先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

ド直球のタイトルですが、読み応えはたっぷり。金融・経済の歴史を知り、お金の使い方を学び、投資と経営戦略を学び、ひいては起業家マインドまで。10代向けですが「この先、給料なんか上がりっこない!」と嘆くビジネスマンにもオススメです。

お金持ちになる方法は「あらゆる投資」と「価値の生み出し」

何しろ、引き出しの多い本です。
大人が読むと「知ってるよ」と思うような原理原則もありますが、具体例として挙がるエピソードに未知のものが多かったり。ぼんやりと知っていた事柄がよりくっきりと像を結ぶような、気持ちの良い読書体験を得られます。

たとえば、世界のGDP。
著者は「西暦1500年」と「西暦2019年」というスケールでGDPを解説します。

500年の間に人口は5億人から76億人へ、GDPは354倍へと爆発的な成長を遂げました。「人類が自分の筋肉以外を動かすことを学んだ」分岐点であったと語る背景には、蒸気機関車などの「エネルギーの活用」や事業投資で富を増やす「資本主義の発明」もあり。

これら「付加価値」と「投資」は本書で繰り返し語られるキーワードです。

お金持ちになるための方法その1は「社会が喜ぶ価値を生み出すこと」。
その2は「現在の資産(お金、才能、時間)を投下し、将来的により大きな資産を得ること」。

著者は「今日、何をするか?」の選択をはじめ「毎日のあらゆる物事が投資」だと語ります。その選択の積み重ねにより、新しい価値が見えてくる。金融投資も自己投資も「最初の持ち出しが苦しいのは当然。でも、早く始めるほど後で大きく回収できる」のフレーズには納得感しかありません。

ちなみに、投資家のプロだけに株投資にも触れています。つい引き寄せられがちな高配当銘柄ですがこれはNGと言います。理由は「配当金を出さず、自社に投資をした方が大きな成長(複利効果)が望めるから」。

全編通じ企業事例に事欠かず、「あえて利益を出さないで競争優位性を築いてきたAmazon」や「先鋭的なデザイン(新しい価値)で4万円以上もする扇風機をヒットさせたダイソン」などのエピソードも。

青年向けの啓発要素と企業の経営戦略、両者が違和感なく融合しているあたりも本書のユニークなところです。