新一万円札の顔となる「日本の資本主義の父」こと渋沢栄一。その生涯と著作である『論語と算盤』を齋藤孝が現代シーンに置き換えて解説。論語が精神性ならば、算盤とは利益のこと。一見対極にある組み合わせからビジネス成功のヒントを読み解きます。
世界一わかりやすい「論語と算盤」で成功のヒントをつかめ!
約500もの企業設立に関わった渋沢は、本家・中国の研究者にも負けない「論語」読みの達人でもありました。「論語」と「商売」を結びつけたそのセンスには脱帽しますが、いかんせん原書となると「ハードルが高い……」
本書はそんな読者に向けたもので、イラストたっぷり、図表もたっぷり。誤解を恐れずにいえば、児童向け偉人伝の「わかりやすさ」「読みやすさ」「サービス精神」をそのまま大人向けにバージョンアップしたような作りです。
構成は「渋沢栄一の生涯」「『論語と算盤』解説」「関係者からみる『論語と算盤』」の3章仕立てで、多方面からの考察はもちろん、話題の広げ方もユニーク。
ある時は『論語と算盤』から金メダリストの話につながり、アルコール依存症のセラピーにつながり、再び『論語と算盤』の教えに戻る。知らず雑学も身につきそうで、この辺り、立体感のある講義を受けている気分です。大学教授である齋藤孝の面目躍如というところでしょうか。
ちなみに、渋沢の成功を振り返る時、「よくぞそのタイミングでそこにいた!」パターンが目立ちます。自身、「10のうち2は運だとして、努力して開拓しなければ、つかむことはできない」との箴言も残しています。本書では渋沢の行動を追い、オファーを受けたらすぐ決断、「考えておきます」など野暮なことは言わない人間像をも浮き彫りにします。
「利益を出すこと」「精神面で向上すること」を両輪とした91年の生涯は自己啓発の要素も多分に強いです。仕事への向き合い方、部下の育て方、逆境の残り越え方等々のヒントがそこかしこに。「新一万円札を見るたびに渋沢の教えを思い起こせば、日本の未来は明るくなるはず」、そんな思いも込められた一冊でもあります。