PER(株価収益率)は会社の利益と株価の関係を表す投資指標の1つです。
株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば「会社の利益に対して株価が高くなっている」ことを表し、割高と判断されます。反対に低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
厳しい冬に種をまく会社
コロナ禍によって私たちの生活環境は変わり、使うものや食べるものが大きく変化しました。そんな変化が逆風になっていた会社でも、厳しい時期にきちんと将来に向けた種まきができている企業があります。
また、足元は厳しくても、少しでも業績が上向けば株価も上昇しPERの水準も高くなり始めることがあります。今回はそんな「厳しい冬に種をまく会社」をご紹介します。
case61:カンロ
今回ご紹介するのは、「果実のど飴」や「ピュレグミ」などでおなじみの「 カンロ 」です。2020年以降、コロナ禍においてはマスク着用の常態化で、のど飴の販売は不振に陥りました。
また、オフィス通勤や観光の減少で、コンパクトサイズの飴もなかなか売上が伸びにくく、2020年12月期は減収営業減益となりました。株価も横ばい推移となることが多く、PERも業種平均程度にとどまっています。
Z世代に響いた新商品「マロッシュ」
しかし、2021年春以降は新しい味を発売した「金のミルクキャンディ」やグミの「ピュレグミ」「カンデミーナ」など主力ブランドが好調となり、業績全体を下支えしました。
また、2021年6月に発売した”マシュマロになるグミ”「マロッシュ」がZ世代(1990年代中盤以降に生まれた世代)を中心にSNSなどで話題となり、6月の出荷は販売計画比225%と非常に好調だったようです。
中期ビジョンが軌道に乗ればPER上昇も
足元では回復の兆しがみられつつも、まだまだ厳しい事業環境が続く同社。そんな中、中期的な今後の会社の方向性を示すものとして、2021年2月10日に「Kanro Vision 2030」が発表されました。
製品や市場に応じて事業領域を「CORE・GLOBAL・DIGITAL・FUTURE」と4つに新たに分け、11月11日にはそれに応じる形で事業本部を再編。また、2030年に向けて、「海外売上高比率25%以上」や「デジタル売上比率5%以上」など野心的な目標を打ち立てています。
未知数な部分は大きいものの、まだわずかである海外売上高の拡大やデジタルでのファン獲得などが軌道に乗れば、業績の拡大が期待できるかもしれません。
足元ではすでにそうした期待などから、株価が底打ちしつつあります。PERもそれに伴って上昇していくかもしれませんね。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回は、①からカンロを見てきました。コロナ禍による生活習慣の変化で、まだまだ厳しい環境にある「飴」市場。しかし、新商品の売上が好調だったり、中期的な目標に合わせて会社の体制を整えたりするなど、少しずつ成長の種がまかれつつあるようです。今後の具体的な施策や商品にますます目が離せませんね。