ROEで読み解くロート製薬

水曜日はROEをトコトン!/ 日興フロッギー編集部スタジヲ タケウマ

ROEとは、「Return On Equity」の略称で、日本語では「自己資本利益率」または「株主資本利益率」と言います。ROEは1株あたり利益(EPS)を1株あたり自己資本で割ることで計算でき、5%、10%というようにパーセンテージで表されます。

日本企業の場合、一般的に8%が資本効率の1つの目安であると言われ、それを上回ると資本効率が良いと判断されます。

ROE(%)=1株あたり利益(EPS)÷1株あたり自己資本×100
(ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100)

ROEと併せてチェックしたい「配当性向」

ROEを向上させる施策のうちの1つが「株主還元の強化」。しかし、中には利益があまりないにもかかわらず、配当をひねり出している企業もあります。

そんな時にチェックしておきたいのが「配当性向」です。ROEが同じ水準でも、企業が余裕をもって配当を出しているかどうかを確認することができます。

case20:ロート製薬

今回は、目薬などアイケアで国内市場トップシェアを握る「 ロート製薬 」を見ていきます。

同社は1909年に社名の由来ともなった「ロート目薬」を発売。また、1988年の米国メンソレータム社買収で世界の100ヵ国以上の国々に広がるネットワークを獲得し、これをプラットフォームにアジアを中心にグローバル展開を推進しています。

ROEは11.4%と比較的高い

同社のROEは2020年度に11.4%、2021年度は10.8%(QUICKコンセンサス予想)が予想されています。

一般的にROEは8%を上回ることが望ましいといわれており、同社の水準は比較的高いことがうかがえます。ただ、それまでの推移を見ると、2ケタに届かない水準が続いていました。

ROEを3つに分解すると?

ROEが高まった理由はなんでしょうか。

明治HDの回と同じように「デュポン分析」によって3つに分解してみると、売上高純利益率が全体を押し上げている様子がわかります。コストの削減や利益率の高い商品を多く売るなどの施策を講じることで、利益率をアップさせた可能性があります。

増配余力を残しつつROEは上昇

ROEを上昇させる要因の1つに、分母である「自己資本」を減少させる自社株買いや増配といった株主還元策の強化が挙げられます。

同社は1株あたり配当金が17期連続で増配となっており、その影響についても少し見ていきましょう。

企業の中にはROEを高くするために配当を増やす企業がありますが、同社はむしろ利益の中から配当へ回す比率(配当性向)を低下させています。

連続増配を実施しているものの、それ以上に当期利益が伸びていることがうかがえます。つまり増配の余力をまだ残しつつ、ROEが高くなっていることを意味しています。株主にとっては安心できる経営状況と言えそうですね。

新型コロナウイルス流行の影響で、国内外ともに2020年度は減収となっていましたが、感染状況の落ち着きとともに足元で売上は回復傾向にあるようです。

また、機能性食品の開発や再生医療事業などへ積極的に取り組むことで、継続的な事業拡大を目指すとのこと。これからも利益率の向上や連続増配の継続を期待したいですね。

<ROEの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②株主還元策を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①②からロート製薬を見てきました。配当性向が下がって増配余力を十分に残しているにもかかわらず、利益率の向上でROEが高まっている同社。

持続的な業績拡大でROEも1株あたり配当もしばらくは拡大する余地がありそうです。

本記事は、ROEを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。