「この銘柄で儲けなさい」的な目先の話ではなく、長期的な視野で「お金に強くなる」ことを目指した本。経済学や金融工学、数学など6つの教養を用いて、投資のシナリオ作りに役立てます。リベラルアーツの入門編としても。
投資の勝率を教養で一気に高める
著者いわく「教養を身につければ成功の確率は一気に高まる」のだそう。リベラルアーツブーム久しいなか、「お金を生み出す教養」と「お金を殺す教養」があるとバッサリ斬る。穏やかな語り口ながら不必要な知識は捨てる、潔さのある本です。
株をやる人間として興味深いのは情報工学の「集合知」でしょうか。簡単にいえば、「皆が言っていることは案外正しい」という論理。
Googleのアルゴリズムにも採用されているそうですが、不特定多数が参加する株式市場でも時々見られる光景です。
たとえば、1986年、スペースシャトルの「チャレンジャー号」が乗組員を乗せたまま爆発する事故が起こりました。
原因は燃料漏れを防ぐOリングが破損したことでガス漏れが起こった、ということが数ヵ月後に判明しますが、市場では事故直後にこの会社の株価が急落。
まさに集合知で「巷の噂はやはり正しかった」という結論に。経済学者ケインズの「株式投資は美人投票」論もこれに類すると言います。
「美人投票で勝ちたかったら自分が美人だと思う人ではなく、皆が美人だと思う人に投票すること。株も同じで皆が上がると考えそうな銘柄に投資しなさい」。こう言ったケインズは株で億万長者になったそうです。
このほか、アインシュタインの相対性理論やフィッシャーの法則などさまざまな知識を応用し、お金を稼ぐ発想を磨くのが本書の意図。
実存主義から見た「意識高い系と低い系、稼げるのはどっち?」と考察したり、社会学から見た「資産家はなぜ友人を選ぶのか?」(身も蓋もない問いではありますが)を紐解いたり。
それぞれ入り口は軽く読めそうなテーマばかりですが、その分野の考え方にしっかり触れていきます。本書をきっかけに、気になる学問を深めていく使い方が◎。