EV市場を開拓する日本電産

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、電気自動車向けの電動システムを手掛ける日本電産に関するニュースの裏側についてご紹介します。

「カーボンニュートラル宣言」で異彩を放つ

政府の「カーボンニュートラル宣言」から1年。その中で異彩を放っている企業の1つが「 日本電産 」です。同社は日本が出遅れていると指摘されるEV(電気自動車)向けの駆動システム「E-Axle(イーアクスル)」を軸にEV市場を開拓しています。

「イーアクスル」はモーターとインバーター、減速機(ギヤ)が一体となったシステムで、いわばEVのエンジンの役割を担います。既に中国の広州汽車や吉利汽車などのEV10車種に採用されています。さらに、佐川急便( SGホールディングス )が開発する配送用EVにも、イーアクスルの導入が決まっています。

「日本電産の永守重信会長はかねて、自動車もパソコンなど電化製品同様、価格下落が進むとみており、『必ず5分の1になる』とも述べていた。これはGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)などビッグテックが唱えているものでもあり、既存の自動車メーカーよりも、GAFAを念頭に将来戦略を練っている」(経営コンサルタント)

「アップルカー」連合に加わるか注目

そこで注目されるのが、日本電産が台湾の鴻海(ホンハイ)科技集団と合弁でEV駆動システムの開発に乗り出すことです。2021年7月にその検討を始めたことを公表しています。

鴻海はアップルのiPhoneを製造していますが、そのアップルが「自動運転車製造へ」という噂が出回っています。ちなみに2020年10月に、鴻海はEVプラットフォーム(車台)開発を表明しています。アップルカーとの符合が想像され、そこに日本電産も加わることになりそうです。日本電産もアップル銘柄の一角になるのでしょうか。

日本電産の売上高は2021年3月期に1.6兆円となりましたが、永守会長は2030年に10兆円にすると宣言しました。その牽引役がEV向けモーターで、さらに同社はEV向けのパワステシステム、シートやドアの電動システムなど開発を進め、EVの車台も開発中です。これが日本電産のEV戦略とのこと。

「夢多きビジョンだが、時価総額を見ると「 日産 」が2.5兆円、「 ホンダ 」が6.1兆円で、日本電産は7.4兆円と両社を上回っている。「 デンソー 」の6.3兆円も超えており、市場では立派なEV銘柄となっている」(前出・経営コンサルタント)

EVというと欧州が前のめりになっていますが、日本電産もセルビアへの工場進出を決めています。中国に続き、欧州でも車載モーターをつくり売っていくーー日本電産はEVシフトに覚悟を決めているようです。

今後の同社の動向に注目が集まりそうですね。

(出典:日本証券新聞)