テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、足元で進むワクチン接種の裏側についてご紹介します。
打ち手不足は解消するか
新型コロナウイルスワクチンの接種が、ようやく本格化しつつあります。とはいえ自治体向けのファイザーのワクチンは、「発注しても、ほぼ発注数を下回る数しかワクチンが届かない」(特別区のワクチン担当者)状態が続いているとのことです。
国はワクチン流通もファイザーに任せており、実際の配送は「 ヤマトHD 」と「 セイノーHD 」、DHLの3社が受託しています。ファイザーの倉庫から各地の基本型接種施設や連携型接種施設に運んでいます。
「ファイザーのワクチンは195バイアル(瓶)が入った箱単位で、マイナス75度で保管できるディープフリーザー(超低温冷凍庫)のある医療施設に持ち込む。そこから個別の病院、クリニックに小分けして運ぶ。有効期限は製造から6ヵ月だが、解凍後は5日間を過ぎると使えなくなる。それだけに、ワクチン流通はきめ細かな流通計画を立てねばならない」(厚労省)
厚労省によれば、既に配送された数量は5月23日時点で615万4395バイアル。1瓶で6人接種するなら3692万6370回分ですが、総接種回数は5月26日時点で1059万5100回。約3600万回分のワクチンがあるのに、3分の1の1000万回しか使われていない。接種の遅れの要因の1つが、注射の打ち手不足だと言われています。
オールジャパンで底力に期待
一方、自治体の接種の遅れを取り戻すべく、5月24日から自衛隊による大規模接種も始まりました。ワクチンはモデルナ製で、流通は「 武田薬品工業 」が協力会社とともに担っています。
「モデルナの流通は、自衛隊の活躍も含め、正にオールジャパンで対応する。ワクチンこそ海外製だが、残りは日本人が執り行う」(自衛隊幹部)
欧州から日本までの国際輸送業務を「 近鉄エクスプレス 」が担います。それを「 日本航空 」が温度や時間、品質管理などの貨物ハンドリングの提供でフォローし、関西エアポートが輸入および搬送の部分でサポートしています。
上陸後は、「 三菱倉庫 」が全国の医薬品卸に供給を行い、医薬品卸大手の「 メディパルHD 」が大規模接種会場や各地の配送センターに運びます。そして、日本医薬品卸売業連合会に所属する40社がモデルナワクチンの地域担当卸として、医療機関など接種会場に届けていきます。
ようやく本格化し始めたワクチン接種。ここから日本の底力を見せてほしいですね。
(出典:日本証券新聞)