番外編 童話で読み解く、いまさら聞けない「つみたてNISA」

実録!! あいつも投資していた ごく普通の男が語る投資のハナシ/ 小野ほりでい

つみたてNISA……。最近よく耳にはするものの、普通の投資と一体何が違うのか分からない。そう感じている人は実は多いのでは? そこで今回は連載の番外編として、つみたてNISAとは「どんな人のための、どんな投資なのか」を“いまさら聞けないつみたてNISA”と題して解説! 「老後の備えをしなきゃ……でも難しい! 考えたくない!」と思っているそこのあなたに必見な、目からウロコな情報を分かりやすく紹介します。

<登場人物>


エリコちゃん
収入はとりあえず全部貯金に突っ込んでいるOL。


ミカ先輩
よくわからない横文字の制度を利用して老後に備えている会社の先輩。


投資以外全部博士
「投資は分からん」「投資だけはさっぱりじゃ」が口癖の、投資以外のことならなんでも知っている博士。

それはある定例オタク女子会の出来事だった……


つみたてNISAがさ~……。


あたしはiDeCoでさ……。


ごめん、さっきから何の話してるの?


つみたてNISAとかiDeCoっていうのはかくかくしかじかでアレをアレをできるなんたらかんたらで……。


そうそう、うんたらかんたらだからやったほうがいいんだよね……。
エリコちゃんはやってないの?


あーっとね、うんとね……。
帰るね!

ずっとゲームしてアニメ見てるだけだと思ってた友達が
なんか大人みたいな話してる……!


っていうことがあったんですけど、NISAってやらないとダメなんですか?


適当に生きてそうな人が自分よりしっかりしてたら焦るよね……。


大人になりたくなくてゲームとかアニメの話してるのに「老後」の話とかされるとテンション下がりません?


そうだけど、いつまでも趣味に没頭できるのもちゃんとした生活基盤があっての話だよね。


あいつらと同じようなことを言ってる……。


そうね、エリコちゃん……
「3匹のこぶた」っていう童話を知ってる?


いや、知ってますけど。

3匹のこぶた  ~誰でも分かる! 老後の備え編~


なんか始まった。


全然めでたくないし……
これを通して何が言いたいんですか?


エリコちゃん、分からない……?
なぜ兄ブタとまん中ブタは将来に備えなかったか……。


なんでだろう……
未来のことは具体的に想像できないから?


それはね、老後に備えなくても大丈夫だと思いたかったから……
つまり、「こうあってほしい」という願望で現実を歪めてしまったからなの。


な、なんだって―――!!!

リスクはなぜ無視される?


エリコちゃんにはこういう経験がない?


何か済ませなければならないタスクがあって、その期限が迫ってる……なのに自分は何もしない、ただダラダラ遊んでいる。


実際にはどんどんピンチになってるのに、ダラダラ遊んでる方がなぜか安心してくる……。


ある……
というか、人生の8割くらいがそうなってますね。


でも実際は「ゲームをするのはさすがにまずいかな」と思ってYouTubeで実況動画を見て我慢することにして、結局8時間無駄にしたりみたいなパターンが多いですね。


そこまで具体的に知りたくはないよ。


ともかく、人間はピンチに陥って精神的に追い込まれたとき、ピンチを抜けるより「自分は大丈夫だ」と自己暗示をかけるほうに走ってしまうことがあるのだ。


あるのだ。

たとえば……

・やることが溜まっているのに別のことを始めてしまう
・金欠でピンチに陥ってるのに逆に浪費をしてしまう
・友人から借りたなけなしのお金でギャンブルをしてゼロにしてしまい、みんなの期待を裏切り、人間関係さえも失ってしまう


最後だけ具体的すぎて怖い。


締切を過ぎてるのにゲームをしたり、お金がないのに浪費したりするとき、「締切が過ぎてたらこんなことはできないはず」「お金がないならこんな浪費はできないはず」と自己暗示をかけて安心しようとする……。


この結果、「現実はますますピンチの深みにはまっているのに自分はむしろ興奮したり安心を感じてしまう」という乖離が起こるの。


安心するために備えるんじゃなくて、安心できた時点にワープしちゃう感じですね。


ちなみに、ギャンブルで大損した人がギャンブルで取り戻そうとするのも「ギャンブルで取り戻せたら嬉しいから」という現実逃避ね。


なんでそんなに詳しいの?

なんでつみたてNISAなの?


つまり、私が「NISAが……」とか「iDeCoが……」って話をしてる友達を無性に殴りたくなるのは、自分が老後に備えないといけないという焦りを喚起して負担になるからなんですね。


殴りたくなるんだ。


確かに、友達が「ゲームが」とか「アニメが」みたいな話しかしていないという安心感を求めていた気がする……。


「老後の話」をすると現実に引き戻されるからいたたまれなくなったんだね。


でも実際、「何かしなければならない」というのは分かるんですけど、何したらいいか分からないじゃないですか。


何も考えたくないからお金がほしいのに、考えないとお金が足りなくなるって矛盾してませんか??????


実はね、エリコちゃん……そういう、考えたくない人のために代わりに考えられた制度がつみたてNISAなの。

つ、つつつつみたてNISA!????


