ポストコロナの経済学

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

ポストコロナ時代の日本と世界はどう変わるか? 「感染症と共存できる社会を作る」の観点からベテランエコノミストが考察。日本の財政や金融、注目産業などにも触れられているので個人投資家にもオススメです!

ポストコロナで歴史上初の「地方分散型ネットワーク」に移行する?

「コロナの経済学」とひとくくりで言っても、本書の守備範囲は相当に広いです。

政府の対応に対する提言はもちろんのこと、米中対立や新興国の産業構造、日本人の弱み強み、歴史的観点から見た政治や財政問題を、時に映画や書物などの雑学を交えて展開します。緊急提言ということもあり「とにかく全てつめこんだ」感は否めないのですが、それが本書の長所でもあります。読む人によって刺さるポイントの異なる本だと思います。

絶望的なデータの羅列には覚悟しましょう。

「失業率1%増で自殺者1800人増」のくだりは胸が苦しくなってきますし、日本の財政余力はイタリアの次に低い「先進国32ヵ国中31位!」というのもショッキングです。

一方、「ピンチはチャンス」もまたしかりで、ダイナミックな変化を感じる話も少なくありません。

何年も言われ続けている割に進み具合の判然としない「地方創生」の例であったり。

現在の「都市部への一極集中」は数千年以上の歴史を背負っているわけで、簡単に変わるはずもない。それが「テレワークの本格化」と「三密を避ける」流れから歴史上初の「地方への分散型ネットワーク」へ大転換すると著者は言います。

これが空き家問題や地方の人材不足解消の糸口となる。豊かな自然に囲まれつつの「ワーク・ライフ・バランス」が進むきっかけにもなれば、ポストコロナも悪いことばかりではありません。地方が活性化する一方、人口密度と感染リスクの高い都心の地価は下落するとありますが、実際にオフィス賃料は下がってきましたしね。

コロナ後の注目産業も示唆に富みます。テクノロジーや医療はもちろんのこと、「三密」を避ける観点から空調周りやオフィス空間をリノベーションする産業、VRを活用した旅行業には期待大だとか。シェアリングエコノミーは曲がり角を迎え、このブームに翻弄されていた自動車産業には追い風になるのでは? との予測は興味深いです。というわけで、投資の参考にもなる1冊です。