ROEとは、「Return On Equity」の略称で、日本語では「自己資本利益率」または「株主資本利益率」と言います。ROEは1株あたり利益(EPS)を1株あたり自己資本で割ることで計算でき、5%、10%というようにパーセンテージで表されます。日本企業の場合、一般的に8%が資本効率の1つの目安であると言われ、それを上回ると資本効率が良いと判断されます。
(ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100)
短期も、長期も
株主にとって、その企業の目の前の業績ももちろん大切ですが、長期的にどういう目標を掲げているかも重要です。ましてや、目先の利益が一過性のものである場合は、それも見極める必要があります。そこで今回は、そんな足元の業績の見極めと、長期的な視点の両面が重要になるケースをご紹介します。
case19:森永乳業
今回は、マウントレーニアやビヒダス、pinoなどを手がける「 森永乳業 」です。1917年の創業以来、乳で培った技術を活かし、「おいしさ」と「健康・機能性」を備えた 商品を数多く提供しています。
ROEは「一過性の損益」に注意
同社の今期の予想ROE(QUICKコンセンサス予想)は16.6%と、大きく伸びる見込みとなっています。ただ、今回は固定資産の譲渡に伴う特別利益201億円を計上する予定となっており、それを除くと、例年並みの水準になる可能性があります。ROEを見比べる際には、こうした一過性の特徴を持つ「特別損益」に注意が必要です。
コロナ影響が薄らぐ
2022年3月期第1四半期の業績は、売上高が1282億円、営業利益が99億円といずれも前年を上回る水準となりました。
ヨーグルトなど健康に貢献する商品の売上が好調だったことや、外食やホテルなどの業務用乳製品の売れ行きが前年よりも良かったことなどが収益を押し上げたようです。
こうしたことから、上期業績の会社予想を上方修正しました。通年予想は据え置いたものの、好調な状況が続けばさらなる上方修正も期待できるかもしれませんね。
長期目標にROE掲げる
今後のROEを左右する要因としては、同社が掲げている2029年3月期にむけた長期ビジョンが挙げられます。これは営業利益率7%以上、海外売上高比率10%以上、ROE10%以上を数値目標として掲げているものです。
こうした数値目標は、達成/未達成の結果や要因を株主に対して説明する必要が生じることになり、積極的な業績改善策が講じられる可能性が高いと言えます。
また、役員報酬の業績連動比率を引き上げることを策定しましたが、その評価指標の1つとしてROEが挙げられています。今後はさらなる株主還元や積極的な海外投資による利益率の向上など、ROEを押し上げる施策を打ち出す可能性があります。今後の同社の動きにマーケットの注目がさらに集まるかもしれませんね。
①これからの業績を考える
②株主還元策を考える
③投資家の心理を考える
今回は、①②から森永乳業を見てきました。足元ではコロナ禍の影響が薄らいできた同社の事業環境。長期的な目標でROE改善などを盛り込んでおり、今後も業績回復や株主還元策の強化などが期待できそうです。同社のさらなる飛躍に期待したいですね。