香料・着色料不使用しばりで新フレーバーを開発【後編】

なぜ売れ続ける? 担当社員が語る、あの企業の定番商品/ 日興フロッギー編集部CHINATSU

ミルクキャンディ市場No.1(インテージSRI+調べ※注)のブランドといえば、カンロの『金のミルクキャンディ』。2012年に発売した同商品はシニア世代が中心だった飴市場において、働く男女年代の取り込みにも成功した。

香料・着色料不使用というしばりの中で、抹茶味やカフェラテ味も好調に推移する。同社・マーケティング本部カンロ飴・金のミルクブランド室長の坂東美紀さんにお話を伺った。
働く男女のニーズを開拓!『金のミルクキャンディ』【前編】 を読む

抹茶味発売でミルクキャンディ不動の1位へ!

――『金のミルクキャンディ』は抹茶味、カフェラテ味もありますが、どれもやみつきになる味わいです。一方、香料や着色料を使わないとなると開発にご苦労もあったのでは。

おっしゃる通りで、香料などを使っているキャンディと同じような味展開は難しいです。他ブランドのミルクキャンディにはイチゴやチョコ、キャラメル味などもありますし、「もっといろいろな味が食べたい!」という声も多いです。

ですが、フルーツ系のキャンディの場合、香料や着色料を使わず、味わいやきれいな色合いを出すのは難しいんです。『金のミルクキャンディ』として発売するには、素材そのものの風味の強さが必要になってきます。

そうした中での第二弾フレーバーに挙がったのが『金のミルクキャンディ 抹茶』です。2015年に発売したものですが、当時はインバウンド需要も見込まれており、抹茶市場が非常に伸びていた時期。

味わい深く、和を感じさせるフレーバーということで早い段階で候補に挙がっていましたね。

マーケティング本部 カンロ飴・金のミルクブランド室長の坂東美紀さん

――ひと口に抹茶といっても品種はたくさんありますよね。試作も相当数されたんですか。

しましたね。『金のミルクキャンディ』でたくさんの生クリームを取り寄せたのと同様、この時もかなりの数の抹茶を取り寄せています。

同じ抹茶でも品種や等級や産地などで味は異なりますし、さらにいえば、産地が同じでも茶園が違うと味も変わる。最終的に西尾の抹茶が選定されました。

西尾(愛知県)は全国有数の生産量を誇る抹茶の産地ですが、伝統的な棚式覆下栽培や石臼挽き製法などで生産されており、『金のミルクキャンディ』と合わせたときに最も合うと判断して採用しました。

栽培方法や製法などが香りや旨味などに深く関係しており、奥深い世界だと思いましたね。

また、キャンディですから色合いも大事でした。これもまた抹茶それぞれで、沈んだ緑になったり、スカッとした緑になったり。西尾の抹茶は鮮やかな緑で見た目も良かったんです。

