フェイクミート普及への“大きな一歩”

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、温室効果ガス削減を追い風にするフェイクミート(代替肉・培養肉)に関するニュースの裏側についてご紹介します。

CO2の25倍もの温室効果がある「メタン」

「普及のための材料が、どんどんそろってきた」

COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)でバイデン米大統領が、新たなメタンの排出規制を行うことを正式表明したことを受け、アナリストがこう呟きました。

何の普及かというと、フェイクミートのこと。大豆など植物を原料にして肉の触感に近づける「代替肉」や、動物の細胞を体外で組織培養する「培養肉」と言われるものです。

メタンはCO2の25倍もの温室効果があると言われています。また、その大気中のメタンの2~3割が、牛など反芻(はんすう)動物のゲップ由来だとされています。

フェイクミートによって食肉牛の飼育数を減らすことができれば、メタンも減る。バイデン大統領の宣言は牛を減らすことも企図しており、それはフェイクミートの普及につながるはずだというわけです。

高騰する輸入牛肉価格

フェイクミートはもともとベジタリアン向けの食品でしたが、ヘルシーさが一般の人々にもウケて普及しました。中国やインドなど新興国の人口増加でたんぱく源の需要が高まり、食肉不足を補うものとしても注目されています。

また、日本ではいま輸入牛肉の価格高騰が進んでいます。冷凍牛バラ肉の輸入価格は昨年キロ378円だったのが今537円に上がっているのです。

新興国の需要増に加え、コロナによる食肉工場の稼働率低下、コンテナ不足による流通価格高騰、さらに豪州の干ばつの影響もあるとのこと。これもフェイクミートには追い風です。

企業もフェイクミート事業を本格化へ

米マクドナルドは11月からフェイクミートのハンバーガーの試験販売を開始し、日本でも「 高島屋 」がフェイクミートを使ったおせちの販売を始めました。スーパーでも普通に見かけるようになってきました。

既に大手食品メーカーもフェイクミートを扱い始めていますが、「 不二製油グループ本社 」は1956年に世界に先駆け大豆ミートの開発に着手し、植物性油と大豆たんぱくの技術をコアにフェイクミート事業を展開しています。

また、「 亀田製菓 」は2019年に玄米食メーカーのマイセンを買収し、同社が手掛けるフェイクミート事業を本格化。2021年6、7月にはフードテックベンチャーのネクストミーツ、グリーンカルチャーとの協業を発表し、フェイクミート事業をさらに推進すると発表しました。

「米国ではスタートアップのビヨンド・ミート、インポッシブル・フーズのフェイクミートが大手外食チェーンで採用されている。日本にも温暖化対策を名目に上陸する可能性もある」(前出・アナリスト)

今後のフェイクミートを巡る動向に注目が集まりそうですね。

(出典:日本証券新聞)