テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、コロナ禍でニーズが高まる海運業界についてご紹介します。
海運各社はそろって業績上方修正
「風が吹けば桶屋が儲かる」式の動きは、コロナ禍で様々に現れています。例えばコンテナ船の需要です。第3四半期決算で「 日本郵船 」「 商船三井 」「 川崎汽船 」はそろって業績の上方修正を行いました。
新型コロナによってリモートワークが増え、パソコンなど電子機器の需要が高まりました。また、トレーニング器具なども売れているとのこと。
「米国では、戸建て住宅の着工が旺盛で、集合住宅の需要は落ちている。ウイルス感染を防ぐため、より広いスペースを求めて郊外に居住するトレンドができた。そして住宅を購入すれば、入居者はモノを買う」(アナリスト)。
それに伴い小売り需要が伸び、全米小売業協会によれば小売関連コンテナ貨物の輸入量は前年比8%を超え、近年で最も高い伸びとなったとのことです。世界貿易の60%はコンテナで輸送されています。
これによりコンテナ運賃が高騰。12月には1ヵ月で2倍の伸びで、前年同月比で3.5倍に達しました。
ニーズ高まるコンテナ船
原油を運ぶタンカーは、輸送需要の低迷で運賃も低迷しています。しかし、昨年4月を振り返ると、一気に石油消費が減少したことで原油備蓄タンクの貯蔵能力が限界になりました。エネルギートレーダーがタンカーを洋上タンク代わりに確保し、タンカーのスポット(随時契約)価格が急騰した局面もありました。
コンテナ船需要を象徴するシーンとして、港でのコンテナ船の滞留が挙げられます。港の側で作業員やドライバーが不足し、荷物をさばききれなくなり、コンテナ船が接岸できなくなったとのこと。
さらにコンテナ自体の不足も指摘されています。港が渋滞しているため、輸送したコンテナを戻せなくなっているのです。港には多数のコンテナが積み上がっています。中国コンテナ産業協会(CCIA)によると、コンテナが到着してから出航するまでの期間はコロナ以前60日でしたが、今では100日に伸びているとのこと。
この状況で需要が見込まれているのが、コンテナを陸送するシャーシと呼ばれる牽引車用のトレーラー。コンテナとシャーシはセットなので、当然不足してくることになります。シャーシは特装車メーカーが製造しており、国内なら「 新明和工業 」や「 極東開発工業 」の子会社が扱っています。輸送であれば、鈴与グループ( 鈴与シンワート )などが連想されるところです。
今後、ワクチン接種の普及により、さらに世界経済が回復するとなれば、まだコンテナや輸送業界には追い風が吹きそうですね。
(出典:日本証券新聞)