日銀のETF買い入れ策の変更で、影響のある銘柄とは

カエル先生の株式相場プレイバック/ 日興フロッギー編集部平松 慶

マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生のマーケットハイライト」。今回は株式マーケットの下支え役でもある、日本銀行の金融政策に注目します。

カエル先生の一言

日経平均3万円到達の達成感などもあり、スピード調整を余儀なくされている日経平均。そんな中行われた日銀による「政策の点検」では、ETF買い入れ策の変更が公表されました。大きな影響はなくても、ボディブローのように個別銘柄に影響が及ぶかもしれない今回の変更をさくっとチェックしてみましょう!

3月の相場は「スピード調整」

3月31日の日経平均株価は2万9178円となり、前月末比212円高でした。
3月の日経平均は上値が重い状況が続きました。一時は3万円台を再び回復したものの、新型コロナウイルスの変異株の広がりや、短期的な相場の過熱感などから、株価の上昇は一服しました。

日銀のETF買い入れ対象はTOPIXだけに

そうした中、マーケットでは3月19日に日本銀行が公表した「政策の点検」に注目が集まりました。この点検は、いま日銀が実施している金融緩和策が、市場や経済に効果的に働いているかをチェックするものです。

中でも、これまで相場が下がったときにETF(上場投資信託)を買い入れるという施策について、2つの変更がありました。1つは買い入れ規模で、上限12兆円は維持されたものの、目安である年6兆円という文言は削除されました。

2つ目は買い入れ対象についてです。これまで日経平均連動型とTOPIX連動型の2種類のETFを買い入れていましたが、日経平均型をやめ、すべてTOPIX(東証株価指数)に連動するETFのみにすると発表しました。これは、日経平均型ETFでは、特定の株に偏る影響があったため、市場を歪めているとの指摘があったことなどが背景にあります。

2020年は日銀が約7兆円ものETFを買い付けており、この影響は特に相場下落局面では、小さくないと言えます。

カエル先生の一言

日経平均株価は、東証に上場する企業のうち、業種や流動性などを加味した225銘柄で構成されています。指数の算出は、それら企業の株価を単純平均しているため、株価の水準が高いいわゆる「値がさ株」の影響を受けやすい指数です。
一方でTOPIXは、東証一部に上場しているすべての企業の値動きを表す指数です。指数は流通する株の時価総額をもとに算出しているため、個別の株価そのものの影響は比較的受けにくい性質があります。日本の株式市場の動きとしては、TOPIXのほうがしっくりくるかもしれませんね。

日経平均に採用されていない銘柄には追い風か

では今回の政策の見直しによって、どんな銘柄が影響を受けるのでしょうか。1つは単純に日経平均に採用されていないTOPIX採用銘柄に追い風になると考えられます。すでに日銀の買い入れるETFの約75%はTOPIX型であったため、直接的な影響は軽微にとどまるものと考えられますが、相場が下落する場面ではサポート要因になると見込まれます。

ニトリホールディングス
ルネサスエレクトロニクス
MonotaRO
レーザーテック
GMOペイメントゲートウェイ

一方で、日経平均に採用されていて、日経平均指数への寄与度が高い銘柄にはややネガティブな影響が出ると思われます。もちろん株価の行方に関しては業績がどうなるかが一番重要です。目先はやや売りが出やすい状況が続くと考えられますが、業績の好調が見込まれるならば、株価が下がったところを買うのも中長期の投資を考える上では有効と考えられます。

ファーストリテイリング
ソフトバンクグループ
東京エレクトロン
ファナック
ダイキン工業

足元では、首都圏の緊急事態宣言が解除されたものの、「第4波」の兆候が見られる地域も散見されます。再び緊急事態宣言が広い地域に出されれば、観光業やサービス業には厳しい春となるかもしれません。株式マーケットにとっても、引き続き感染者の推移やワクチンの接種状況などには注意しておきたいですね。