株式の個別銘柄と同じ手順で投資信託が買える──。それが「ETF」という金融商品です。ETFを使えば、日本やアメリカ、ヨーロッパや全世界の株式をまとめ買いできるうえ、「REIT」「債券」「金」にも手軽に投資できます。
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日本と世界の主な株価指数を網羅するETF
ETFの特徴は、「株式と同じ方法で」「投資信託と同じように、日経平均株価やNYダウのような市場平均に連動した投資ができる」ことです。SMBC日興証券なら、100円から日経平均株価などに連動するETFに投資できます。
そんなETFの大きな魅力は、通常の投資信託が扱っていない株価指数などもカバーする、投資対象の幅広さです。
例えば株式だけでも、日本なら日経平均株価、TOPIX(東証株価指数)、JPX日経インデックス400、東証マザーズ指数、さらにはTOPIXの業種別指数など、主な株価指数をほとんどカバーしています。東証マザーズ指数と同じ値動きを目指して運用する投資信託はなく(2021年1月時点)、将来有望なベンチャー企業が上場するマザーズ市場に連動する投資ができるのは、今のところETFだけです。
海外の株式では、アメリカならNYダウ、S&P500指数やナスダック100指数。さらにはユーロ圏、イギリス、中国、韓国、インド、ブラジル、ロシアなど、さまざまな国・地域の株価指数がETFの投資対象です。「全世界」「先進国」「新興国」の株式を対象とするETFもあります。
「JPX日経インデックス400」は、2014年1月に公表が始まった比較的新しい株価指数で、企業の業績や資本効率(どれだけ効率的に利益を出せているか)、情報開示の姿勢などを基準に400社を選びます。
「東証マザーズ指数」は、ベンチャー企業が数多く上場するマザーズ市場を対象とした株価指数です。指数そのものは2003年からありますが、東証マザーズ指数を対象としたETFができたのは2018年のことです。
REIT、債券、貴金属……ETFで分散投資
ETFで投資できるのは株式だけではありません。一般の投資信託と同じく、債券やREIT(不動産投資信託)、金やプラチナなどの貴金属にもETFを通じて投資できます。
例えば債券なら「FTSE世界国債インデックス」などの指数があり、ETFはこれらの指数への連動を目指して運用します。REITは、日本なら「東証REIT指数」が対象です。金などの貴金属も、その価格に連動したETFが設定されています。
幅広い資産にETFを通じて投資できるということは、投資信託編第5回で紹介した「資産分散」の効果を、ETFに投資するだけで得られることになります。投資対象が株式だけの場合、短期的な値動きは大きくなりがちです。債券は値動きが比較的小さく、株式とは反対の値動きをしやすい性質があります。金(ゴールド)は「有事の金」とも言われ、世界情勢が不安定なときなどに値上がりしやすいとされています。
株式に加えて債券やREIT、金などにも投資することで、資産全体として値動きを抑えながら着実な成長が期待できるのが資産分散の効果です。実際のETFで資産分散の効果を確かめてみましょう。
資産分散でリスクを抑える!
2020年2月~3月の“コロナショック”では一時的に大きく値下がりしたものの、それ以外の期間では、株式やREITが大きく下がった場面でも、資産分散の効果で値下がりを小さく抑えられました。グラフ内に丸で示した2018年末から2019年初頭にかけての株安の際は、同じ時期に金価格が上がったことで、株式の値下がりをカバーできました。
値上がりを重視するなら株式を多めに、値動きの安定性を重視するなら債券を多めに持つなど、ETFの配分を変えることで、資産全体の値動きを調節することができます。
知れば知るほど奥深いETFの世界
ETFで投資できる対象は、株価や債券価格などの単純な市場平均だけではありません。いくつか例を挙げると、
・日経平均株価などの指数と逆の値動きを目指すETF
・「女性活躍」「脱炭素」などのテーマに沿った投資を行うETF
・株価の値動きの大きさを数値化した「VIX指数」(別名は「恐怖指数」)への連動を目指すETF
といったETFもあります。これらはどちらかといえば中上級者向けの商品なので、初めてETFに投資する場合は、日経平均株価などの株価指数などに連動する、わかりやすいものを選ぶといいでしょう。
これから資産形成を始める人にとって使いやすく、投資に慣れた人には「こんな指数にも投資できるのか!」と思わせてくれるETFは、身近でありながら奥深い金融商品と言えるかもしれません。
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・ETFの大きな魅力が投資対象とする資産の幅広さ。国内外の主な株価指数はほとんどカバー。特定の国・地域だけでなく、「全世界」「先進国」「新興国」の株式などに投資できる
・「東証マザーズ指数」のように、通常の投資信託(インデックスファンド)では扱っていない株価指数も、ETFを使えば手軽に投資できる
・ETFでは株式だけでなく債券、REIT、貴金属などの指数や価格も投資対象としている。いろいろな種類のETFに投資すれば、資産分散の効果が期待できる