フロッギー読者のみなさんがESG投資に取り組むためのヒントを伝授する本連載。第2回は、ESG投資のメリットについてご紹介します。
「ESG(イーエスジー)投資ってそもそも何?」を読む
1.社会課題の解決はみんなのメリット
結局ESG投資をやるメリットとは何でしょうか? 現状では、各種データを見てもESG投資が明確なリターン向上をもたらすという証明はなされていないのが現実です。
こうした状況下でも皆がESG投資にお金を向ける最大のポイントは、「社会課題の解決に向けて動くことのできる企業」が成長していくこと。そして「実際に社会課題の解決がなされること」は、全投資家にとってメリットがあるためです。
ESGの世界では、「10年後の2030年」「30年後の2050年」といった超長期的な目線で物事がはかられます。しかし、30年もの長さの時代の変化を読み取ることはほとんど不可能でしょう。なにせ、2050年といえば、2021年入社する新入社員が40代、あるいは50代を迎え、ともすれば老後を考えているような年数なのですから。
ESG投資をする上で着目してほしいポイントは、政府や世界の社会課題を解決しようとする動きが止まる可能性は低いという点です。例えば、30年あるいはそれ以前に社会問題として認識されたのが気候変動や女性活躍などで、その後取り組みが進められてきました。そして今やこの両者への取り組みは必須となりつつあります。
予測が難しい10年後、30年後を見据え、問題解決への取り組みが進んでいく可能性の高い社会課題に対して熱心に取り組む企業を選ぶことは、結果的に長きにわたって活躍できる企業を選ぶことにつながります。
また、こうした社会課題に向き合う伸びてほしい企業の株を買い、支えることで企業が実際に伸びていくことが、私たちや私たちの子や孫の世代が直面する社会課題を解決することにもつながります。
実際に、機関投資家もESG投資に資金を投じていてます。世界のESG投資額は、2014年から2018年の間で約3割増加しており、運用資産全体に占めるESG投資額の割合も大きくなってきました。
もちろん、今考えられるアプローチとは全く異なる手法により社会課題の解決がなされ、結果として熱心に取り組んでいたはずの企業の株価が伸び悩むこともありえます。
したがって、ESG投資とは“ESG”と題された特定の銘柄や商品をただ買えばいいというわけではありません。投資先を考える際にまずはESGの面での具体的な取り組みを調べるところから始めてみましょう。
2.ESG投資は下落局面に強い?
伸びてほしい企業を選ぶという視点からのESG投資は、株価が下がってもなかなか手放されない≒マーケットが下落する際にも、株価の下がり幅が小さくてすむのではないかとの指摘がなされています。
米国の投資信託会社フィデリティと資産運用会社BlackRockはそれぞれ、Covid-19感染拡大を受け株価市場が下落した際の、高いESG格付を持つ企業の株価変動につき検証レポートを発表しています。いずれも、ESG格付が高い銘柄ほど他銘柄と比べ下げ幅が限定的であったと結論付けています。
どちらのレポートも具体的銘柄を明示していませんが、ESGの取り組みについて高い評価を受けている企業で、市場下落時にも上昇トレンドを維持した国内銘柄には「 富士通 」や「 ソニーグループ 」がありました。
上昇トレンド維持の理由として、富士通であればハードからICTサービスへ、ソニーグループであればテレビやPCからエンターテイメントやイメージセンサーへ収益構造が変化したことを挙げる方が多いでしょう。しかし、それだけでしょうか。
富士通は、人権や環境に配慮する「グローバルレスポンシブルビジネス」の枠組みを設定し、ESGへの貢献が自社事業の成長へとつながるポジティブな循環を目指しています。
また、同社は米ダウ・ジョーンズ社や英FTSE社、米MSCI社など、投資家向けに経済関連指標を提供する金融サービス会社が選出する各種ESG投資関連銘柄指標に継続的に組み入れられています。
ソニーグループは1994年に初めて環境報告書を発行して以来、ESGに非財務情報の開示を年次で行うなど、積極的な取り組みが評価されています。
第3回目となる次回は、フロッギー読者のみなさんが実際にESG投資を行うための具体的な手順をお話しします。