PERで読み解くエバラ食品工業

月曜日はPERをトコトン!/ 日興フロッギー編集部クリッペ

PER(株価収益率)は会社の利益と株価の関係を表す投資指標の1つです。

株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば「会社の利益に対して株価が高くなっている」ことを表し、割高と判断されます。反対に低くなれば割安と判断します。

PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
(もしくは、時価総額÷当期純利益)

コロナ禍の業績を見通すカギとは

食品業界では、巣ごもり需要の追い風を受けている企業は好調、外食産業だけを手掛けている企業は苦戦、という構図が続いています。一方で、家庭用と業務用の両方を手掛けている食品会社では、業績がまだら模様となっている企業もあります。そこで今回は家庭用と業務用の両方を手掛けている企業の今後を見通すカギについて、探っていきたいと思います。

case55:エバラ食品工業

今回ご紹介するのは、焼肉のたれなど家庭用調味料でおなじみの 「 エバラ食品工業 」です。同社は、焼肉のたれ、すき焼のたれ、浅漬けの素で国内トップシェアを握っています。最近では、一人暮らしの夕飯などに便利な「プチッと」調味料のシリーズを展開し、マーケットの拡大を図っています。

ニッチトップシェアや株主優待が下支えか

予想PER(東洋経済予想)は15.4倍と業種平均の21.9倍を下回っています。また、過去の平均(2010年以降平均:19.4倍)と比べてみても、足元ではやや落ち込んでいる様子がうかがえます。

ただ、過去にも15倍近辺に落ち込むことは度々あり、15倍~25倍近辺でボックス圏となりやすい傾向がありました。新興企業のように大きく売上が伸びる可能性が低い一方で、同社のニッチな分野での高いシェアや株主優待の充実などがPERや株価を下支えしているものと見られます

巣ごもり需要の追い風あるも、業務用ニーズは低下

2020年4−9月期の決算では、巣ごもり需要などから「焼肉のたれ 黄金の味」など家庭用商品が好調でした。一方で、外食産業のニーズの低下から、業務用のスープを含む業務用商品の売上は前年同期比で3割減となっています。

海外売上高20億円へ

コロナ禍においては、しばらく業務用は厳しい状況が続くと考えられるものの、中期経営計画を見ると海外事業などにおいてまだ伸びしろがあることがうかがえます。2023年度を最終年度とする中期経営計画によれば、営業利益やROEに加えて、海外売上高を20億円にすることが掲げられています。

2018年度時点では海外売上高は11.6億円でした。まだまだ海外への進出は途上であると見られることから、今後は海外売上の伸びに注目していきたいですね。

<PERの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①②からエバラ食品工業を見てきました。コロナ禍においては巣ごもり需要の恩恵を受けるも、業務用調味料で厳しい状況となっている同社。今後については、株主優待などに加え、中期経営計画で掲げた海外売上高の伸び具合によって、PERが左右されそうです。

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本記事は、PERを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。