億り人が2021年に向けて仕込む銘柄は?前編

億り人緊急座談会/ 愛鷹www9945余弦日興フロッギー編集部

コロナ禍という未曾有の事態に襲われた2020年の株式市場。日経平均は一時、1万6000円台まで下落しました。ところが足元では2万7000円をうかがうまでに回復。1年を通して見ると上昇した1年になりました。株と付き合って10年以上のベテラン投資家3人は乱高下した1年をどうくぐり抜け、2021年にどんな光を見出しているのでしょうか?

テンバガー17社を保有! アラフォー・兼業投資家が初登場


皆さん、今日はお時間をいただき、ありがとうございます! 愛鷹さん、はじめましてですが、よろしくお願いします。早速ですが、2020年はどんな1年でしたか?


こないだやっと年間の成績がプラ転しました。1月に資産が過去最高となったのですが、そこから3月大底までに「9ケタ」も減ってしまって……。


9ケタって……億ですか?!


はい……。


愛鷹さんはお仕事しながら投資しているんですよね。私だったら、仕事なんてとても手につきません!


朝、仕事を始める前に膨らんだポジションを整理するために一旦売ってもいいと思えた銘柄は売りの注文を出したりしていました。株を始めて13年、こんなにワタワタしたのはリーマン・ショックの荒れ相場以降久しぶりですね。


基本、損切りしない方針だとうかがっていましたが…?


はい、基本はしませんが、昨年から少しだけ信用取引もさわっていたので、含み損がふくらんだ銘柄は売らないとどうしようもなく、泣く泣く処分しました。信用取引怖い。


年後半はいかがでしたか?


年初から通算テンバガー(10倍株)が計17社も生まれました。「 アイ・アールジャパンHD 」「 丸和運輸機関 」「 エムスリー 」や「 ダイキン工業 」などです。11月末には1月時点の資産を回復し、再び過去最高の評価額に達しました。


17社も……! 資産は今、おいくらですか?


もともと「30代で1億円、40代で2億円」が目標でしたが、30代で2億円をクリアしました。ひとまず年内に高値奪還できてよかったです。


すごい……!


でも資産総額よりも不労所得を主眼に置いてます。「年間配当1000万円」を目指していますが、まだ400万円台。成長株投資しながら1000万円以上にしたいです。

www9945さんの今年イチオシの銘柄は1年で2倍に!


私は油断していましたね。この5、6年、じわじわと上がる相場が続き、「押したら(下がったら)買い」の上昇相場に慣れきっていました。だから3月も「押したら買い」でヤラれてしまった。


3月以降はどんな感じだったんですか?


幸いにもポートフォリオの1位、2位にしている主力の「 サイバーエージェント 」と「 西松屋チェーン 」の2社が上がってくれて、やっとトントンです。


巣ごもりで動画を見る人が増えること、AbemaTVの好調などからwww9945さんはサイバーエージェントにずっと注目されていましたよね! 年初から2倍近く上昇しました。さすがです! 最近はどんな銘柄を買っているんですか?


ちょこちょこ拾っていまして、ひとつは「 加藤産業 」。独立系の食品卸の会社です。地味な渋い会社ですが、注目は配当。私の調べたところ、2002年から減配していない。チャートもじりじり上げる私の好きな形です。もう1社が「 ユニバーサル園芸社 」。


オフィスなどへ観葉植物をレンタルする会社ですね。


オフィスなどへのレンタル事業は営業利益率が高く、PERも10倍程度と低い。ビル管理の「 日本管財 」もPERは17倍程度でチャートがじわっと上がる形。どれも地味な銘柄ですね(笑)。


余弦さんは今年、いかがでしたか?


僕はおふたりと逆。前半戦で思いっきり稼ぎました。年初から先物などで株価指数を売っていたんです。天井から大底までごっそり取れて資産は8000万円から1億6000万円まで2倍になりました。


現物株ではどんな銘柄を手がけていたんですか?


コロナ禍で4月、5月に買ったのはアウトドア関連。「 ヒマラヤ 」「 アルペン 」「 スノーピーク 」。アルペン、スノーピークは幸運にも決算が思惑通りに行ったので大半を利食いしてしまいましたがヒマラヤは年末の決算に期待してホールド中です。


私は逆に巣ごもりで「 GMOペパボ 」を買ったりしていました。ハンドメイドマーケットの『minne(ミンネ)』が盛り上がるだろうと思いましたし、何より売られすぎていましたから。

航空株はもう大底をつけた?!


