどを考えると上昇余地があるとも考えられます。

営業利益率26%のすごさ

信越化学工業の魅力はなんといってもその「収益力」の高さにあります。2020年3月期の売上高営業利益率は26.3%となっており、業種平均の8.1%と比べてもその突出した高さがわかります(東証33業種「化学」に属する145社の直近本決算ベース)。

収益力が高いものの、7月28日に発表された2020年4−6月期の決算では、世界的な景気の落ち込みなどの影響を受け、さすがに前年同期比で減収減益となりました。それでも7.0%の減収にとどまっているほか、営業利益率は25.3%を誇っており、同社の収益力の高さとその安定感がうかがえます。

withコロナや5G普及が追い風に

withコロナ社会における同社の半導体事業は、テレワーク需要の継続やゲーム人気などを追い風に、引き続き好調をキープできるものと考えられます。また、5G(第5世代移動通信システム)の普及が進むにつれ、さまざまな機器に使われる半導体の数量も増えることが見込まれ、中長期でも成長が期待できます。

足元では世界的な景気減速がトップライン(売上高)を押し下げる可能性があります。しかし、景気回復に伴って来期以降の最高益更新などが再び見えてくれば、PERの上昇と利益の押し上げで株価も上昇基調に回帰するものとみられます。

さらなる「高収益企業」の躍進に注目が集まるかもしれませんね。

<PERの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①から信越化学工業を見てきました。コロナ禍においても高い営業利益率をキープしている同社。テレワーク需要やゲーム人気に加えて、今後は5Gの普及が同社の半導体事業の追い風になりそうです。来期以降の最高益更新にも期待が高まるのではないでしょうか。

本記事は、PERを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。