テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、EC(電子商取引)市場で広まりつつある、「DtoC」というビジネスモデルについてご紹介します。
ITを最大限活用した新しいビジネスモデルの広がり
DtoCとは、自社で企画・製造した商品を自社ECサイトで直接消費者に販売する仕組みのこと。従来の「BtoC」とは異なり、“小売店や卸売などの仲介業者を挟まない”“ブランディングも自社で行う”ことが特徴で、いわゆる「メーカー直販モデル」を指します。企業と消費者の双方向のコミュニケーションを通じて商品・サービスが常にブラッシュアップされるため、ブランドのロイヤリティ育成やLTV(顧客生涯価値)の形成といった効果が期待できます。
DtoCビジネスには、ITを最大限活用した効率的なマーケティングや顧客管理が必須です。特に、消費者との接点となるSNS(交流サイト)やインターネット上でのブランドメッセージの発信が重要となります。国内の成功事例として、「 オイシックス・ラ・大地 」などが挙げられます。
DtoCビジネスは2025年に3兆円へ
ネット広告コンサルティング企業である『売れるネット広告社』が行った市場動向調査によれば、ネットメディアやSNSを利用する「デジタルDtoC」の2020年の国内市場は2兆2200億円(前年比9%増)に達する見通しです。2025年には3兆円に達する予測で、さらに、今回のコロナ禍における消費者の購買行動の変化が市場の成長をさらに加速させるとみられます。
直近では、9月7日にディー・エル・イーが米国のDtoC企業への出資を発表し、話題となりました。また、靴とファッションのECサイトを運営する「 ロコンド 」も今2月期からDtoCビジネスを本格始動しており、業績を大きく伸ばす可能性があります。
DtoC周辺ビジネスに注目
DtoCブランドが次々と立ち上がる中、この先はDtoC環境の構築を支援する企業への注目度が高まりそうです。コロナ禍におけるネットショップ開設ラッシュの恩恵を満喫する「 BASE 」や、ECサイトの成長に必要な機能を完備したプラットフォームを提供する「 コマースOneホールディングス 」、企業向けECシステム構築の「 ソフトクリエイトホールディングス 」、「 インターファクトリー 」などが注目されます。
「 サイバーエージェント 」では、このほど子会社が「DtoCブランド戦略室」を設立。プロモーション領域にとどまらない、DtoCブランドのマーケティング支援を行うとのこと。また、「 大日本印刷 」は、サービス設計や商品開発からECサイトの構築・運用、商品配送等の物流、プロモーションなど、DtoCに必要な機能を一貫して提供する「D2C支援サービス」を8月から開始しました。同時期に、「 クロス・マーケティンググループ 」もDtoCブランドのトータル支援サービスの提供を開始しました。
新たなトレンドになりつつあるDtoC周辺ビジネスにはこれからも注目が集まりそうですね。
(出典:日本証券新聞)