必ず普及する! 『モンダミン』先見の明【前編】

なぜ売れ続ける? 担当社員が語る、あの企業の定番商品/ 日興フロッギー編集部CHINATSU

1987年に誕生し、日本の洗口液ブランドのトップを走ってきた『モンダミン』。「すべての世代のお口のすべての悩みの解決」をモットーに、展開数はいまや50以上!

「お口、クチュ、クチュ。モンダミン〜」の30年以上の歴史から今後のブランド戦略まで、アース製薬マーケティング総合企画本部の北口明宏さんと村田陽子さんにご解説頂いた。

市場ほぼゼロからのスタートだった『モンダミン』

――『モンダミン』は1987年に発売。日本で洗口液がほとんど知られていなかった時代に発売したのには、どういった背景があったのでしょうか。

北口さん
おっしゃる通り、1980年代当時、洗口液は日本にほぼありませんでした。一方、アメリカでは成長市場であったことから、当時の社長(現在・特別顧問の大塚正富氏)が「日本でも必ず普及する」と直感し、そこから開発が始まったと聞いています。

マーケティング総合企画本部 北口明宏さん

一方、日本でなじみのない商品だっただけに、味作りには相当の苦労があったようです。アメリカから取り寄せたマウスウォッシュは正直、美味しいとは言えませんでした。日常生活の習慣に取り入れてもらうことを目標としている以上、効果だけではダメで、続けられる味でないと通用しません。

日本人の口に合うように、試行錯誤の末に誕生したのが、ペパーミント味とシナモン味でした。後者は既に廃盤になっていますが、緑の「ペパーミント」は今でも『モンダミン』の基幹商品になっていますね。

基幹商品である『モンダミン ペパーミント』

――発売から数年間の売り方は現在とは少し異なります。前面に出していたのは「お口のエチケット」だそうですが。

北口さん
当初は洗浄効果よりも口臭予防を強く謳っていましたね。商品パッケージには大きく「お口すっきり、かおり さわやか」。ただ、残念ながら市場の反応はイマイチで撤退の話がチラホラ出るほどだったとも聞いています。

発売初期は口臭予防効果を前面に出していた『モンダミン』

ターニングポイントとなったのは1993年頃の戦略変更です。商品自体は大きく変えず、「お口のエチケット」から、洗浄効果で「お口の健康を守る」に切り口に変えたところ、売上が急上昇。今ではお馴染みになった「お口、クチュ、クチュ。モンダミン」のフレーズを使い始めたのもこの頃です。

洗口液の使い方自体知らない人が多い時代でしたが「とにかく、クチュクチュすればいいんだな」と感覚的にわかってもらえる名フレーズでしたね。

すべての悩みを解決すべくラインナップも急拡大

――2012年以降、『モンダミン』のラインナップは急速に拡大しています。現在、50種以上にも上るそうですが。

村田さん
「口内の健康が身体の健康につながる」と周知され始めた頃から商品開発のスピードも早まりましたね。

誕生から最初の15年ほどは、基本の『モンダミン ペパーミント』に対し、それより低刺激の『モンダミン センシティブ』、その逆で刺激強めの『モンダミン ストロングミント』の3つが主たる商品だったんです。

当初は使い心地や味の違いを打ち出したものだけだったのが、2003年あたりからは、医薬部外品などさまざまな効果効能を持つ商品が登場するようになりました。

マーケティング総合企画本部 村田陽子さん

歯肉炎予防の『モンダミン メディカルケア』やオールインワンで様々な効果が得られる商品の『モンダミン プレミアムケア』等々。それぞれに刺激弱め、刺激強めと味の展開があり、サイズ展開もありで、枝分かれつつ商品数が増えていきました。

アース製薬では2017年に赤穂工場(兵庫県)内にモンダミン専用工場を新設していますが、これは『モンダミン』の生産量増加が大きな理由でした。

北口さん
「すべての年代の悩みを解決するブランド」を目指しているからこその商品展開でもありますね。『モンダミン』はラインナップの充実も重要な要素と考えております。