ミンネの競合となる「 クリーマ 」も今年、IPOしましたよね。僕はただ、3月の暴落中に「 JAL 」などの航空株を買ってしまったのが運の尽きでした(笑)。


航空や電鉄は、人の移動が制限されて厳しい状況です……。


11月には航空株が相次いで公募増資(不特定の投資家を対象にして新たな株式を発行する資金調達)を発表しましたしね。


株券を新しく発行する公募増資は株価を下落させる要因とみなされることが多いです。


公募増資は基本、悪材料ですよね。しかも同時期に一部地域(※取材時)でGoToトラベルを中止させる動きも出てきた。公募増資にGoTo停止と、航空株にとってストップ安レベルの材料ですが株価は底堅かった。もう大底はつけたのかな、なんて妄想しています。


でも人を運ぶ系の会社はまだ厳しいかもしれない。アフターコロナで人の移動がビフォーコロナの水準まで戻るかというと、戻らないと思う。会社も働く人も「テレワークでいいじゃないか」と気づいてしまいましたから。


コロナワクチンが開発されましたが、接種が始まると今度は副反応が問題になるかもしれないですしね。「ワクチンで即解決」とはいうわけではない。


今日、池袋を歩いてきたのですが、目立ったのは店舗だった土地を更地にする工事ばかりですね。


人が入っているお店はありませんでしたか?


目立ったのは「 アークランドサービスHD 」が展開する『かつや』や「 日本マクドナルドHD 」、それに「 王将フードサービス 」の『餃子の王将』くらいですね。


どれもwww9945さんが3月以降、ずっと注目されていた会社ですね。


目新しいところでは滞在時間が短いお店、立ち食いの寿司店だったり、あとはすっと食べて帰る1人焼肉の『焼肉ライク』は行列ができていました。


『焼肉ライク』は上場していませんが、IPOしたらおもしろいですね!


リアル店舗が不振でもインターネット通販の好調な会社もありますね。「 コパ・コーポレーション 」もそう。上期の売上は前年同期を上回りました 。それでもコロナの再拡大を警戒して通期の予想を上方修正していません。コロナ再拡大でも影響は限定的と考えて購入しています。

バリュー投資家の苦悩


今年はとことん「グロース」(成長株)中心の1年でしたね。ところが3月、4月以降に私が買ったのは「バリュー」(割安株)、「高配当」な銘柄。上がりにくかった。


今年はバリュー投資家には厳しかったかもしれませんね。バリューの視点で選ぶと「 JR東日本 」や「 JR西日本 」などの電鉄系を買ってしまう。そこが浮上しないと厳しい。なので、私はグロースをさわることが多かったです。


私の知り合いもJR2社と「 三菱地所 」を握ったたままで「つらい……」とボヤいていました。


バリュー投資家は「現預金や有価証券をたくさん持っている」とか、「不動産をたくさん持っている」とか、「本来の企業価値と株価との乖離」が生じている銘柄を探して、フェアバリュー(適正価格)へ戻ることを期待して買う、あるいはどこかがM&Aを仕掛けることを期待して買いますよね。ユニゾHDのように。


ユニゾは不動産リッチな会社としてバリュー投資家が注目していました。2019年に「 エイチ・アイ・エス 」と米系ファンドのTOB(株式公開買い付け)合戦が起こり、株価が高騰しましたよね。


割安な会社がM&Aされる流れは続くと思いますが、そんな会社を見つけるにはかなりのリサーチ力が必要。それよりは足もとの業績が良く、2021年もそれが継続しそうな会社にベットした(賭けた)ほうが初心者はやりやすいと思います。


私、5年前にNISA口座で「 片倉工業 」という株を買ったんです。地味な繊維会社ですが、さいたま新都心に保有する商業施設が注目されるバリュー株です。


バリュー投資家さんの定番銘柄ですね!


5年前に1100円で買って、今は1300円。ヨコヨコもいいところです。その間に2倍になっている銘柄もあるのに。いつかTOBされて上がるのかもしれませんが、何も起きなければ無為な時間を過ごすことになる。


資産バリュー株って「適正な水準に株価が戻るまで時間がかかりやすいのが難点だ」と指摘する人もいますよね。


今は資産に根ざしたバリューより業績に根ざしたバリューのほうがいいのでしょうし、もっと単純にユニクロ( ファーストリテイリング )でも買っておけばよかった(笑)。


3月にユニクロを買って握っているだけで2倍!


2020年後半は値がさ株(1単元あたり50万円以上するような株価の高い銘柄)が上がりましたよね。日経平均が上がってるといっても、実際には「日経5」が上がってるだけでした。

カエル先生の一言

日経平均の寄与度とは、日経平均を構成する225銘柄がそれぞれいくら日経平均を押し上げたのかを示しています。2019年末から2020年12月1日(取材日)までで日経平均は約3130円上昇しました。そのうち約2680円はこの5銘柄が寄与したということになります。


225銘柄で構成される日経平均ですが、値上がりに寄与したのは値がさ株の5社くらい(ファーストリテイリング、 ソフトバンクグループ 、エムスリー、 東京エレクトロン 、ダイキン工業)だったということですね。2020年は異例づくしの1年でしたが、2021年はどんな年になるのでしょう。注目銘柄も交えて次回、詳しく教えてください!

※エイチ・アイ・エス(9603)は記事執筆時点で、証券金融会社の注意喚起銘柄に指定されています。