資産形成のための金融商品にはいろいろありますが、マンションやオフィスビルなどの不動産に投資するのが「REIT(リート)」です。REITには、株式の個別銘柄や投資信託とはひと味違った特徴があります。REITについて知り、REITを活用することで、資産形成の可能性はさらに広がります。
日本のREITは株式と同じ方法で買える
ところで、あなたが今お住まいの住宅は一軒家でしょうか? それともアパートやマンションなどの集合住宅でしょうか? 集合住宅であるならば、分譲でしょうか? それとも賃貸でしょうか?
「マイホームは一生で最大の買い物」であるとよく言われます。でも、一軒家を手に入れるには土地を買って家を建てるのに何千万円ものお金がかかるため、誰もが簡単に買えるものではありません。また、分譲マンションは土地にかかる費用はありませんが、それでも数千万円の買い物です。一方で、賃貸住宅はまとまったお金がなくても、月に数万円から数十万円払えば住むことができます。
ここで、賃貸マンションの大家さんの立場になって考えてみましょう。マンションを建てると、入居者が支払う家賃が定期的に入ってくるようになります。そして、やがて家賃収入の総額がマンションの購入費を超えれば、そこから先は利益がどんどん増えていくことになります。また、マンションを建てた地域の地価が値上がりすれば、マンションを売却することにより、大きな利益を得られるかもしれません。
この大家さんと同じように、不動産の家賃収入や売却による利益を誰でも得られる仕組みを持つ金融商品が「REIT」です。日本語では、「不動産投資信託」と言います。
誰もが簡単に「大家さん」になれる仕組み
REITの仕組みを詳しく見てみましょう。
REITをひと言で説明すると、「複数の不動産をひとまとめにして、それを小分けにしたものを投資家に販売して、その収益を投資家に分配する」という仕組みの金融商品です。投資信託と個別株の関係と同じです。
ちなみに日本国内で作られ、販売されているREITのことを「J-REIT」といいます。J-REITは2001年に誕生した、比較的新しい金融商品です。
J-REITの買い方はとても簡単。あなたが株式の売買をしている証券会社の同じ口座で、株式と同じ方法で買うことができます。コンビニでパンだけでなくケーキも買うことができるのと同じように、同じレジで支払いができるというイメージです。もちろん、SMBC日興証券の「キンカブ」で買うこともできます。
日本のJ-REITの仕組みを図で表すと、以下のようになります。
投資家のお金はREITに集められ(REITは「不動産投資法人」と呼ばれる法人のもとで、不動産運用のプロが運営します)、そのお金でREITは不動産を購入し、運用します。不動産の運用で得られた賃料や売却したときの収益を、投資家に還元するという仕組みです。
一般に、REITが運営する不動産は賃貸マンションのほか、オフィスビル、商業施設、ホテル、物流施設などがあります。マンションのみに投資するREIT、オフィスビルのみのREITもあれば、複数の種類の不動産を保有するREITもあります。日本のJ-REITの場合、1つのREITで数十件の物件を保有しているのが一般的です。
REITを買えば、これらの不動産を間接的に所有することになります。ひとりで一棟のマンションを保有するのは難しいですが、REITを使えば、誰もが簡単に「大家さん」になれるのです。
分配金利回りは東証1部の株式を上回る
REITで得られる収益は、不動産の賃料収入と売却益がもとになっています。その収益は「分配金」として支払われます。J-REITの場合はだいたい年2回支払われることが多いです。株式の配当と異なるのは、株式には無配の銘柄があったり、また業績によって配当が出なくなることがあるのに対し、REITは原則として分配金が定期的に支払われ、無配になることは少ない点です。
株式の配当とJ-REITの分配金の利回りを比較してみましょう。利回りとは、配当や分配金が、保有している株式やREITの価格に対してどれくらいの比率かを示した数値です。
2010年以降のすべての年で、J-REITの分配金利回りが株式の配当利回りを上回っていることがわかります。2019年末時点では、J-REITの平均予想分配金利回りは3.6%で、東証1部の平均配当利回り(配当がある銘柄のみ)が1.9%。この分配金利回りの高さこそが、REITの大きな魅力です。
なぜ、J-REITの分配金利回りは株式より高くなりやすいのでしょうか。その理由はJ-REITの仕組みにあります。J-REITを運用する不動産投資法人は、不動産の運用で得られた利益のうち90%以上を投資家に分配すれば、法人税が実質的に免除されるというルールがあります。この仕組みがあるために、J-REITは利益のほとんどを投資家に還元するのです。
値動きへの対策は「長く持つ」「投資信託で買う」
REITも、株式と同じように価格が変動します。したがって、REITに投資する際は、分配金だけでなく値動きにも気を配る必要があります。
J-REIT全体の値動きの傾向を示す指標に「東証REIT指数」があります。この東証REIT指数と、日経平均株価の値動きを比較してみましょう。
2010年以降は、値動きの大きさも方向も、日経平均株価と似た動きになっています。J-REITは、株式と同じくらいの値動きがあると考える方がいいでしょう。
細かく見ていくと、2016年や2017~2018年の一時期は、J-REITが株式と反対の値動きを示すこともありました。また、2020年3月のコロナショックのときには、東証REIT指数の値下がり幅が日経平均株価より大きくなりました。
これは、J-REITの市場規模が東証1部市場の40分の1以下(2020年10月現在)と相対的に小さいために起こるものです。新型コロナウイルスの影響で世界中の投資家が日本株とJ-REITをいっせいに売った際には、REITの方が株式より価格が下がりやすくなりました。このように、世の中で大きな事件が起きたときに、短期的には株式より大きな値上がりや値下がりを示しやすいのも、J-REITの特徴といえます。
ただし長期的に見れば、日本経済が成長すれば、日本企業と同じように日本の不動産市場も成長していくと考えられるので、J-REITを長く持つならば、一時的な値下がりの影響は受けずにすむことを期待できます。
また、株式と同じように、REITにも複数のREITをひとまとめにした投資信託があります。一般に、投資する銘柄数が増えるほど、分散効果によって全体の値動きは小さくなりやすいです。このため、より堅実な資産形成を望むのであれば、投資信託を通じてREITに投資するのも手です。
分配金利回りが比較的高く、経済成長の恩恵も期待できるJ-REIT。株式と並ぶ有力な投資先として検討してみてはいかがでしょうか。
次回は、REITが投資する不動産の中身について詳しく見ていきます。
・REITは「複数の不動産をひとまとめにして、それを小分けにしたものを販売し、その収益を分配する」という仕組み。株式と同じ手続きで個別銘柄を買う方法と、投資信託を通じて買う方法がある
・日本のJ-REITの分配金利回りは、東証1部市場の配当利回りより高い傾向がある。これは、J-REITは利益の90%以上を投資家に分配すれば、法人税が免除される仕組みのため
・東証REIT指数の値動きの大きさは、日経平均株価と同程度と想定される。世の中で大きな事件が起きたときは、一時的に株式より大きな値動きを示すこともある
REITの仕組みがわかったら、具体的にチェックして、自分の資産形成の選択肢になりそうな商品を探してみましょう。