ブレスケアは「最終兵器」。 裏切りたくないから、現場は体を張っています【前編】

なぜ売れ続ける? 担当社員が語る、あの企業の定番商品/ 日興フロッギー編集部

「お腹の中から息リフレッシュ!」の宣伝でおなじみの、ブレスケア。飲み会の後などに残る、キツイお口のニオイを何とかしたいときの強い味方です。岡田麻美さんは、ブレスケアのブランドマネージャーになって5年目。顧客から「最終兵器」と評されるブランドの重みを実感しつつ、さらに新しいニーズを開拓しようと奮闘しています。

後発として、知恵を絞った

――「ブレスケア」は、口臭ケアの分野でシェア7.5割と圧倒的です。競争を勝ち抜く秘訣はなんですか。

いちばんの秘訣は、やっぱり「お腹の中から息リフレッシュ!」というコンセプトの強さですね。

ニンニクやアルコールを飲み食いした後、ガムやうがいで口の中をきれいにしても、ウワーッとニオイがこみ上げてくる経験、ありますよね。その対処法として、ブレスケアが「お腹の中から」というコンセプトを用いたことが、高いシェアを誇る要因だと思います。

ブレスケアを手に、リモート取材に答える岡田さん

――口臭ケアというと、どうしても口の中に注目します。それを違う切り口で捉えたのが良かった。

実はブレスケアって、口臭ケアでは後発品なんです。1997年に発売された当時、すでにお口のニオイケアのためのガムやマウスウォッシュ、清涼菓子がありました。その中で同じことをしても、トップになるのは難しい。

当社はもともと、トイレの芳香消臭剤など独自商品でニッチ市場を生み出し、シェアを取ってきました。お口のニオイケアの分野はすでに市場が確立していましたが、そこでもあえて新しい切り口を打ち出そうと、当時の担当者が試行錯誤したと聞いています。

発売後、「お腹の中から」というコンセプトは見事に受けて、初年度に10億円を売り上げるヒット商品になりました。その後、似たコンセプトの後発品が出ましたが、今も生き残っているのはブレスケアだけ。20年経って、今では年間40億円を超える売上のブランドに成長しています。

――類似品は淘汰され、ブレスケアだけが残った。先行者利益があったということですか。

そうですね。新しいコンセプトを最初に打ち出したのが、大きかったと思います。そのとき私は担当ではなかったので、類似品を実際に試したことはないのですが……。

一度使ってくれた方のリピート率が高いことも、お客様が他の商品に流れなかった要因だと思います。ブレスケアって、飲み込むとお腹からミントの香りがぐーっと上がってくる。この体験で効果を実感して、リピートしてくださる方が多いんです。

かっちりしたケースに半透明のカプセルが入っているという、見た目の薬っぽさも、「ブレスケアは効く」というイメージに一役買っている気がします。

薬っぽいパッケージと効果実感が、信頼感を生んでいるという

体を張って、効果を試す

SNSの反応を見ていると、ブレスケアがいかにみなさんから信頼されているかを感じます。大量のニンニクを食べてブレスケア飲んで効かなかったとき、普通は「ブレスケア効かないじゃん!」ってなりますよね。でもそうじゃなくて、「ブレスケアが効かないほど、ニンニク料理食べてしまった自分がやばい」と書き込まれる方が、結構いらっしゃるんです。

ブレスケアは、お口のニオイケアの「最終兵器」。そんなふうに思って、使ってくださる方が多い。感想を見るたびに、感謝でいっぱいになります。

――その分、責任も重いですね。開発現場は、どうやってその期待に応えているんですか。

パッケージに書いてある効果がきちんと実感できるかどうか、研究担当のメンバーが自ら試しています。新しいブレスケアを出すときは必ず、ニオイの強いものを飲食し、ブレスケアを食べて、呼気テストを行うんです。

効果を測るのは、うちの社員の「臭気判定士」。この資格はニオイを測定する国家試験で、取るのが結構大変なんですよ。

「呼気を測るテストは、なかなか過酷です!」

口臭がもっともキツくなるのは、すりおろしてから湯煎したニンニクを食べたとき。あとはアルコールですね。ニンニクを食べてから、焼酎をストレート・おつまみなしで飲んで、息を吐く……。こういうテストを繰り返し行います。担当者からは、かなりつらいと言われますね。

――みなさん、体を張ってますね……!

ほんと、体張ってます。主に男子に協力してもらっていて、母数が必要なので10人以上はお願いしたんじゃないかな。どんなに大変でも、ここは大事なポイントなので外部にお任せはできません。

最強タッグで、コロナ禍に健闘

――この夏、ブレスケアとすき家さんのコラボレーションが話題になりました。

そうなんです! すき家さんは毎年、夏限定で「ニンニクの芽牛丼」という人気メニューを出されています。今年はさらにその上にニンニクを乗せた、「トリプルニンニクMIX」というメニューを開発されたのですが、ニンニクのパンチ力がとってもすごい。

そこで、「ブレスケア」があればお客様が安心して召しあがれるのではないかと、当社にラブコールを送ってくださいました。トリプルニンニクMIXを注文したお客様全員に、ブレスケアをお渡しするという内容です。

強烈なニンニクとブレスケアのコラボが実現!

これは、とってもありがたいお話でした。実はこの春から新型コロナの影響で飲み会が減ったり、またマスクを着用するので他者への口臭が気にならないということなどから、ブレスケアの売上が大きく落ち込んだんです。年間40億超のブランドですから、ブランドマネージャーとして、会社に対して申し訳ない気持ちでいっぱいで……。

そんなとき、すき家さんにお声がけいただいて。もう、飛び上がるくらいうれしかった。しかも、反響がとても大きかったんです。8月5日に発売が開始され、初日からよく売れました。あまりの盛況ぶりに、ブレスケアが途中で足りなくなったくらいです。

ツイッターなどでも「もらえなかった」「ブレスケアのために行ったのに残念」というお声があり、楽しみにしてくださったことがうれしい反面、大変申し訳ない気持ちになりました。ぜひ来年に向けて、すき家さんとはまた前向きにお話したいなと思っています。

――その頃にはコロナが収束しているといいですね。

ええ。1日も早く事態が落ち着いて、みんなが楽しく飲み食いできる世の中が戻ってきてほしいです。そのときまで、ブレスケアの存在が忘れられないよう、手を尽くしていきたいですね。

小林製薬