これまで言ったように、ピンチになった人は思考停止して「お金がないから宝くじを買う」みたいに逆にリスキーな手段に出てしまうことがあるの。


しんどいと考える余裕がなくなりますもんね。


それは投資でも変わらなくて、「お金が欲しいから」とちゃんと検討せずにリスキーな投資に手を出したりしてしまう。


あるあるなんですね。


でも、国としてはそういう投資をして破滅されてもらっても困る……
若い人、お金のない人がリスクの低い長期投資をできるように設計されたのがつみたてNISAなのよ!


ふーん……
国がね……。


それじゃあ、つみたてNISAを選ぶ具体的な理由について識者の話を伺ってみましょう!


投資のことなど全く分からん!


なんか不穏なのが来たけど。


まず、若者が投資を始めにくい理由としてはお金がない、時間がない、知識がないことなどが挙げられますね?


知らん!


なんだこいつ。


「資産運用をして老後に備えろ」と言われてもお金がない、お金がないから運用できない、老後に備えられない……。


うんうん。


でもそれでは投資するのは知識や資産のある人だけになるから、お金がない、知識や時間もかけられない若者に向けて考えられたのがつみたてNISAなの。


分からん!


このように、投資は長期間かければかけるほど元本割れのリスクが減って利益率が上がるというデータがあるので……。


おおむね20年の積み立てで利益が確保できる、という目算に合わせて、20年間の非課税枠が設けられてるのがつみたてNISAの特徴だね。


つまり、知識や資金がなくても時間をかけることはできる若者に対して有利な仕組みってことなんですね!


わしには若者のことは分からん!

カエル先生の一言

株や投資信託で利益が出ると、20.315%税金が引かれます。つまり、100万円利益が出てもそのうち約20万円が税金で取られてしまうのです。しかし、つみたてNISAで買った場合は、その後20年間は利益が出ても課税されません。ただ「非課税だから」という理由でも、20年持っていればおのずと立派な長期保有となり、利益が出る確率は上がります。


それから、若者は「どの銘柄を選んでいいか分からない」とか「チャートに張り付いていられない」という時間の制限もあるわね。


若いと、したいことが沢山あるからね……!


でもつみたてNISAは張り付く必要ないの。「株価の変動に関係なく設定した金額で自動で積み立て続ける」、それだけでいい。


変動に関係なく買い続けたら損するんじゃないですか?


ところがそうじゃなくて、たとえばある株を月に1万円買い続けるとき、株価が100円なら100株、1万円なら1株を買うことになるわね。


あー、確かに。


そうすると、チャートに張り付いてなくても「安かったら多めに買う、高かったら少なめに買う」という形が自然にできる。


この手法は「ドルコスト平均法」って言われていて、長い時間をかけて堅実な利益を狙うから「投資の王道」と呼ばれてるの。


なんだかよくわからないけど、分かった。


あとね、1万本超ある投資信託の中から国が「これは長期・分散投資に適している」というものを183本(※)まで厳選したのが、つみたてNISAの投資信託なんだよ。

※ETF(上場投資信託)を含みます(2020年9月15日現在)


1万から激減してない?


分散投資されていて、運用も安定していて、手数料が低いもの……と絞り込んだ結果めちゃくちゃ激減したんだね。


初心者は手数料や信託報酬(※)が高い投資信託を知らないうちに買ってしまうことが多いけど、ここから選べばそのリスクも防げるってわけ。

※信託報酬……投資信託を保有している間ずっとかかる費用


そんなこと初めて聞いた!


この人帰ってもらえません?

カエル先生の一言

金融庁「つみたてNISAについて」によると、投信保有者(※)に、投資信託を100万円購入した際に負担する信託報酬の額を一般にはいくらか尋ねたところ、平均は年1万4000円であるのに対し、「5000円以下」との回答が6割弱でした。自分が持っている投資信託の信託報酬の額を正確に把握できている人は少ないのかもしれません。
(※)「保有している投資信託の信託報酬をおよそいくらか知っているか」とたずね、『おおまかに知っている』と答えた投信保有者


まとめると、つみたてNISAは若者や初心者が投資に触れにくい現状に対して……。


・お金がない→月に1~2万程度の金額でいいよ!
(むしろ年40万円までの限界がある)
・いつ買えばいいか分からない→積み立てるだけでいいよ!(むしろそれがよい)
・何を買えばいいか分からない→金融庁が厳選した183本の投資信託だよ!
・投資にかける時間がない→積み立てるだけでいいよ!
・損したくない→20年積み立てれば基本プラスに持っていけるよ!
・儲かって税金を取られたくない→非課税保有期間が20年あるよ!


こんなふうに、極力少ないリスクで投資がメリットを得られるように最大限に配慮した仕組みなんだね。


なるほど……本当に「考えたくない人のために代わりに考えてもらった制度」って感じなんですね。


社会を操ってる大人なんて、大なり小なり若者を食い物にしようとしてるろくでなしだけだと思ってたけど、少し信用してみようかな……?


反抗期?

そして3ヵ月後……


そしたら富立(とみたて)兄さんがさ~……。


何それすご~い!
あの人ってばすごいいいデコしてるわよね~!


「富立(とみたて)兄さん」と「いいデコ」の話だった……。


知らん!

カエル先生の一言

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