「社長の顔が見える会社」を選ぼう

14歳の自分に伝えたい「お金の話」/ 藤野 英人須山 奈津希

レオス・キャピタルワークスで「ひふみ投信」などのファンドマネージャーを務める藤野英人さん。日興フロッギーでは度々、お金や投資に関する大切な言葉をみなさんに伝えてくれていました。この連載では、そんな藤野さんの著書「14歳の自分に伝えたい『お金の話』」から一部を転載してお伝えします。

君が将来、就職活動をしようと思ったときには、きっとすごく迷うと思います。

世の中にはたくさんの会社があって、候補を絞るのはなかなか難しい。

 

まずは、興味のある検索キーワードをいくつか掛け合わせて、ヒットした会社名からたどって、ホームページを見てみることから始めてみるといいかもしれません。

会社の公式ホームページを見れば、その会社が大事にしている価値観や職場の雰囲気がなんとなく伝わってくるものです。

僕が投資先を決めるときにも、必ずその会社のホームページをチェックします。

投資家は成長しそうな会社を探して投資するのが仕事なので、僕が重視しているポイントは就職活動にもきっと役立つはず。それを君に教えます。

ホームページの目立つ場所に、かっこいいキャッチコピーでビジョンやミッションを打ち出すのは、どこの会社でもやっていることなので、重要ではありません。本質はもっと地味なところに宿ります。

「社長の顔写真」が載っているかどうか。これをチェックしてみてください。「役員一覧」や「代表挨拶」のページがあって、社長が顔写真付きで自己紹介をしている会社は、成長する確率が高いのです。

逆に、社長の顔写真がない会社の成績は平均的によくない。「え? そんなに違いがあるの?」と驚いたかもしれませんが、実際に株価のデータを取って比較した結果なのです。

 

なぜ、社長の顔写真を載せている会社のほうが成績がいいのか?

おそらく、体質の違いがあるからなのでしょう。

初めてホームページを訪れるお客さんに対しても、「いらっしゃいませ」とトップが玄関先まで出てきて迎え入れ、「私たちはこういう商売をやっています」と自分たちを理解してもらおうとする。

そういうオープンな姿勢がお客さんや社会に伝わるから、信頼を集めやすく、製品・サービスもたくさんの人に届きやすくなる。
きっとそんな関係が成り立つのだと思います。

さらに、社長による「代表挨拶」のメッセージが掲載されていたら、その文面も読んでみましょう。

このときのチェックポイントは〝主語〟です。「当社」「弊社」ではなく、「私」や「私たち」を使っているかどうか。

会社を主語にして語る社長は、本当に自分の本心から出た言葉なのかなとつい疑ってしまいます。

「私(私たち)はこう思います」と自分を主語にしてメッセージを発信する社長のほうが、覚悟を決めて社長の役割を担っているように、僕は感じます。

 

会社組織は常に動いている生命体で、その舵取りをするのが社長です。だから、社長がどんな人であるかは、その会社自体を見極めるためにとても大事なのです。

何か後ろめたいことをしている会社の場合、絶対に社長は前に出てきません。

堂々と胸を張って、世間に姿を見せ、メッセージを発している社長がいるかどうかが、会社選びのポイントだと覚えておいてください。

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