『金のミルクキャンディ抹茶』 品種や産地で味わいが異なるため、相当数を試作した

『金のミルクキャンディ抹茶』の発売はブランドのポジションを決定づけたターニングポイントでもありました。

それ以前からミルクキャンディ市場で順調にシェア拡大をしていましたが、抹茶味を出したあたりから不動のNo.1ブランドになりました。

2012年の誕生から10年あまり、ほぼ右肩上がりで伸び続け、現時点の年間販売数は2300万袋前後で推移しています。

「おいしいカフェラテとは何か?」その定義づけから始まった

――今秋は『金のミルクキャンディ』として第三弾、6年ぶりの新フレーバーとなるカフェラテ味を発売しました。こちらの背景もお聞かせ願えますか。

まず、さまざまなお店でカフェラテを飲み、「おいしいカフェラテとは何か?」を定義づけるところからスタートしましたね。

そこで感じたのはミルクとコーヒー、どちらかが勝ちすぎても味のバランスが損なわれてしまうということ。

それぞれにしっかり強さがあるのは大前提ですが、両方の美味しさを引き立て合うバランス感が大切です。『金のミルクキャンディカフェラテ』で目指したのもその地点でした。

このバランス感を求めて、様々な焙煎度合いや配合のコーヒーサンプルを使用し、試作を繰り返しました。

深みがあるもの、酸味があるものなど35種のコーヒー原料を取り寄せて候補を絞り込み、最終的にブラジル産とインドネシア産のブレンドを選定。

フレンチローストのコクと苦みが『金のミルクキャンディ』の生クリームの美味しさを引き立てて、香ばしさとほろ苦さのある本格的なカフェラテ味が完成しました。

『金のミルクキャンディカフェラテ』 35種のコーヒー原料から試作し極上の味わいを実現

前編でお話ししましたようにカンロでは「ここぞ!」という時にTVスポットCMを行いますが、今回も発売直後の10月にCMを流しました。

2013年に製作した「ミルクのシズル感」を表現した映像を一部使っていますが、立ち上がりの反響も良いです。

また、人気のイラストレーターとコラボしたキャンペーンも実施し、若年層をはじめトライアルの方が増えてきた手ごたえを感じていますね。

トライアル需要を掘り起こす! 手のひらサイズの『金のミルクキャンディ』

――トライアル需要の掘り起こしにも積極的ですね。パッケージサイズによってチャネルや購買層も異なるそうです。

ハードキャンディ市場の購買層は高めです。将来の市場を見据えると、若い方にもまずは一度でいいから試してほしい。

とはいえ、普段、キャンディを食べない方にとって通常の袋サイズはハードルが高いと思います。

「こんなにたくさん食べきれないかも」「まずは1、2個味見したい」という方には、通常サイズはなかなか手に取りづらいですよね。

そうした背景から人気なのが、27gで手のひらに乗る『金のミルクキャンディ(コンパクトサイズ)』です。見た目も可愛らしく若い女性の購入も多いんです。

容量的には割高にはなってしまうのですが、個包装ではなくチャック式で飴がそのまま入っているため、「ごみが出なくて助かる」という声もあったり、持ち運びも便利で、トライアル的な位置づけとしても重要なサイズですので、見た目の可愛さや購買層から、期間限定デザインの展開も行っており、現在は6種類のコラボデザインにて展開中です。

コンパクトサイズはコンビニや駅の売店で販売。若い女性のトライアル需要も多い(写真は通常デザイン)

『金のミルクキャンディ』にはこのコンパクトサイズを含め、4種のサイズ展開があります。コンビニやスーパーなどにある通常サイズのほか、100円ショップ専用サイズ、通販などでお取り扱いしている大容量サイズなども。チャネルによって購買層や食シーンも少しずつ異なりますね。

――『金のミルクキャンディ』の後を追う本格派のミルクキャンディの競合も増えてきています。差別化対策をどう考えていますか。

香料・着色料不使用で乳脂成分14.6%のプレミアム感は発売当初は突出していましたが、『金のミルクキャンディ』と似たコンセプトを持つ商品は今では少なくありません。

市場規模が大きいミルクキャンディの競合品は増えてきています。これまで味わいや品質を全面に打ち出してきたものの、情緒的な価値を追求していくフェーズに入ったと感じています。

本格派のミルクキャンディ市場が激化してきたと坂東さん

カンロでは定期的にお客様アンケート調査を実施していますが、意外だったのが「どんな時に『金のミルクキャンディ』を食べたいか」への回答です。

「ちょっとしたご褒美」的な答えが多いかなと思っていたところ、返ってきたのは「癒し」だったり、「ちょっと疲れた時」であったり。「癒し」と『金のミルクキャンディ』がリンクしていることにはハッとさせられました。

現在展開中のプロモーションやブランドサイトなどでは心を癒してくれる「幸せのスイッチ。」として『金のミルクキャンディ』を訴求しています。

「情緒的価値」を高めるようなコミュニケーションに注力していくことで、たくさんの競合品からお客様に商品を選んでいただくきっかけになるのではないかと考えています。

キャンディは一粒の満足感も大きい「スロースイーツ」

――カンロでは2019年に商品軸だったマーケティングをブランド軸へと変更しています。改めて、『金のミルクキャンディ』ブランド室長の坂東さんに今後の意気込みをお伺いしたいのですが。

『金のミルクキャンディ』はミルクキャンディ市場でのNo.1ブランド(インテージSRI+調べ)になりましたが、やれることはもっとあると思っています。

認知度としてはまだまだで、ブランド自体を知らない方も多いです。糖質制限ブームもありましたし、キャンディを食べない方も増えてきている。

市場としては逆風ともいえる中、『金のミルクキャンディ』をどうやってお手に取っていただくか。日々考え続けています。

ブドウ糖は脳の主要な栄養源ですし、口に入れてそれなりの時間楽しめるのはキャンディならでは。その他のお菓子であれば一粒で終わらず、二粒、三粒と食べる量も増えがちですが(笑)、キャンディならば一粒でもゆっくりと満足感を得られる。

この「スロースイーツ」という長所は大きいですし、そう捉えるとまだ掘り起こされていない可能性もあると思っています。

『金のミルクキャンディ』は中国や台湾、シンガポールなどで展開を始めていますが、海外もこれからです。一部の人だけではなく誰もが知っているブランドになれるよう、邁進していきたいですね。

※注 「ミルクキャンディ市場No.1」出所:株式会社インテージSRI+ ミルクフレーバーキャンディ市場 2020年4月~2021年3月累計販売金額ブランドランキング

カンロ