上場企業の決算書から最強の投資情報を読み取る! 株価の予測やビジネスに役立つのはもちろん、そこから浮かび上がる企業ドラマも面白い「一冊で2度おいしい本」です。
株上昇の未来も、倒産の未来も決算書のなかに!?
専門性の高い本ながら、自分のような会計素人でも楽しく読めました。実例として挙げた企業とテーマ選びがまずウマイです。
「なぜ、メルカリは赤字でも勝負を続けられるのか?」「なぜ、ニトリは一人勝ちができたのか?」「スカイマークの倒産を決算から読み取ることは可能だったか?」。アンサーはすべて決算情報のなかにありました。
ある種、謎解きのようでもあり、数字嫌いが会計に興味を持つのには十分なつかみでしょう。
メルカリを例にとると、メルペイを始めたり、鹿島アントラーズを買収したりと攻勢を続けています。「赤字なのに大丈夫?」という声はネット上でもちらほら。そこで決算情報の出番です。
赤字の原因は主に広告費と人件費で、後者に関しては年間平均給与が1年で1.4倍にも跳ね上がっていました。このことから「将来の展開を見据え、高年収の人材採用を積極的にしたためだ!」と著者は推察します。
「でも、やり繰りはどうしているの?」と思う読者のため、著者はさらに掘り下げて、同社が「多額の預かり金がある」ことを突き止めます。
メルカリ利用経験者ならご存じかもしれませんが、出品した商品が売れた後も利用者が銀行口座への振込申請をしなければ、お金はプールされたままになります(=預り金)。さらにメルカリ内で商品を買えばキャッシュは内部で循環します。
つまり、メルカリは「キャッシュがたまりやすいビジネスモデル」であり、それゆえ「資金繰りにはまだ余裕がある」、だからこそ「さまざまなチャレンジが可能」。みごとな三段論法でした。
なお、黒字でも「キャッシュが尽きそうな状態」は危険サインだそうです。最近は赤字でも上場する新興企業が増えていますが「良い赤字」なのか「悪い赤字」なのか、本書を参考にすれば判別することができそうです。
このほか「決算書から会社の優位性を読み取る」「業界ごとの決算書の特徴」など投資家なら目を通しておきたい内容も多々。一度読んで終わりという本ではなく、四季報の隣にでも並べておきたい良書だと思います。