働く男女のニーズを開拓!『金のミルクキャンディ』【前編】

なぜ売れ続ける? 担当社員が語る、あの企業の定番商品/ 日興フロッギー編集部CHINATSU

ミルクキャンディ市場No.1(インテージSRI+調べ※注)のブランドといえば、カンロの『金のミルクキャンディ』。2012年に発売した同商品はシニア世代が中心だった飴市場において、働く男女年代の取り込みにも成功した。

香料・着色料不使用というしばりの中で、抹茶味やカフェラテ味も好調に推移する。同社・マーケティング本部カンロ飴・金のミルクブランド室長の坂東美紀さんにお話を伺った。

香料・着色料不使用のミルクキャンディはレアだった

――ミルクキャンディ市場でトップブランドを作ることはカンロの長年の課題だったそうです。2012年に発売した『金のミルクキャンディ』はそこに真っ向から切り込んだ商品ですね。

そうですね。カンロはハードキャンディ全体ではトップシェアを誇っていたものの、ミルクキャンディにおいて突出したブランドはありませんでした。

『金のミルクキャンディ』の発売前にも複数のミルクキャンディを発売してきましたが、競合他社さんの強いブランドに追いつくまでには至りませんでした。

開発のヒントになったのはプレミアム感を求める社会全体のムードです。2010年代初頭は「安いものをたくさん」よりも「良いものを少しだけ」という傾向が高まり始めた時期です。

「大人世代が満足するようなプレミアム感ある商品」を追求し、素材や製法にとことんこだわって誕生したのが『金のミルクキャンディ』でした。

マーケティング本部 カンロ飴・金のミルクブランド室長の坂東美紀さん

――香料・着色料不使用を打ち出したミルクキャンディは当時、まだ珍しかったそうですが。

香料なしでキャンディを作るのは意外と大変なんです。ミルクキャンディでバニラのような甘い香りがするものもありますが、香料で補っているものがほとんどです。

香料・着色料などを使用することなく、味わいの重厚感や鼻に抜ける自然な乳の香りを「素材だけで表現できないか?」が出発点。原材料となる生クリーム自体の香りや後味が一番の頼りです。

このため、『金のミルクキャンディ』の原料選びには相当時間をかけましたね。かなりの数の北海道産の生クリームを取り寄せて試作を繰り返し、風味を損なわない高温短時間の濃縮製法を取り入れました。

なお、この濃縮技術は別ブランドの『ミルクのカンロ飴』でも使われています。

香料・着色料不使用でミルクそのままのおいしさを追求した『金のミルクキャンディ』

――当時の研究開発担当者は「牛乳嫌い」だったそうですが、それが逆に「万人に愛されるミルクキャンディ」を生み出すのに好材料になったとも。

そうですね(笑)。独特の牛乳臭といったところを感じ取りやすかったことが、味作りにうまく活きたのかなと思います。

『金のミルクキャンディ』は「乳脂肪分14.6%」とミルクキャンディのなかでもトップクラスの濃厚さがありますが、どうも高ければいいというものでもないんですね。

実際、試作では乳脂肪分がもっと高いキャンディも作っていたそうですが、「口当たりがくどくなってしまう」とのことでボツになりました。「濃厚なコクを保ちつつ、後味すっきり」というバランス感を追求しましたね。

――『金のミルクキャンディ』というネーミングも勝負に出ていますよね。

他にも案はあったようですが、プレミアム感を出すのに「金」に勝るものはなく(笑)。ミルクキャンディはパッケージに白を使うものが多いなか、パッケージも金色で売り場で異彩を放っていたと思います。

『金のミルクキャンディ』は競合商品より価格は若干高めの設定ですが、これも商品のプレミアム感とうまくリンクできました。

ミルクキャンディとしては後発品にあたる中、トップブランドになりえた理由としては、プレミアムという差別化と、食べた際の納得感が重要なポイントだったと考えています。

「金色のパッケージは売り場でも目立ちました」と語る坂東さん

コンビニの扱いが減った? 「まだまだ伸びる」と販促強化へ

――2012年の発売初年度から販売目標を達成。一方で、現場では「まだまだいける」という声も高かったそうで。

発売直後は売れ行きも好調で、多くのコンビニエンスストアでお取り扱いいただけましたが、コンビニで通年お取り扱いいただくことは新商品にとってハードルが高く、しばらくすると、扱いが徐々に減ってきてしまった。

とはいえ、会社として非常に自信のあるブランドです。「もっと上を狙えるはず」「もっとたくさんの方に知ってもらえる商品のはず」という思いは現場のみんなが持っていました。

そうした背景から、『金のミルクキャンディ』のTVCMを放映したのが2013年春のこと。発売1年未満の商品でCMを打つのはカンロではかなり異例のことなんです。定番商品であっても「ここぞ!」という時にしかテレビスポットは行いませんから。

「ミルクのしずくが跳ねてキャンディになる」というCMでシズル感を演出したものですが、放送直後からコンビニやスーパーの売上が急増。

その後も右肩上がりで成長し、現在はほとんどのチェーン様で通年商品になっています。スーパーやドラッグでのお取り扱いが拡大したのもこのCM以降でした。

発売から半年後にカンロとしては異例のTVCMを放映。直後、売上が急増した

ベーシック好みの男性がヘビーユーザーになった

――現在、『金のミルクキャンディ』は30代、40代の働く男女をはじめ広い年代の方々に高い支持を受けています。一般的なハードキャンディの購買層とは若干違うそうですが。

ハードキャンディ市場全体の一番大きなユーザーは60代、70代の方です。シニア世代の方は飴を買う人の割合も高いですし、買う個数も他の世代よりも多いです。

『金のミルクキャンディ』も開発を始めた当初はやや上の世代の女性をターゲットにしていましたが、プロモーションの際に30代、40代の働く男女の「ほっとひと息」シーンを見据えて施策を打ったことも一因ですね。ちなみに、現状は10代・20代の若年層は、キャンディよりグミを買われることが多いです。

カンロでもグミは展開していますが、会社としてターゲットをすみ分けているわけではなく、キャンディの訴求もしています。『金のミルクキャンディ』でも手のひらサイズのコンパクトサイズは若い世代の購買が多い形態です。

また、男女別でいえば、ミルクキャンディは男性の購買が目立つ傾向があります。女性の場合、スィーツ系やフルーツ系など新しい味を積極的に試す方が多いですが、男性はベーシックなものを繰り返し買う方が多い。

『金のミルクキャンディ』は発売直後にコンビニで多く採用いただいていたこともあり、男性のリピーターを獲得しやすかったんです。

チャネルによるユーザー特性といいますか、スーパーであれば主婦の方を始め女性のお客様の方が相対的に多くなる。一方のコンビニは仕事途中のサラリーマンが立ち寄ったりするシチュエーションも見込まれます。

結果的に、『金のミルクキャンディ』は男性のお客様にも訴求しやすい立ち位置にあったんですね。

後編では香料・着色料不使用で展開したフレーバー、『金のミルクキャンディ抹茶』『金のミルクキャンディカフェラテ』についてもお話ししていきます。

※注 「ミルクキャンディ市場No.1」出所:株式会社インテージSRI+ ミルクフレーバーキャンディ市場 2020年4月~2021年3月累計販売金額ブランドランキング

カンロ