最初のシナモン味こそなくなってしまいましたが、分母が少なくてもその商品が「ないと困る!」というお客様もいらっしゃるので、そうしたお客様も大事にしたいと考えております。

――これだけの種類があって、それぞれ味も異なるんですね。

北口さん
コンセプトが少しずつ違うので、必然的に同じ味にはならないんですよ。

たとえば、朝用の『モンダミン モーニングクリア』に対し、夜用の『モンダミン ナイトクリア』もありますが、前者は朝食の味を邪魔しないというのがコンセプト。一方、夜用は寝る前に使うため殺菌の持続効果が強くなっている。

そこを意識した処方ということでまた味が変わる。効果と一見関係ないように見えて、如実に関連するのが味なんですね。

ちなみに、使い心地に関しては刺激が苦手な方、逆に刺激が欲しいと思う方、結構分かれます。面白いことに刺激を好むタイプの人は使っている内に「もっともっと」となりやすいようです(笑)。

村田さん
そうした方に向けて、今春、『モンダミン エクストラドライミント』を発売しました。『モンダミン』史上で最強の刺激感で、口の中の爽快感が長く続く商品です。やはりと言いますか、若い方のご購入が多いです。

最強の刺激が欲しい人への商品展開も

――それにしても、洗口液はその爽快感ゆえ、開発試作時に繰り返しの香味評価は難しそうに思います。途中で味の違いがわからなくなりそうです。

村田さん
確かにそういう時もありますね(笑)。私はマーケティング部署に配属される以前、研究所で『モンダミン』の開発に携わっていましたが、当時は水でしっかり口をすすぐなどリセットしながら続けていました。

幸いといいますか、刺激が苦手な体質で、普通の人が「どっちでも一緒では?」というものでも微妙な違いを感じ取りやすかった。特に「センシティブ」向けの開発が得意でした。

『モンダミン』は誕生以来、味にこだわってきたブランドです。洗浄効果や虫歯予防、歯肉炎予防などの効果はもちろんですが、同時に美味しさにもこだわりたい。

肝に銘じていたのは、実際に使ってみて自分が「美味しい」「毎日使いたい」と思えるかどうかでした。

もちろん、成分自体に苦味の強いものもあります。甘味剤や香料を使うことでイヤな味をマスキングしつつ、美味しい味に仕上げていく過程を、繰り返し、繰り返し踏んでいましたね。

まだまだ伸びる? 日本人の洗口液使用率はおおよそ35%

――「必ず普及する」の予測通りに洗口液市場は拡大してきました。ここ最近の年平均成長率は5%もの成長率だそうですが、『モンダミン』の販売数も増加傾向にあるのでしょうか。

北口さん
数字的にはずっと右肩上がりですね。90年当時の『モンダミン』の販売ベースで比較すると30年で20倍ほどの規模になっています。

昨今でいえば、洗口液を使ったことがなかった若い世代を意識した商品も多くなっています。当社しかり、競合他社さんしかり、若年層向けの商品や様々なニーズに応じた商品を拡充してきただけに、業界全体で市場を拡げてきたともいえます。

一方で、日本人の洗口液の使用率はまだ35%ほどです。アメリカだとだいたい人口の半数は使っているようなので今後も伸びると思っています。

村田さん
口腔ケアそのものへの意識が特にこの1、2年で高まってきています。

新型コロナウイルスの流行を機に新しく購入したオーラルケア商品として一番多いのは「うがい薬」ですが、その次に挙がるのは洗口液です。

「マスクをするから口臭がさほど気にならなくなるのではないか」との声もありつつ、実際は感染症対策の一つとして、『モンダミン』の新習慣がついた方も多いようです。今後のさらなる拡がりに期待しています。

後編では『モンダミン ペパーミント』と人気を二分する『モンダミン プレミアムケア』についてもお話したいと思います。

アース製薬