レジ袋やカフェでのストローなど、目にしない日はないほど身近なプラスチック製品。しかし最近、環境への影響などから「プラスチック問題」としてよくニュースで取り上げられるようになりました。
そこで今回は、なぜプラスチックが問題になっているのか、その問題解決に向けてどのような取り組みが行われているのか、各国や各社の事例とあわせてご紹介します。
なぜプラスチックが問題か
私たちの身の回りにはプラスチック製品があふれています。ペットボトル、レジ袋、包装用紙、洗剤容器……例を挙げればキリがありません。とても身近で便利なプラスチックですが、大きく分けて3つの問題が挙げられます。
1.化石燃料の枯渇化
2.温室効果ガスの増加
3.自然界で分解されにくい
1つ目は、プラスチックの原料の多くは化石燃料由来であり、大量に消費することで化石燃料の枯渇につながる点です。採掘の際にも大量の化学物質が使われたり、温暖化ガスが排出されることなどから、環境に負荷をかけている現状があります。
2つ目は、プラスチックの生産時・焼却時には温室効果ガスが発生し、地球温暖化につながってしまう点です。
3つ目は、プラスチックは軽量で耐久性があり、加工もしやすいことで幅広く使われている反面、自然界で分解されにくいという特徴があるという点です。この問題については、海へのプラスチックごみの流出という点からも世界的に大きな問題になりつつあります。
「ジャンボジェット5万機分」のプラスチック
このようなプラスチックが、世界全体で毎年約800万トンのペースで海に流出していると2016年の世界経済フォーラムで報告されました。ちなみに、800万トンは、スカイツリー(約3万6000トン)222基、ジャンボジェット機(約160トン)5万機と同等の量ですので、毎年かなりの量のプラスチックが海洋に流出していることがわかります。
このペースで海のプラスチックが増えていくと、2050年には海にいるすべての魚の重量よりも、海の中のプラスチックのほうが重くなるとも報告されています。
海へのプラスチックの流出量が増えて出てくる被害としては、どのようなものがあるでしょうか。
まずは生態系を含めた海洋環境へ大きな影響があると想定されます。みなさんも、鼻にストローが刺さったウミガメの映像や、お腹の中にプラスチックが溜まっているクジラの映像などを見たことがあるかもしれません。とてもショッキングな映像ですよね。
さらに、観光・健康へも影響が出てきます。観光面では、海岸にプラスチックごみが積み上がり、美しい景観が失われています。また健康面についてはマイクロプラスチックと呼ばれる微細なプラスチックが海の生態系に入り込み、食を通じていつの間にか人体にも取り込まれている可能性があると言われています。
日本や世界の動き
さて、このようなプラスチックを巡る、世界や日本での動向を見ていきましょう。
まずは世界の動きとして、2015年9月に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)では、17の目標の一つに「14.海の豊かさを守ろう」という目標があり、海洋や海洋資源の保全に向けて国際的な取り組みがなされています。
さらに、SDGsの169のターゲットの一つに「2025年までに、陸上活動による海洋堆積物や富栄養化をはじめ、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に減少させる」というものもあります。
世界全体で海洋資源を守っていく目標が定められ、海洋汚染の防止が国際的に求められています。このように、海洋の保全については国際的な問題意識として取り上げられていることがわかります。
日本はワンウェイ(通常一度使用した後にその役目を終えること)のプラスチックの消費量が世界で2番目に多いことが2018年のジェトロの調査でわかっています。
2019年5月には海洋プラスチックごみ対策として「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」や「プラスチック資源循環戦略」の策定、海岸漂着物処理推進法などの基本方針の変更がなされました。
2020年7月にはレジ袋が有料化されるなど、国内でもプラスチック削減に向けて様々な動きがあります。
今後も世界や日本の対プラスチック政策がどうなっていくか、目を離せませんね。
日本の企業の取り組み
最後に、日本企業のプラスチックの削減に向けた取り組みについて見ていきます。
セブン&アイ・ホールディングス
コンビニエンスストア「セブンイレブン」を軸に百貨店や外食などを展開する「
セブン&アイ・ホールディングス
」。同社は食品外包材へのバイオマスプラスチックの導入や、紙製品への切り替えを実施しています。
容器包装に係る環境負荷の低減のため、プライベートブランド「セブンプレミアム」の食品の外包材の一部にバイオマスプラスチックを使用しています。
実施した成果として、これまで導入商品数はパンや総菜等を合計して156種類と、環境配慮型素材(バイオプラスチック・リサイクル素材・紙)を導入した商品の割合は現時点で20%程度になります。
またセブン‐イレブン・ジャパンでは、2020年6月からチルド弁当の容器を従来のプラスチック製から紙製に切り替え、この取り組みを順次全国に拡大することにより、2021年度は約800トンのプラスチック使用量削減を見込んでいます。
セブン&アイ・ホールディングスは、2019年にグループの環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」を公表しており、今後の中長期的な目標は、2030年にオリジナル商品の容器包装への環境配慮型素材の採用を50%、2050年には100%とすることを掲げています。
カゴメ
飲料、食品、調味料の大手総合メーカーの「
カゴメ
」。同社は加工用トマトの栽培に生分解性マルチフィルムを導入しました。導入背景には、加工トマトの栽培から生まれるプラスチックの問題や収穫時のマルチフィルム(作物の株元を覆うフィルム)が破れることが農家にとって問題となっていたことがあります。
この導入により、機械収穫時にマルチフィルムが破れ回収に労力がかるような場合でも、土壌にすき込むことにより分解されるようになりました。また、機械収穫が拡大している中で、使用農家からの評価も悪くなく、手で収穫する農家が栽培後の後片付けの効率化のために利用するケースも増えています。
またカゴメは2020年1月に「カゴメプラスチック方針」を策定しており、2030年までに紙容器飲料に添付しているプラスチックストローについて、石油から新たに作られるプラスチックの使用量ゼロを目指しています。
また飲料ペットボトルについても、2030年までにリサイクル素材又は植物由来素材を 50%以上使用することを目標としています。
スズキ
大手自動車メーカーの「
スズキ
」は、世界初となる船外機(船に装着する推進機関)に取り付け可能なマイクロプラスチック回収装置を開発しました。
船外機がエンジン冷却のために大量の水をくみ上げながら走行し、冷却後にその水を戻す構造であることに着目し、戻り水用ホースに取り付け可能なフィルター式の回収装置を開発し、マイクロプラスチックを回収できるようにしました。
スズキは2020年に「スズキ・クリーンオーシャンプロジェクト」を立ち上げ、水辺の清掃活動の継続によるプラスチックごみの回収や、製品・部品の梱包資材からプラスチックの削減、海洋マイクロプラスチックの回収に取り組んでいます。
上記で紹介した企業以外にもプラスチック削減に向けて取り組んでいる企業はたくさんあります。各企業のホームページで、どのようにプラスチック削減に向け取り組んでいるのか調べてみると面白いかもしれませんね。