防衛費拡大「日米合意」の行方は

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、大きく膨らんだ防衛費に関するニュースの裏側についてご紹介します。

防衛予算が初の6兆円突破

総額36兆円の補正予算が成立しました。コロナ対応がメインですが、防衛予算も7000億円規模が計上されています。今年度の防衛予算は、当初予算も合わせて初の6兆円を突破することになりました。

補正予算の使途を見ますと「総合ミサイル防空能力の強化」978億円、「海空域における能力の強化」825億円もありますが、最も大きいのが「防衛装備品の安定的な納入のための経費」4287億円。

防衛装備品の納入遅延リスクを軽減するために、前金払いを実施するとのこと。その注釈として、「防衛産業界から、資金繰りに掛かる施策をより柔軟かつ効果的に講じてもらいたいとの要望があり、これに沿うものとなる」と明記されています。

防衛産業から圧力? という見方もできますが、そういうわけではないようです。

防衛産業の裾野企業にも配慮

「「 三菱重工 」や「 IHI 」のような大手ではなく、戦車のネジとか、艦艇向けの割れにくい電球を作っているような中小零細企業向けの措置。一度の受注量が少ないので、たくさん作って在庫を持たねば商売にならない。そのために大量在庫を持つ必要がある。その費用がバカにならず、今回、コロナの中小企業対策という観点で、どうにか捻り出した予算だった」(自衛隊幹部)

防衛予算というとイージス艦やステルス戦闘機F35のようなものをイメージしがちですが、防衛基盤を支えている、目立たない中小企業向けの予算だったようです。

「かなり前からの大きな課題だったが、やっと予算に組み込めた。今回の予算を前例とし、毎年の予算への計上を定着できるようにしたい。注釈は、そのことをアピールするものだ」(前出・幹部)

防衛装備庁への契約実績20位に入らない上場企業には、「 細谷火工 」「 豊和工業 」「 石川製作所 」「 日本アビオニクス 」「 新明和工業 」などがあります。

防衛費については、先の衆院選で自民党は「国防予算の対GDP比2%以上も念頭に」と公約に明記しました。これにより防衛需要依存度の高い中小企業への手当が厚くなった模様です。

「防衛予算の拡大は、日米合意があるので政府も進めざるを得ない。(昨年)4月の菅・バイデン会談で『日本は自らの防衛力強化を決意した』と声明を出している。これは米国から装備品をどんどん買うということだ。その中から国内防衛産業に回すカネをどう確保するかが、今後の課題だ」(前出・幹部)。

日本の防衛を支える裾野企業の存在にも、着目してみてもいいかもしれませんね。

※石川製作所(6208)は記事執筆時点で証券金融会社の注意喚起銘柄に指定されています。

(出典:日本証券新聞)